クボミの説明・紹介

クボミの説明・紹介

クボミの説明・紹介

Amebaでブログを始めよう!
聴音機が、たった一台になっては、この山の任務も、これまでだナ)
 東山少尉は、暗闇の中に、唇を噛んだ。七台の聴音機は、六台まで壊れ、先刻の報告では、高射砲も三門やられ、のこるは二門になっていた。
 兵員は?
 もともと一小隊しか居なかった兵員は、四分の一にも足らぬ人数しか、残っていなかった。
「ピリピリ。ピリピリ」
 振笛が、けたたましく鳴り響いた。毒瓦斯が、また、やってきたらしい。
 何か、喚く声がする。胡椒臭い、刺戟性の瓦斯が、微かに、鼻粘膜を、擽った。
(塩化ピクリンか!)
 東山少尉は、腰をひねると、防毒マスクをとりあげた。
「催涙瓦斯だぞオ、催涙瓦斯だぞオ!」
 瓦斯|警戒哨が、大声に、呶鳴っていた。
 東山少尉は、そのとき、何を思ったのか、ツと、二足、三足前方にすすんだ。
「どうも、おかしいぞ」
 前方の、放送局の松林あたりに、可也夥しい人数が移動している様子だった。演習慣れした少尉の耳には、その雑然たる靴音が、ハッキリと判った。
 どこの部隊だろうか?
 司令部が寄越した援兵にしては、無警告だし、地方の師団から救援隊が来るとしても、おかしい。
 軍隊ではないのかも知れない。