melancholic -8ページ目

melancholic

潤智小説。BL要注意。



コツコツ…

ここは…どこの街なんだ?

異国の香りがする、石畳が敷き詰められた細い路地を歩きながら思った。
両腕には大きな花束。
自分は今、それを抱えてひたすら歩いているのだ。


何かを目指しているのはわかるんだけど。
一体何を目指して歩いているのか・・

ゴーン・・・ゴーン・・・ゴーン・・・・

あたりに重厚な教会の鐘の音が鳴り響く。

『 』

その時、背後から聞こえた自分の名前に歩みを止めた。

『ああ』

よく知った声だ。
振り返ると、そこには彼の姿があった。

『よかった。遅いから心配したよ』

建物の一角から、白いタキシードに身を包んで姿を見せたそいつは、何故かほっとしたように、手招きをする。

『なに、その格好』

衣装でもないのに、真っ白なタキシードで立つ姿に、思わずつぶやいた。

『自分の結婚式ぐらいはこんな格好もするよ』
教会だしね。

彼はそんな様子に仕方なさげな笑みを浮かべて見せる。

『え?』

わけがわからなかった。自分の頬が次第に引きつっていくのを感じる。
そして、腕に抱える花束に視線を落とした。

(俺…誰にこの花束を渡そうとして…)

ぼやっとする頭の中で必死に考えを巡らせてみても、なかなか答えに辿り着けない。

『その花束俺に?』

だけど、彼はそんな様子に気付かないのか、むしろ感激したような顔をしてそう言うとその後ろ…教会の扉を振り返っていた。

『そういえば、まだ紹介してなかったね』
『え、だから誰を?』

堪らず、聞き返す。

俺らは恋人同士じゃないの?
いったい、誰を呼ぶというの?

困惑して見つめるけど、その声は届かない。
彼は笑顔のまま話を続けた。

『あいつも喜ぶよ』

(何これ。変だよ・・おかしい)

強く握りしめた花束の甘い香りが鼻につく。

『おいで』

エフェクターが掛かったみたいに聞こえる彼の声が気持ち悪くて仕方ない。

『紹介するよ、俺の・・』

『 !』

堪らずそう叫んだ瞬間、激しい目眩に襲われ目を閉じた。


渦を巻いてぐるぐる、ぐるぐる世界が歪む・・・・・

(やめろっ)

薄らいでいく意識の中で。


白い、ウェディングドレスの裾が、はためいて見えた。





※名前入りは限定記事にて公開しておりますので、興味のある方はどうぞ。