コツコツ…
ここは…どこの街なんだ?
異国の香りがする、石畳が敷き詰められた細い路地を歩きながら思った。
両腕には大きな花束。
自分は今、それを抱えてひたすら歩いているのだ。
何かを目指しているのはわかるんだけど。
一体何を目指して歩いているのか・・
ゴーン・・・ゴーン・・・ゴーン・・・・
あたりに重厚な教会の鐘の音が鳴り響く。
『 』
その時、背後から聞こえた自分の名前に歩みを止めた。
『ああ』
よく知った声だ。
振り返ると、そこには彼の姿があった。
『よかった。遅いから心配したよ』
建物の一角から、白いタキシードに身を包んで姿を見せたそいつは、何故かほっとしたように、手招きをする。
『なに、その格好』
衣装でもないのに、真っ白なタキシードで立つ姿に、思わずつぶやいた。
『自分の結婚式ぐらいはこんな格好もするよ』
教会だしね。
彼はそんな様子に仕方なさげな笑みを浮かべて見せる。
『え?』
わけがわからなかった。自分の頬が次第に引きつっていくのを感じる。
そして、腕に抱える花束に視線を落とした。
(俺…誰にこの花束を渡そうとして…)
ぼやっとする頭の中で必死に考えを巡らせてみても、なかなか答えに辿り着けない。
『その花束俺に?』
だけど、彼はそんな様子に気付かないのか、むしろ感激したような顔をしてそう言うとその後ろ…教会の扉を振り返っていた。
『そういえば、まだ紹介してなかったね』
『え、だから誰を?』
堪らず、聞き返す。
俺らは恋人同士じゃないの?
いったい、誰を呼ぶというの?
困惑して見つめるけど、その声は届かない。
彼は笑顔のまま話を続けた。
『あいつも喜ぶよ』
(何これ。変だよ・・おかしい)
強く握りしめた花束の甘い香りが鼻につく。
『おいで』
エフェクターが掛かったみたいに聞こえる彼の声が気持ち悪くて仕方ない。
『紹介するよ、俺の・・』
『 !』
堪らずそう叫んだ瞬間、激しい目眩に襲われ目を閉じた。
渦を巻いてぐるぐる、ぐるぐる世界が歪む・・・・・
(やめろっ)
薄らいでいく意識の中で。
白い、ウェディングドレスの裾が、はためいて見えた。
※名前入りは限定記事にて公開しておりますので、興味のある方はどうぞ。