童話
「ながぐつとぬこ」
バルバソ
今は昔。何処かのお国。
あるおっさんが死んで、3人の息子にはそれぞれ
もともと貧しい三男が
「何で俺だけぬこなんだ・・」
と嘆いていると、
ぬこが言った。
「フフフ、私に長靴と袋をおくれ。
長靴と袋をもらった(ついでに服もね)ぬこは、
毎日ウナギを捕まえ、それを王様に
「サンナン伯爵からの贈り物です」
と言って献上した。
なんだかんだで王様とぬこが親しくなった頃、
ぬこは三男にある場所で水浴びをさせる。
訝しげに水浴びを始める三男。
・・・だけど嫌いじゃない自分がいた。
そこに王様とお姫様を誘導したぬこは三文芝居を始めた。
「にゃんて事!サンナン伯爵が水浴びをしてたら、
追い剥ぎされたにゃー!?」
ぬこが思っている3倍は胡散臭いが、結果三男と王様を引き合わせた。
その時三男はお姫様にあれを見られて新しい自分に気付いた。
更にぬこは調子付き
「サンナン伯爵の居城」に王様を招待した。
あわわ・・・三男は焦った。
そんなの聞いた事もない!?
なればと、ぬこが馬車を先導することになり、
その道すがら予め買収済みの百姓と口裏を合わせ、
「へぇ、ここはサンナン伯爵様の土地です。」
と言わせた。
あろうことか本当の領主は、
ぬこに騙されネズミにされた挙げ句、食べられていた・・・
そんな事は露知らず、王様はサンナン伯爵の領地の広さにビックリした。
そして立派な城に着く。
勿論ぬこが奪った城だ。
ぬこは大胆にもそこに王様を迎え入れると、
「ここが有名なサンナン伯爵のお城だにゃー」
と言った。
まんまと騙された王様はサンナン伯爵を気に入り、
三男を婿にと打診してしまう始末!!
舞い上がった三男はその申し出を受けて姫と結婚し、
ぬこも貴族となって幸せに・・・暮らせるはずだった・・・
・・・ぬこは姿を消した・・・
三男はその時初めて大切なものに気付いた。
ぬこが最後に見せた寂しそうな笑顔・・・
心が壊れてしまいそうだった。
豪華な暮らしや美しいお姫様に目がくらんでいた自分を恥じた。
何時だってそばに居てくれたぬこ。
自分に向けられた優しいあの笑顔。底抜けに明るい声・・・
三男はなりふり構わず駆け出していた。
ぬこの名を呼ぶ自分の声が震えている事も、
いつの間にか涙が頬を伝っている事も解らなかった。
しかし、何処をどんなに探してもぬこは見つからなかった・・・
お城を裸足(むしろ裸)で駆け出した三男は、
何ヵ月もただぬこの名を呼びながら彷徨った。
やがて冬が来た・・・
道端で力尽きる痩せ細った三男・・・
ただぼんやりとかつては自分の物だった街の灯りを眺める・・・
「ぬこ・・・なんか寒いんだ・・・」
(裸だから)
漠然と覆いかぶさる絶望を感じ、
三男は疲れた目をつぶりかけていた。
どれくらい時が経っただろう・・・
朦朧とする意識の中で、懐かしい声が響いた。
「大丈夫かにゃ?」
半ば諦めかけていた三男は、
あまりの奇跡に怖くてすぐには顔を上げられなかった。
そこに差し伸べられた見覚えのある手。
その手に触れた瞬間から、三男は嗚咽を止めることは出来なかった。
ゆっくりと見上げた目に映ったのは、
懐かしいぬこの優しいあの笑顔。
きつく抱き合った二人は二度と離れなかった。
おしまい。
と思ったけど、
公然猥褻物陳列罪とぬこへの痴漢容疑で捕まった。