2X00年 1月17日


同じ空間、同じ景色は続いていた。


星の位置が変わることはあるが、この闇があけることは無い。



この宇宙船は、2部屋しかない。


1つはコックピット


もう1つは、キッチンとリビングを兼ねた部屋だ。


トイレとシャワールームは、リビングにある、はしごを降りるとある。



武史は、コーヒーをいれ、ソファに座っている、春子に渡す。


「ありがとう」


一口すすると、テーブルに置き、視線を落とした。


武史はテーブルを挟み、春子の迎えに座った。


「ごめんね」


春子がつぶやく。


「私が、こんな調子だと、武史もまいっちゃうよね」


力なく微笑む顔は、無理やり作られていた。



「春子。聴いて欲しいことがあるんだ」


なるべく優しい声で言った。


「いい話じゃなさそうね」


「声が優しいんだもん」


さっきよりも、自然な微笑だった。


「うん」



武史は、春子に説明した。



説明の内容


地球を出たときから、宇宙船は政府のレイダーに捕らえられていること。


目的地周辺で、強い電磁波を出し、政府のレーダーをごまかし、その隙に着陸すること。


電磁波の範囲は狭く、1つ1つの星を探せば見つかってしまうこと。


そして最後に・・


死んでくれと頼んだ。


大嫌いなクリスマスが、今年もやってくる。



24日の朝、いつも通りに6時30に目が覚めた。



雄一は憂鬱だった。





父と母と3人で暮している。



ごくごく普通の家庭だ。




目が覚めた雄一は、朝ごはんを食べに、台所へと向かった。



おはよう。



家族とあいさつを交わし、朝ごはんを食べる。


ご飯は家族そろって食べるのが決まりだ。



「雄ちゃん、夜はクリスマスパーティーするから、早く帰ってきてね」


ごはんを食べながら母が言った。


「うん」


雄一もご飯を食べながら、うなずいた。




あっというまに、時間は過ぎ、雄一は帰り道をあるいていた。


最後の角を曲がる。


家まではもう少しだ。


道を見渡すと、家の近くに男の人が立っていた。


離れていたがすぐに分かった。


パパだ。


一人目のパパだ。




向こうも気がつき、雄一に近づいてきた。


「雄一」


つま先から頭のてっぺんまで、うなずくように何度もみていた。


「また、大きくなったな。元気にしてたか?」


「うん」


小さくうなずく。


「ああ。そうだ。これ」


そういうと、大きなの紙袋を、差し出した。


「クリスマスプレゼント。喜んでもらえるといいんだけどな」


父は雄一の手首を掴み、紙袋を持たせた。


「本当はもっとちゃんとした場所で渡したかったんだけどな」


雄一の顔を、目に焼き付けるように、長い時間見ていた。



雄一の頭をなでると、やさしく微笑み


「それじゃぁ、もう行くな。元気で頑張れよ」


そう言うと父は、雄一が今来た道を、歩き出した。


いらない。


とは言えなかった。


父の気持ちを考えると、複雑な感情が強く交じり合う。


父は自分の事を、大切に思ってくれてるんだ。


せっかく会いに来てくれたのに、冷たく接してしまった。


迷惑だと思ってしまった。



雄一は振り返った。


小さくなった父の姿が、遠くにあった。


「パパーー」


懇親の力を込めて、雄一は叫んだ。


「ありがとう」


遠くの父が振り返り、手を振ったのが見えた。


雄一も両手を全力で振った。


クリスマスの一週間前に、彼と別れた。


彼から別れようといわれた。


理由を言っていたが、頭が真っ白になって良く覚えていない。


気付くと自分の部屋で泣いていた。




菅原 知美。高校2年生。


同級生の、上村 蒼太に恋をしました。


彼はスポーツマンでカッコよく、実るはずの無い恋だと思っていた。


友達の後押しもあり、彼に告白することにしました。


友達に彼を呼び出してもらい、告白しました。


彼は微笑み、「うん」と言ってくれました。


信じられなかった。




クリスマスまで一ヶ月、街は賑わいはじめました。


夜のイルミネーションは恋人達を、幸せにしました。


2人でよく行ったお店。


いろいろ見たり、買い物したり楽しかった。


雑貨屋さんで見つけた、ペアリング。


ジーと見ていた私に、一緒にしようと言ってくれた。


うれしかった。


クリスマスの日に、交換するはずだったのに・・




同じ景色が心を痛くした。


一年に一回のクリスマスに、もう一度あなたに思いを伝えよう。


あなたが欲しがっていたプレゼントを持って・・



よく行ったお店で、あなたが良く見てた腕時計。


プレゼントしたらよろこぶかな。


アルバイトで貯めたお金を下ろして、お店に向かった。



あなたへのプレゼントを見ていたら、


少し遠くにあなたを見つけた。


いつか二人で見たペアリングを・・・


私の恋を応援してくれた友達と・・


仲良くみていた。