入社式。

真っ黒なスーツを着て初めての出勤。


なんとも不思議な感覚だった。


同期は全部で30人程度。

そのうち半分は大学院卒。
その他は偏差値60以上(いわゆるMARCH以上)の大学卒の人しかいない。
名の知れた大学。国立出身者も多かった。


私のような専門学校出身でこの会社に入ったのは場違いにもほどがある。


何故私がこのエリート集団の会社に入れたのか。


それは、会社が経理の出来る人材を求め、
たまたま専門学生を採用することにしたからだった。

それは初めての試みだったそうで、君が第一号だ!
と人事部に言われた。


何て自分は運が良かったんだろう。



ここから約1ヶ月間。

新入社員研修が始まった。

マナー研修などは一度習えば覚えることが出来るが、会社の業界にそった研修は難しかった。


もう何を言ってるのかすら分からない。

理系の会社ということもあり、化学反応式を用いた説明もあった。

そんな私は文系出身。頭がついていかない…


今までは私立でも専門学校でもどちらかと言えば上位にいた私。

それが、社会人になって初めて自分が一番劣っていると感じる環境になったのだ。


周りが出来ているのに私は出来ない。

焦る心と、初めての経験に喜びを感じる心。

我ながら打たれ強い性格で良かった。笑


専門学校で経験してこなかったプレゼンや
人前に立って行うスピーチ。

やり方がわからない。経験もない。
不安もあったが脳内イメトレで練習し、何とか本番も乗り切ることができた。


社会人になり、新しく学ぶことも多い職場。

給与も貰えて、自分で生活していくこともできる。


気持ち的に満たされ、充実した毎日を過ごしていくうちに家庭のことはどうでもよくなっていった。


自分を大事にしよう。


遂に実家を出る決意をした。