一風呂浴びたあと、風呂の排水口から流れでる渦を見ながら白井雄一は軽いめまいのような身体的異常を感じた。それはまるでこの世が吸いこまれていく感覚であった。かろうじて居間に戻ると、それは消えている。彼はビールを飲みながら思う。もういい歳なので、あちこちにガタが来ているのかもしれないと


雄一はまだ独り身である。この間の会社の定期健診ではまったく異常はない。これはあくまでも身体的なもので、心的精神的領域について異常はないとはいえないかもとぼんやり考えている。というのも橘靖子とある迷いで別れて二、三年経っていて、なにかにつけ思いだすことが多いからである


翌日風呂に入るときは、用心しながら湯舟に浸かった。あがるときは、明日掃除するときにすればいいと思いながら排水口の栓を抜かなかった。それにしてもその掃除をするのは、面倒なことだといつも思っている


風呂からあがっていつものようにビールを飲んでいると、よほど疲れていたのかうたた寝した。髪を振り乱したワンピースの女が迫っている。女の貌は渦を巻いていた。雄一はびっくりして夢から覚めると、ソファの向かいに女が座って俯いている。彼は恐る恐る近づいて彼女の長い髪をかきあげ、貌を確かめる。まなざしの綺麗な靖子がにっこり笑った






◾️憩いの準動画


渦巻き女






◾️出典:自作画像







◾️お楽しみいただきまして、ありがとうございました。次回作は暇がかかるかもしれません