いよいよウディ・アレンの「夫たち、妻たち」みたいな展開になってきましたね。破綻した灯里(真木よう子)と諒(綾野剛)の関係を、光生(瑛太)が修復させようとします。

冒頭で、諒の過去が明かされるわけですが、高校時代に駆け落ちしてその恋は実らず…というかなりハードな体験でした。(ちなみに諒は東京出身のようです。)

諒「僕は(中略)だから結婚しようって、でもシオミさん、『私、上原くんじゃ足りないの、足りないの』って…」

うーん、この「足りないの」という言葉が諒のトラウマになってしまったんでしょうか? それはそれでまぁ納得なんですけど、諒にはあくまで“理由なき”浮気男でいてほしかったな。原因も過去もないんだけれど、複数の女性を求められずにはいられない。だからこそ、救いも改善策もないというのがリアルかなと思っていたんですけど、諒の場合、一応、原因はあったんだ…。
だからこそ、灯里から別れを切り出されても別れないし、もう他の女性とも寝ない。彼なりに必死で、今度こそ自分を変えようとしている。
つまり諒と灯里(父親事故死、母親との確執深し)は、かなりハードで非凡な過去を背負う者同士だったわけです。ふたりがもう一度やり直すには、トラウマを乗り越えられるのかということがポイントになりそう。

一方、光生と結夏(尾野真千子)の元夫婦。結夏の年下の恋人候補・淳之介(窪田正孝)の登場に、敵愾心をむき出しにする光生。「熱があるかどうかっていうのはプライバシーの問題だから」とか言動がおかしかった。

結夏「(淳之介に)あなたはそのままでいいの。素直でまっすぐに生きているほうが周りを幸せにするんだから。頭が良いとか知識があるとかより、人を元気にできるほうがよっぽど価値がある」
光生「そうだよ、その通りだよ。その方が価値あるよ」

というやりとりがあって、結局、「彼、良いんじゃないかな。その相手として。すごくお似合いですよ」と結夏に告げ、理解を見せる。
そして、ラスト、光生たちの部屋に灯里と諒が来て、「今度、浮気したら…切っていいよ」「じゃ、今切っていい?」「い、いいよ」「じゃ切る!」という凄絶なやりとりが繰り広げられた挙句、妻たちは結婚生活にギブアップする。

結夏「あんたたち男が子供だからだよ。馬鹿馬鹿しい。夫婦なんて茶番だよ」
灯里「うん。結婚なんてするから、こんなことになるのよ。ひとりで生きて、ひとりで暮らせばいいの…みんなひとりなんだよ」
光生「ダメだよ…(中略)そういうこと言ってたら、ここにいる全員、誰も幸せになれないでしょ」


ここに来て、結夏からも灯里からも“結婚相手として”全否定されてきた光生が、結婚というものに対して一番前向きになっているのが面白い。「それじゃ社会が成り立たないでしょ」とか、最も常識的なことを訴えてきている。変人ゆえのパワーというか、他人との距離感を計れない、空気を読めないからこそ、状況を突破していく何かが、光生にはあるのかもしれない。
光生の両親が不在の理由も実は明かされていないわけで、そこにも何か光生が神経質な性格になったトラウマがあり、これから明かされていくのかもしれないですね。でも、そうなると、“富士山を見て育ったから細かいことを気にしない”結夏以外には、みんな家庭環境・恋愛体験のトラウマがあるわけで、ちょっとトゥー・マッチ感が出てきてしまう。本作がウディ・アレン風の都会的ラブ・コメディを目指しているのなら、重すぎる過去設定は避けてほしかったな。だって、登場人物の過去って便利に使えちゃうじゃないですか、言い訳として。
テレ東金曜深夜の「まほろ番外地」も、同じ瑛太くん主演で面白く見ているんですが、あの作品も、主人公のふたりを始め、登場人物のほとんどにトラウマ的過去がある(原作どおりなんですけど)。
事実、人間は過去から逃れられないし、過去を忘れて生きてもいけないけれど、恋愛の細かい機微を描いて笑わせていく場合は、シリアスすぎる過去は逆に作用するのではと思いますね。
90年前後に出てきた「抱きしめたい!」等のトレンディドラマは、主人公の男女たちの多くが育った過程や過去に縛られてはいなかったんですよね。実家はど田舎だとかそういう設定はあるにしても、過去の描き方がカラっとしていて。

あと、細かいツッコミなんですけど、冒頭で諒と年上の彼女(遊井亮子)が落ち合うのが「caféガスト」じゃないですか。店員がコーヒー運んでくるんですけど、ガストならドリンクバーだから運んで来ないはずですよね? これまでTSUTAYAの延滞金とか細かいルールをリアルに描いて「あるある」って思わせてきた本作だから、そこは現実に即してドリンクバーのコーヒーを取りに行ってほしかったな、ふたりに。こんなに悲しい気持ちのときで落ち込んでそれどころじゃないんだけど、コーヒー自分で煎れなきゃいけない、みたいな…。まぁ、いろいろロケの事情とかあったんでしょうけど。ちなみに店員さんがコーヒー持ってきてくれるのは、デニーズかな。

中盤に入って、今後の展開が読めなくなってきたのは面白いところです。次週も期待。
今回は予想どおり、諒(綾野剛)が中心でしたね。
第3話で、諒は浮気相手とベッドで寝ながら、自分の状況がゲームのテトリスに似ていると打ち明ける。

諒「何をしているかわからない、目的もない、終わりもない。ただなんか追い立てられるみたいに、せきたてられるみたいに、続いていくんだ」

そして、第4話の冒頭では、散歩道で出会った通りすがりの初老の男性に、灯里(真木よう子)に対する思いを語る。

諒「一緒に暮らしている人はいます。彼女といると落ち着くし、すごく大事に思っています。できることならなんでもしてあげたいし、ずっと一緒にいたいと思っています。別れたくないなと。このまま嘘ついているのも良くないなと思います」


これまではこのぐらいしか、諒の本心を推し量るセリフはなかったわけなんですが、5話で一気に来ました。しかも、婚姻届を出してなかったので戸籍上の妻ではなかった灯里に、自分からプロポーズする、という能動的な姿勢。どうした、諒?
いくら町内(中目黒)のあちこちで女性とデートしても、あからさまな朝帰りをしても、そして浮気相手が自宅にまでやってきても、諒の前では笑顔を崩さず、浮気を責めることのなかった灯里。その大切さにやっと気づいたんだね。

と温泉旅館でのプロポーズを微笑ましく見ていたんですけど、しかし、時すでに遅かった。いざ、今度はちゃんと婚姻届を出しに行こうと思ったとき、ついに浮気をなかったことにしてきた2人の関係が破綻する。
そこからの灯里の長セリフはすごかったですね。第4話の結夏(尾野真千子)を超えたか。東北の方言でやった分、真木さんのほうがより大変だったかもしれない。

灯里はこれまで一番同性から反感を買うタイプで、諒の浮気を見ないようにする、浮気相手と対面しても笑顔を浮かべるような、本心のわからない女性。でも、結局、夫の浮気を笑って許してはいなかった、ということが判明するわけです。
そして、諒が改心して結婚しようとしたのは「浮気を見ないようにしてくれる」灯里にひかれたからで、多くの女性と同じように「泣きながら浮気を責める」灯里ではなかったのかも。灯里が演じていた幻想の妻とならやっていけると思ったのではないでしょうか。
中盤で諒は浮気相手の年上の女性から言われます。

浮気相手「あなたと付き合った女はみんなそう(略)。諒くんを恨んだりしないと思うよ。だってみんなわかっているもの。あなたは絶対幸せになれない人だって」
諒「灯里とは絶対うまく行く。俺、今度こそ変わるから」


ここで浮気相手の女性が、諒に熱い紅茶を浴びせますよね(ひどい…)。これは諒が「俺、今度こそ変わる」とゲームオーバーを言い渡したからじゃないか。つまり女性は「負け」を宣告されて、悔しかった。
もうひとりの浮気相手、美大生の千尋(小野ゆり子)も別れを切りだされて、「別にいいですけど」と言いながら、大切な画材を階段の上からわざと落とす。
あれ、みんな怒っちゃったじゃん!
諒と彼をめぐる女性たちの関係は、ちっとも「割り切った」ものではなくて、彼女たちには諒への執着があったんだなと思ったのですが、正確には違うのかもしれない。彼女たちは諒が手に入りそうで入らないという「ゲーム」をプレイしていたのに、そこに突然、諒が「ゲームを降りる」とイチヌケしようとしたから、腹を立てたのかも。第3話で諒が「追い立てられるようにゲームをしている」と言ったように、心の内に空洞を抱えた男女が「絶対に幸せになれない」ゲームをしているように見えました。

それで、諒は結果的に、そのゲームのプレイヤーとして復帰するのですが、灯里はギブアップしたわけですね。それが第5話の大きな変化。
灯里、惜しかったな。これまで耐えに耐え、愛人たちにも余裕の微笑みで対抗し、もう少し自分を騙し通せば勝利者になれるところだったのに。

光生と結夏が似たもの同士であるように、諒と灯里にも共通する部分があるんだと思います。簡単に言うと二面性の激しさみたいなところ。諒には「信頼できる相手と1対1の関係を築きたい」という純粋性があるけれど、その半面、抑えきれない恋愛衝動もあるわけで、それは、いつでも恋人気分を味あわせてくれる諒を選んでいた灯里も抱えているはず。

それにしても、灯里は東北の漁港の育ちということで、その家庭環境が彼女の現在に大きく影響している。結夏は「富士山を見て育ったからおおらか」なわけだし、光生は東京育ちっぽい文化系男子。ということは、諒はどこの出身なんだろう? ちょっと気になりますね…。あ、企画書資料をもらっていたから、そこに書いてあるかも。ちょっと次回までに読み返してみます。
■週刊文春 2013.2.7号「今井舞『寒ーい冬ドラマ』を毒ブッタ斬り!」について

週刊文春でクール毎にドラマ批評を書いている、今井舞さん。
これまで今井さんの記事には何度も笑わせてもらったし、出来が良かろうが悪かろうが連続ドラマを見なくてはならない仕事の人間として大いに共感するところはあるんですが…。

でも、最初から「この人、テレビ雑誌の出身ではないな」という印象はあって、それがこの半年ぐらいで確信に近くなってきました。テレビ雑誌の経験者じゃないと批評できないのかというと、決してそうではないけれど、経験者としてはひとつひとつ引っかかるんですよね。

前クールの批評で、今井さんはこう書いた(現在、掲載雑誌が手元にないので語尾等は違うかもしれませんが)。金曜ドラマ「大奥~誕生」について、

TBSは「JIN-仁-」の夢よもう一度!と思ったのだろうが…
(そう上手くはいかなかったという結論)

えええ? ちょっと違和感がありましたよ。
そして気づいたんです。この人にはテレビ局の放送枠とその伝統という意識がないんだなと。もしくは知識がないのか。
だって、「JIN」は日曜9時でいわゆる日曜劇場枠。会社員のお父さんの週末視聴も狙った含めた全年代向け。「ビューティフルライフ」などのラブストーリーもありましたけど、基本的には男性が主人公のドラマが多い。
それに対して「大奥」(男女逆転版)は金曜10時ですからね。いわゆる「金ドラ」で、女性(F2)向け。途中いろいろ路線変更の試みはありましたけど、「金曜日の妻たちへ」の昔から「夜行観覧車」の今まで、主人公が30~40代の女性(主婦多し)というのが基本パターン。
つまりこの2つの枠は、雑誌で言えば、男性誌と女性誌ぐらい違うわけです。そのまったく狙いの違う「商品」を一緒に考えますかね? TBSが。

しかも「JIN-仁-」と「大奥」は、制作スタッフが違う。
「JIN」は男性の石丸彰彦プロデューサーで、「大奥」は女性の磯山晶プロデューサー。石丸Pはその後、「南極大陸」「MONSTER」を作ってきたわけで、「JIN」のヒットよもう一度!と狙ってやっているとしたら、現在放送中の「とんび」でしょう。同じ日曜劇場で脚本も同じ森下佳子さんだし。
異色時代劇というだけで、「大奥」を二番煎じのように書くのは、ちょっと乱暴じゃないかと思いました。

そしてこの2013冬クールのコラムも読んだんですが、これが違和感だらけ。

(NHKの)「八重の桜」への、局をあげての入れ込みようはすごいものがある。トーク番組のゲストには大河の出演者、スペシャル番組の収録は、舞台となる福島。

と書いてあるんですけど、「すごいものがある」というからには、例年に比べて、例年より多くPRしているということですよね?
「八重の桜」のPR露出回数を前年の「平清盛」と数字で比較してはいないんですが、放送を見ている分には「いや、毎年こんなもんじゃないかな?」というのが実感。
NHKは大河スタート前後は毎年、大騒ぎしていますよ。嫌になるぐらい露骨に大河をプッシュしていますよ。
と言いたくなったんですが、くしくも同じ号の「テレビ健康診断」で青木えるかさんが、書いてくれていました。

(「鶴瓶の家族に乾杯」について)新年第一回目の放送は、その年の大河ドラマの番宣であることを解き明かした。

そ、そうだよね? 毎年こうだよね。逆に、今井さんって普段はテレビを見ない人なのかなぁ。
そして、さらに違和感は続きます。

大河放送後、イマイチ不完全燃焼の客をそのままとんびがさらう形となった。

うむむ、この断定もどうかな…。視聴者層とかのデータの裏付けもないし。
大河(NHK)→日曜劇場(TBS)と、そういう視聴の流れもある程度のパーセンテージ存在しているとは思うけど、大河ドラマのメイン視聴者層というのは「大河を見るかそれとも何も見ないか」の二択なんです。去年、「平清盛」の視聴率がひと桁台に落ちたとき、NHKの人たちは焦っていましたよ。
「この数字は本当にやばいんです。これは、これまでずっと日曜夜8時台はNHKの大河にチャンネルを合わせてくれていた固定層が離れてきているということなんです」
その「平清盛」の視聴率が落ちていた間(2012年7-12月)、TBSの日曜劇場からヒット作が出たわけでもないですしね。
だから、大河がつまんないからって日曜劇場を見る人の割合は、実はそんなに多くないのでは?と思うんですが。
そもそも「とんび」が「八重の桜」を出しぬいた的な書き方をしていますけど、視聴率を比べたら「とんび」は「八重の桜」に一度も勝っていませんからね。

続けて、今井さんは他の民放ドラマを「ブッタ斬り」していくんですが、今クール一番エッジの効いている「泣くな、はらちゃん」にも、ジャニーズ主演で視聴率3位の「ラストホープ」にも触れていない。この2作抜きにして、今クールは語れないはずなのに。

そして締めくくり。「ビブリア」を批判し「最高の離婚」を今期ベストと書く。
それはまぁ、大部分のドラマ好きの同意を得られると思うんですが…

(略)ビブリア組と(略)最高の離婚組。同じドラマ班でも仲悪そうだ。コネ入社だらけのビブリア組に負けるな最高の離婚組。ってこれ推測だけど。でもきっと正解

す、推測ですか? それでも「きっと正解」?
ドラマの制作現場を知らない人なんだなぁ。フジテレビ社内で同じ島(机の列)で顔を突き合わせるのは、プロデューサーとAP、そして演出家ぐらいで、他のスタッフが「仲悪く」なるほど接触することはないと思いますよ。

そもそも、プロデューサーや演出家によって「トップの命令通り作ります派」と「俺は自分の作りたいものしか作らない派」に分かれるはずもない。
「最高の離婚」の清水Pは、「ビブリア」に近い女子もののポップな月9「のだめカンタービレ」「全開ガール」も手がけてきましたね。制作者によってそんなにくっきり作風を分けられるはずもない。

プロデューサーが自分の作りたいものを作れる時代でもなくて、今のドラマ作りはまずマーケティングに基づいた企画書がなければ始まらないんです。
例えば「ビブリア」のように「原作は300万部突破のベストセラー」と企画書に書けば企画が通りやすいという現状。その弊害はあると思いますけど、今井さんの文にあるように「言われたモンを言われた通り作りゃいんだよ」とまで志を低くしている制作者は、いないと思います。
逆に、「ビブリア」はヒロイン役の剛力彩芽をショートカットのままにしたり、原作には登場しないせどり屋(高橋克実)を加えたり、「言われた通り」作ってはいない。
それが効果的かどうかというと、それはまた別問題ですけど。

今井さんは他誌の編集部にとっては詳細プロフィール不明で謎の人ですけど、テレビ局で働いたことはないんだろうな。テレビ雑誌や新聞のラテ欄の仕事もしたことがないんだろう。
もちろん、ナンシー関さんみたいに自宅でテレビの前に座りながら、完全に受け手の立場から鋭い観察眼でテレビ評論をしていく人もいるし、それはそれで「アリ」だと思うんですが、今井さんはやたらテレビ局の批判をなさるのに、テレビ局の実際をご存じない。
それを今回ついに「推測だけど」と白状なさったんだから、もうこれを機会に無根拠な局批判はおやめになったら?

…とすみません。「夜行観覧車」を見終わったばかりなので、夏木マリが乗り移ったまま書いてしまいました。
うん、でも書いてちょっとスッキリした!
「最高の離婚」第4話の感想です。

今日は珍しく夫が息子を寝かしつけてくれたんで、オンタイムで見て放送後すぐに書くことができました。いっそ毎週木曜休んでくれないかしら…。

本当にただの感想から書きますと、後半で結夏(尾野)が光生(瑛太)に向かって感情を爆発させるシークエンスが、もう辛くて辛くて…。

結夏「一番最初に思い出す人が集まっているのが『家族』だよ。(中略)いつかそのうち夫婦っぽくなれるのかなって。でも、なれなかったじゃん。子どもでもできたら変わるのかなって、で、あなたに言ったら『子供なんかいらない』って」

うちの夫婦ゲンカを再現したんじゃないかって錯覚するぐらい、身に覚えのあるセリフとやり取りでした。涙なしには見られなかった。
女性心理のわからない夫に激怒混じりに訴えるのも、何か投げたりしてやりきれない気持ちを表現するのも、私も何度もやらかしたこと(つい最近もやりました…)。
尾野真千子さん、やっぱり上手いなぁと思いました。第3話の灯里(真木)の身の上話を超える長ゼリフだったんじゃないかな、これは。

それで、その熱演の陰で目立たなかったかもしれないけれど、瑛太くんの受けの演技も、これまた素晴らしい。
爆発した結夏に大事に育ててきた盆栽を壊される、学生時代から愛読している本を投げられる。その衝撃をこらえている様子とか、とにかくこの場を収めたいという焦りや、自分の中にある結夏に対する愛情をなんとか表現したいと思う不器用さとか、それが顔の表情はもちろん立ち方にまで出ていました。

光生「わかった、わかったよ。子供を作ろう(中略)。もう一回結婚すればいいよ」

前回書いたとおり、やっぱり結夏と光生の関係は「男女」よりも「家族」なんですね。震災の日に出会った瞬間から。
光生は彼なりに、光生史上最高に頑張って結夏に「家族になろう」と告げるけれど、今さら言っても結夏には喜んでもらえない。

結夏「『結夏が言うから』っていうのも“自分の都合”なの。(中略)あなたは、あたしのことなんか好きなんじゃないの。あなたが好きなのは自分だけなの!」

毎回、女性陣から人格をばっさり全否定される光生。そりゃ500円ハゲもできちゃいますよね。
ちょっと残念だったのは、これまで毎回あった光生のベタなコミカル場面がなかったこと。
野球でギックリ腰になったり、その痛さに変な悲鳴あげたり、片手で缶ジュース受け止めきれなかったり、TSUTAYAのAVコーナー入るとき壁にぶつかったり、部屋から横ばいで這い出してきたり。
今回、500円ハゲというネタはあったのに、一発ギャグが出なくて残念でした。
次は温泉旅行編らしいので、そこでまた笑わせてもらえると期待しています。

そして今回気づいたのは、男性ふたり、光生と諒は正反対のように見えて実は似たもの同士なんですね。
女性からの申し出がないと、アクションできない。または、女性から迫られても決断できない(諒は婚姻届を出していない)、受け身な男たち。
そういう男性と結婚したいと思った時点で、女性はある意味「負け」なんじゃないかなと、自分の経験も踏まえて思っちゃいました。
だって、世の中には、結婚することも子供を作ることも自然に人生に組み込んでいる男性もたくさん存在するので。苦労したくなかったら、そういう男性を選べばいいのでは?
結夏のお父さん(ガッツ石松)のような、またはお兄さんのような…。そういう男性を身近で見てきたからこそ、結夏は光生といると「なんで、あんたはそうじゃないのよ」という怒りが込みあげてくるんでしょうね。

そうして全否定された光生は、ただの自己チュー男なのか、大人になりきれていない子供なのか…。
そのあたり、ありきたりでない答えが用意されているのでは?
これでふたりの男が家庭的な男性になってめでたしめでたし…ではないと思いますよ。

このドラマはアラサーの話なので、まだ夫婦の関係が“熱い”んですよね。
光生に「あなたを好きになっちゃったんだもん」と言う結夏はなんだかんだ可愛いし、「割り切りが肝心」と語っていた灯里も、実は諒の浮気には割り切れない気持ちを持っている。

それが私たちみたいにアラフォーになっちゃうと、夫にぶつかる気概もなくなってくるんですよね、悲しいことに。
結夏の母が言った「結婚なんて誰としても同じよ。どこのダンナも一緒」というあきらめがやけにリアルで、それが極意なのかもしれないなぁとも思いました。これまた悲しいことに。

だから、このドラマは、妻たちがいかに夫婦の幻想から抜けだしていくか、という話でもあるのかもしれません。
うーん、やっぱり我が身に置き換えて考えてしまう。
でも、そういう受け取り方をされるのは、人間洞察の深いドラマだという証拠でもあります。次回も期待!
しょっぱなから全話レビューに挫折しておりますが、2話と3話はまとめて!

前回は設定とセリフ回しのテイストについて書きましたが、今回はストーリー構成などについて。

第1話の後半で、光生(瑛太)と結夏(尾野)が結婚した経緯は明かされたわけです。
震災の日の夜に、帰宅難民になって甲州街道を歩いているときに偶然会って、そのまま付き合ったんですよね。いわゆる“絆婚”で、あまりお互いのことを理解する間もなく、結婚しちゃったのかもしれない。

でも、一緒に暮らすうちに、あまりに相性が悪いことがわかってきて

光生「いいかげんすぎる」←→結夏「思いやりがない」

とお互い非難しあって離婚するに至るわけですが、この2人、男女・恋人としてはときめきを感じる相手ではないのかもしれないけれど、既に「家族」としては完成しているように見えるんです。

2話で光生が実家に帰った結夏を訪ねて行きますよね。そのときのやりとり。「離婚したことをお互いの親、祖母にいつ知らせるのか」というシビアな問題について話しながらも、コミュニケーションはちゃんと成立している。
実家のカラオケで「アカシアの雨がやむとき」を歌った結夏に、光生は「ちあきなおみだー」と無邪気にからかう。“他人との距離感がわからない、はかれない”光生(3話のラストでそれらしきことを言う)にとって、結夏は初めから距離感を感じない相手だったのかもしれない。
3話で、お互い違う人とデートしたふたりがフェイスブックを通して「リア充」ぶりを競い合うところも笑いましたけど、子供のケンカみたいですよね。もしくは兄妹か。
だから、離婚届こそ出しちゃったけど、このふたりが「絶縁する」ってことはありえないんじゃないかと思いますね。なぜなら、もう既に夫婦を通り越して家族になっているから。

ええと、それでちょっと話がそれましたが、2話のスタートの時点で残された大きな謎は、もうひと組の夫婦の問題、特に灯里についてです。
1)灯里(真木)と諒(綾野)が結婚した経緯
2)結婚しているのにどうして諒は浮気するのか? それを灯里は知っているのか?
3)灯里と光生が10年前に別れた理由

この疑問が2話から3話を引っ張っていくわけですが、予想より一気に説明されましたね。
その過程で一気に存在感を増したのが、灯里の存在です。
この灯里が、登場時から“いいオンナ”なわけです。落ち着いていて、他人の話をよく聞いてあげて、自分はゆったりと話す。10年前に別れた光生に対しても優しい。
がさつな結夏と比較される立場だから、余計に。光生がフラフラよろめいちゃうのも、うむ、仕方あるまいって感じで…。

ところが、この灯里がとんでもなく“怖いオンナ”だったわけです。
2話の最後で「ダンナ(諒)は浮気しているよね? 力になりたい」という光生にこんなことを言い放つ。

灯里「あなたと別れるとき、こう思ってました。『こんな男、死ねばいいのに』って」

これで見ている側は一気に「灯里、こっわー!」となるわけです。
しかも、「死ねばいいのに」とまで思われるなんて、光生ってば10年前に何したの?と謎3が気になってくる。
視聴者の興味を次回につなげる上手い構成ですよね。

そのわりに3話で謎があっさり明かされるんですが、ここで語られる灯里の身の上話がまたすごい。
お父さんは漁師で、サメに襲われて死んだ。それから、自分がうまくコントロールできなくなって、ジュディマリのYUKIちゃんに憧れた。でも才能なかったから恋愛に逃げた…。

なんじゃ、このプロフィールは。これに対抗できる波瀾万丈の身の上は近年、「家政婦のミタ」のミタさん(松嶋菜々子)ぐらいしかいません。

まぁ、でもとにかく3話の終わりまでで大きな謎はほぼ解明されました。
他人の顔を覚えられなくて、罪の意識もなく浮気を繰り返す諒にも、なんらかの精神的欠落や決定的な過去があるのかな?ということは気になりますけどね。

4話以降は、4人の登場人物のプロフィールが判明した上での展開になってきますね。
楽しみです。さぁ、これから生放送で見ようっと。