以前に比べてTOEICが難化しているという意見をあちこちで見かけます。英語系インフルエンサーがそう言えば、普通の英語学習者も盲従する傾向にあります。でも、インフルエンサーの根拠は

1. 語彙難易度が統計学的有意に上がっている。
2. ナレーターの読み上げ速度(words per minute)が有意に速くなっている。
3. リーディングセクションのReadability値(Gunning Fog index, Flesch Kincaid Grade level, Flesch Reading Ease, ATOSなど)が統計的有意に上昇している。

このような定量的指標に基づいて議論しているわけではありません。感覚的にそう思い込んでいるようです。ところが、「国際ビジネスコミュニケーション協会」が発表している「TOEIC Program DATA & ANALYSIS 20XX」に基づいて私がまとめた以下の表をご覧ください。



2016年度と2022年度の数値を比較すると、平均点は29点増、795点以上取った受験者の割合は3.0パーセントポイント上昇、895点以上取った人の割合は0.6パーセントポイント増えています。

これで、難化していると主張するのは無理が有るのではないでしょうか。平均点や高得点者の割合が下がっていれば「難化」したと言って構わないですが、この表を見る限り、客観的数値はむしろ反対方向に動いています。2016年度に比べて、高得点者の割合が下がるどころか、上がっているのです。

TOEIC Listening & Reading公開テストは、同じ年度内でも難易度は多少変動します。激ムズと言われるフォームもあれば、「易」と評価されるフォームもあります。午前と午後でも異なるようです。

さらに、TOEICリスニングとリーディングの各セクションの測定標準誤差(SEM)は約25点と報告されています。したがって、某受験者のリスニングスコアが325から275に下がっても、単なる個人の変動範囲内である可能性もあります。

各受験者の体調の良し悪しもありますし、試験会場の音響環境もスコアに影響を及ぼします。隣に座っている人が貧乏ゆすりをしたり肝心な時にクシャミをされたら集中力が落ちますよね。

TOEIC難化を主張する人の中には「年々テストは難化しているから数年前の問題集は役に立たない」と新刊本の購入を勧めている人もいます。しかし、一般的な英語学習者は、中古の問題集でも徹底的に使い込めば十分高得点が狙えると思います。2017年に出版されたTEX加藤の「TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ」は今でもAmazonベストセラー1位です。

ちまたの噂にあおられて新しい本を購入するより、手持ちの教材を徹底的に使い込む方が高得点への近道かもしれません。

こんなブログ記事を書くと英語教材出版社から怒られそうですが、BOOKOFFで定価の半額で買った本が重宝することも少なくありません(笑)。大学生なら、先輩から譲ってもらった本でしっかり勉強しましょう。