英会話イートレック ☆ 世界を歩く」というブログでは、5月27日の「“ソーシャル・ディスタンス”ではなく、“ソーシャル・ディスタンシング”」という記事で、以下のようなことを書いていました。



海外からの「爆買い」欲しさに中国人などの入国を認めた途端に、大規模な第二波に襲われます。

こういう偏見に満ちた主張はどこから来るのでしょうか。新型コロナウイルスの感染拡大防止のために入国制限をするのは構いませんが、以下のような客観的データに基づいて判断すべきです。

T. 人口100万人あたりの累計感染者数(Total cases per 1 million people)
D. 人口100万人あたりの死亡者数(Deaths per 1 million people)
A. 現在感染者数(Active cases)

> 中国 - 日本
T. 58 --- 132
D. 3 ---- 7
A. 79 --- 1820

(A) Active cases mean the infected people who are still being treated and not yet recovered. 5月27日の時点で、現在感染者数は日本が1820人であるのに対して、中国は僅か79人です。中国人の入国を認めた途端に大規模な第二波に襲われる?

イートレックさんが住んでいる大阪府の現在感染者数は199人なので、中国本土の現在感染者数の約2.5倍です。中国人より大阪府民の方が危険ですね(笑)。

中国は感染者数を故意に少なく発表しているのではないかと勘ぐる方がいるかもしれません。しかし、実際の感染者数が公表値の20倍だとしても1580人ですから、日本の1820人より少ないです。

最近、中国製マスクが私達近所の薬局やスーパーの棚にあふれ、値段も徐々に下がっています。中国の感染者数が激減しているから、日本に輸出する余裕があるのでしょう。

さらに、イギリスの医学雑誌The Lancetに「Remdesivir in adults with severe COVID-19: a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial」という論文が掲載され、中国で実施された臨床試験の結果が報告されています。その論文中に以下の英文があります。

No patients were enrolled after March 12, because of the control of the outbreak in Wuhan(武漢での流行が抑えられたため、3月12日以降は患者が登録されなかった)

抗ウイルス薬レムデシビル(Remdesivir)の安全性と有効性を評価するために中国で臨床試験を実施したのですが、中国の感染症対策が功を奏して新規患者が減ってしまい、予定より早く臨床試験を中止せざるを得なかったのです。

人口100万人あたりの死亡者数で比較しても、中国は3人、日本は7人です。新型コロナウイルス感染症対策に関して、中国は日本と同等以上の成功を収めています。

感染防止策はもちろん重要ですが、経済回復も大切です。無知による偏見は排除し、客観的データに基づいて入国制限を適切に解除する必要があります。



social distancingもsocial distanceも正しい英語表現です。どちらも使われています。たとえばニューヨーク州議会のウェブサイトには以下のような文章がありました。

While there is currently no vaccine to prevent this virus, these steps can help stop the spread:
- Wash your hands often with soap and water for at least 20 seconds. If soap and water are not available, use an alcohol-based hand sanitizer.

中略
- Maintain a social distance of at least 6 feet


social distanceは距離ですから、長さの単位と共に使うことができます。前に来る動詞はkeepやmaintainなどです。一方、social distancing(社会的距離の確保)は感染症対策なので、implementやenforceなどの動詞が前に来ます。文脈に応じて、social distancingとsocial distanceを使い分けましょう。