Neil M Fergusonらが発表した「Impact of non-pharmaceutical interventions (NPIs) to reduce COVID-19 mortality and healthcare demand」という論文のうち、最初のThe global impact of COVID-19 has been profoundからwhether the social and economic costs of the interventions adopted thus far can be reducedまでを和訳しました。この論文は、ヨーロッパ諸国の新型コロナウイルス対策の根拠になっているようです。

COVID-19の世界的な影響は甚大で、その公衆衛生上の脅威は1918年のH1N1インフルエンザ大流行以来、呼吸器ウイルスとしては最も深刻なものである。ここで我々は、最近数週間でイギリスや他の国の政策決定に情報を与えた疫学的モデリングの結果を紹介する。COVID-19ワクチンがない場合、住民の接触率を下げてウイルス伝播を減少させるために、多くの公衆衛生対策、いわゆる非薬理的介入(NPIs)の役割を評価する。ここで示した結果では、以前に発表したマイクロシミュレーションモデルをイギリス(具体的にはGreat Britain)とアメリカの2カ国に適用している。その結果、1つの介入を単独で行っても効果は限定的である可能性が高く、感染に十分影響を与えるには複数の介入策を併用する必要があると思われる。

 

2つの基本戦略が可能である。(a)緩和策は、流行病の拡大を遅らせることに重点を置くが、必ずしも流行を止められるとは限らない。重症化リスクが最も高い者を感染から守りつつ、医療需要のピークを下げる。(b)抑制策は流行病の拡大を逆行させるものであり、症例数を低レベルまで減らし、その状態を永久に維持することである。それぞれの政策には大きな課題がある。最適な緩和政策(疑似症患者の自宅隔離、疑似症患者と同じ世帯に住む者の自宅検疫、および高齢者など重症化リスクが最も高い者の社会的距離の確保を併用)によって、ピーク時の医療需要を2/3減、死亡者数を半減させる可能性があることが分かった。ただし、その結果緩和された流行病でも、何十万人の死者を出し、医療制度(特に集中治療室)の処理能を遥かに超える負担を強いられるだろう。緩和を達成できる国には、抑制策が好ましい政策の選択肢として残されている。

 

イギリスおよびアメリカでは、抑制策には全住民の社会的距離の確保、症例の自宅隔離、およびその家族の自宅検疫の併用が最低限必要である。さらに、学校や大学の閉鎖が必要かもしれないが、このような閉鎖は欠勤者増加によって医療制度に悪影響を及ぼす可能性があることを認識すべきである。抑制策の主な課題は、この種の集中的介入パッケージ(あるいはそれと同等の感染低減効果を持つもの)は、ワクチンが入手可能になるまで(おそらく18ヵ月以上)維持する必要があるだろう。なぜなら、介入を緩めると、感染の勢いが直ちに元に戻ると予測されるからである。疾病サーベイランスの動向によって起こる断続的な社会的距離の確保によって、比較的短い期間に介入を一時的に緩めることができるかもしれないが、症例数が再び増加する場合は、対策を再度導入する必要があるだろう。最後に、中国での経験および韓国の現状を見ると、抑制策が短期的に可能であることを示している。しかし、長期的に可能かどうか、また、これまで用いた介入策の社会的および経済的負担を軽減できるかどうかは、今後の課題である。