昨今、ご趣味は?と問われれば断然一人居酒屋である。

注意書きとして加えなければいけないのは、それは「探訪」ではないということ。

つまり新たなる店を捜し求めるという有意義なものではなく、勝手の知れたいくつかの店に只々呑みに赴くというもの。

そんな栄誉ある店の一つに名を連ねるには、それなりの条件がある。

1)本を読んではいけないという雰囲気がないこと
2)カウンターから通りが見えること
※「安い」というのはそれ以前の問題なので列挙せず

2)については最近気づいた。
贔屓にしてる店は、往々にしてカウンターから入口や窓越しに通りが見渡せるのだ。

ウーハイを啜り、鳥唐を突きながら、なんともなしに流れてゆく見知らぬ人々や車とかチャリとか流鏑馬などを眺めるのである。



そんな折、先日店の前を一瞬横切っていったのは確かに十数年に同じ職場にいたMであった。

彼女はその職場においてはあまりにもインパクトが薄く、かつ愛想も幾分欠落していたため親しくする者もいなかった。
そして、そういう人がかなりの確立でそうであるように彼女はその職場にそれ程長くは在籍しなかった。


オレは「あ、お客さ……」と不意をつかれた店員を振り切り、閉まり悪い扉を跳ね除け、彼女の向かった方に向かって駆け出していた。

……というのは世の中にIFが存在するならばの話で、
実際の小職は30分も要して、やっとの思いで彼女の名がMであったといことを思い出しただけであった。