「あの業務は、あの人にしか分からない」
そんな状態に、胃が締め付けられるような不安を感じたことはありませんか。
担当者が一人辞めただけで、メルマガの配信が止まる。LPの改善が進まなくなる。効果測定のレポートが誰にも作れなくなる。
この「属人化」を解消しようと、AI導入を検討する経営者の方が増えています。しかし、私が多くの現場を見てきて感じるのは、AIを入れる前に、やるべきことを飛ばしている企業が非常に多いということです。
それが、社内に眠る「暗黙知の棚卸し」です。
なぜAI導入の前に暗黙知の棚卸しが必要なのか
AIは万能に見えますが、実は「何を任せればいいか分からない仕事」は引き受けられません。
属人化した業務の正体は、多くの場合「作業そのもの」ではなく、担当者の頭の中にある判断基準です。
- どのタイミングで、どんな文面のメールを送るか
- LPのどこを直せば反応が変わるか
- 数字のどこを見て「良し悪し」を判断しているか
これらが言語化されていない状態でAIツールだけを導入しても、「結局、あの人がAIに指示を出さないと回らない」という新しい属人化が生まれるだけです。
だからこそ順番が大切です。まず暗黙知を棚卸しし、それからAIに渡す。この順番を守るだけで、成果はまったく変わってきます。
ステップ1:属人化している業務を洗い出す
最初にやることはシンプルです。「この人が1週間休んだら止まる業務」をリストアップすること。
おすすめは、業務を次の3つに仕分けする方法です。
- 誰でもできる業務(手順書があれば回るもの)
- 特定の人しかできない業務(その人の経験や勘に依存しているもの)
- 誰がやっているか曖昧な業務(気づいた人がやっている状態のもの)
属人化の火種は「2」と「3」に潜んでいます。
たとえばLP制作を外部に丸投げするかどうか迷っている場合も、この仕分けが判断基準になります。社内に判断基準が残っている業務は仕組み化できますが、判断基準ごと外部に依存している業務は、丸投げすると社内が空洞化します。「作業」は外に出しても、「判断基準」は社内に残す。これが丸投げの原則です。
ステップ2:担当者の頭の中にある判断基準を言語化する
次に、洗い出した業務について、担当者にヒアリングします。
このとき「マニュアルを作って」と依頼するのは避けてください。忙しい担当者ほど後回しにしますし、本人にとって当たり前すぎることは、マニュアルに書かれないからです。
効果的なのは、質問形式で引き出すことです。
- 「この作業で、最初に何を確認していますか?」
- 「AとBで迷ったとき、何を基準に選んでいますか?」
- 「初心者がやると、どこで失敗しますか?」
録音して文字起こしするだけでも構いません。むしろ最近は、この文字起こしと整理こそAIが得意な領域です。30分の雑談的なヒアリングから、判断基準の一覧を作ることも十分可能です。
ポイントは、完璧を目指さないこと。6割の言語化でも、ゼロとは天と地の差があります。
ステップ3:言語化したノウハウをAIに任せる形に整える
言語化ができたら、いよいよAIに渡す準備です。
といっても、難しいことは必要ありません。やることは「判断基準」と「お手本」をセットにすることです。
- 過去にうまくいったメルマガやLPの実例
- ステップ2で言語化した判断基準
- 自社のトーンや、やってはいけないNG事項
この3点セットがあれば、AIは「その担当者らしい仕事」を再現しやすくなります。
効果測定のレポート作成などは、特に相性が良い領域です。「毎月この数字を見て、この観点でコメントする」という型が言語化できていれば、レポートの下書きは自動生成に任せ、人は最終判断だけに集中できます。
小さく始めて仕組みに育てるコツ
ここまで読んで、「よし、全社的にやろう」と思われた方に、あえてお伝えしたいことがあります。
壮大な構想は、一度脇に置いてください。
人間の脳には、計画を立てた時点で達成を錯覚してしまう性質があります。理想のシステム図を描いて満足し、手が止まる。これは意志の弱さではなく、脳の仕組みの問題です。
だからこそ、最初の一歩は小さくていいのです。
- 議事録の要約を1本、AIに任せてみる
- エース社員に30分だけヒアリングして、判断基準を3つ書き出す
- レポートの1項目だけ、自動生成を試してみる
「任せたら回った」という小さな実績が、次の一歩を軽くします。その積み重ねの先に、担当者が辞めても止まらない、事業成長のための仕組みが育っていきます。
私たちも、こうした暗黙知の棚卸しからAIによる実務の代行までを一気通貫で支援しています。まずは自社のどの業務から始めるべきか、無料トライアルの中で一緒に整理することも可能ですので、興味のある方は気軽にお試しください。
AIが実務を担い、人が価値を生む。
その第一歩は、今日、社内の「あの人しか知らないこと」を一つ書き出すことから始まります。
