フィラデルフィア物語  | 桜さんの映画鑑賞日記

フィラデルフィア物語 

フィラデルフィア物語  1940

THE PHILADELPHIA STORY

ワーナー・ホーム・ビデオ
フィラデルフィア物語 スペシャル・エディション

フィラデルフィアの上流社会の令嬢トレイシー(ヘプバーン)はジョージ(ハワード)との結婚を目前に控えていた。

それを知って、二年前に彼女の我がままとプライドの高さに耐えかねて出ていったデクスター(グラント)が、雑誌記者のコナー(スチュワート)とインブリ(ハッセイ)を連れてやって来る。

実は邸の主人は浮気相手のところへ行っていて式にも呼ばれていない有様で、体面を重んじる一家は、記者の前、何とか取り繕う。トレイシーに未練のあるデクスターは静かなる結婚妨害を試みるが……。

バリーのブロードウェイ・コメディを軽快なテンポで映画化。

軽妙な演技のスチュワートと、こなれた脚本のスチュワートがオスカーに輝く。

ヘプバーンのコメディエンヌぶりが何より楽しい。

'56年に「上流社会」としてリメイクされた。カラライゼーション版有り。


監督: ジョージ・キューカー

キャサリン・ヘプバーン Katharine Hepburn
ケイリー・グラント Cary Grant
ジョン・ハワード John Howard
ジェームズ・スチュワート James Stewart
ルース・ハッセイ Ruth Hussey
ローランド・ヤング Roland Young
ジョン・ハリデイ John Halliday
ヴァージニア・ウェイドラー Virginia Weidler
メアリー・ナッシュ Mary Nash
ヘンリー・ダニエル Henry Daniell
ヒラリー・ブルック Hillary Brooke


アカデミー賞

主演男優賞 ジェームズ・スチュワート

脚色賞 ドナルド・オグデン・スチュワート

NY批評家協会賞

女優賞 キャサリン・ヘプバーン

アメリカ国立フィルム登録簿


★★★★★★★☆☆☆

この映画は保存版に買ってよかったなぁと思える作品です。

というのも登場人物の心境が意味深でどうにでも取れ、

観るタイミングによってかなり違うと思えるからです。

最初に観た時はざっと観て5点くらいかと思ったのですが、

リメイク版の「上流社会」を観たら即またこちらを観たくなり、

今度はセリフもよく吟味して見直すとまた違う。

そしてさらにまた最初から観たくなったのですが、

登場人物の心境描写がどうにでも取れると説明しましたとおり、

また私の見方も変わるかもしれないと2回でやめました。

しばらく置いてからまた観てみたいなということで保存版は大正解。

さて、J・スチュワートが主演男優賞を取った作品ということですが、

作品はたいしたことはないのに主演を取っちゃうことってありますよね。

1回目に見たときにはただのラブコメだと作品を観て、

なぜこの作品で主演男優賞なのかわからなかったくらいです。

しかし2回目を観るとかなり重要な役なわけでして、

この時点で私はこの作品を作品としても面白いと思ったのです。

主演=主役=オチも彼と見ていたらそうはならなかったのかも。

セリフ合戦をやらせたらK・ヘップバーンはやはりうまいです。
この彼女の気持ちがなかなかよく理解できなかったので不思議な作品でした。

演じてる本人の役が自分の気持ちがどう変わっていくのか理解できない役、

これは3人の男の心境も絡ませて考えないと理解できない。

要するに一番わかりにくい役が彼女の役です。

そしてさらに輪をかけるようにわからなくさせているのが、J・スチュワートの役。

こいつが現れたのがきっかけで彼女は元ダンナのC・グラントがそこにいることを発見するのです。

元ダンナは明日は元妻の結婚式でなんとか復縁したい。

その元ダンナの計画なのか偶然なのかわかりにくいところも演出なんですが、

たぶん妻の性格を知っての筋書き通りに運ぶことは、

元ダンナが関与せずとも愛する元妻は「卒業」や「プリティブライド」のごとく、

若い新聞記者(小説家)と恋に落ちるどんでん返しになってゆく・・

その理由は見ているこちらもわからない。

その事件は最後のほうまで尾を引き元ダンナのもくろんでいた婚約破棄のあと、

さらに当たり前のように(普通の恋愛コメディなら)新しいカップルで式場へ・・

ところが最初に出てきた未練がましい元ダンナの結婚祝いのヨットの置物が、

ここでようやく複線だと元妻にも観ている観客にもわかるのです。

・・今回のレビューは書いてる自分でもよくわかっていないのですが(苦笑)

この映画は恋愛モノなのですが自分探しのテーマもあるんです。

豪華さを幸せさを演じているかもしれない現代の女性は、

まさに時代も階級も違えどこの女性と同じかもしれません。

元ダンナが愛しているのに相手にされず常に成り行きを見守る、

その姿が単にひつこくも哀しくもなくこっけいな第三者的に見える演出も見事。

明日は結婚という女性が回りの人や突然共感してしまった新聞記者を通して、

最後には自分と一番近い人を発見するというちょっと面白い映画です。

突然共感してしまった新聞記者というのも、

お酒の勢いで素直になったことからなんですが・・

女性の目から見てもこの女性は難しい~

バスロープ姿のK・ヘップバーンをこれまたバスロープ姿の長身のJ・スチュワートが抱き、

オーバーザレインボウを歌いながら近づいてくるこっけいさ。

そろいも揃った元ダンナと婚約者のなんともマヌケさ。

なかなか面白いセッティングでした。

セリフもおしゃれで、「人間は土から出来てる、私の足はとろけそう」

みたいなセリフはちょっと思いつかないですね。

登場人物の気持ちがよくわからないところにこそこの作品のオモシロさがあると思います。

次々起こるハプニングにたったひとり「やはりそうか」と、

C・グラントが冷静にうなずくのに対し、

猜疑心から夢気分に変わるまでのJ・スチュワートの比較も面白い。

まあ観やすい方法といえば・・

元ダンナは脚本で、元妻はその演出、

新聞記者はといえば観客と見れば理解しやすいかもしれません。

どちらかといえば、舞台劇に近い映画です。