BRAVE HEARTS 海猿 | 愛すべき映画たちのメソッド☆

愛すべき映画たちのメソッド☆

映画感想家・心理カウンセラー・芸術家のNatsukiです☆

『映画にどんなに素晴らしいメッセージが含まれていようと
「娯楽性」がなければ作品としては失敗だ』/レオナルド・ディカプリオ



「レスキューに必要なのは、スキルと冷静な判断力だ。」



シリーズ3作目であった前作「THE LAST MESSAGE  海猿」は、タイトル通り完結編として制作されたが、配給の東宝には公開直後から4作目を望む声が次々と寄せられていた。

そんな中、2011年3月11日に東日本大震災が発生する。

未曾有の災害の中で、あらゆる人たちが自らを顧みずに他者を救おうとする行為を映画関係者たちは目の当たりにし、人の持つ「優しさ」「勇敢さ」「絆」を再認識し感銘を受ける。

日本が震災というとても困難な状況に直面している時期に、はたして人命救助を扱うエンターテインメントを作って良いのだろうか・・・という意見も交わされたが、実際に多くの海上保安官が活躍したと言われる被災地の『海猿』ファンからも続編製作を望む声が多数寄せられたそうだ。



「生きて、俺とじゃなくても、誰かと幸せになって欲しいんです。」



映画関係者たちは『海猿』のテーマとも重なる「誰かのために戦っている人たち」が被災地に多くいることも震災を通して強く感じ、ついに4作目の制作にGOサインが出された。

そういう経緯もあり、今までのシリーズの様に主人公の仙崎をはじめとする海上保安庁の隊員たちの活躍のみを描くのではなく、市井の人々が協力し合い、みんなで勇気を振り絞って目の前の命を救おうと懸命になる姿にも焦点が当てられた。

この、あらゆる人々がみんなで協力して助け合うという場面は本作の重要なテーマになっていて、震災を体験した今だからこそ見えない「絆」に涙が溢れ、本当に大きな「勇気」をもらえる。



「俺達だけじゃない。戦っているのは俺達だけじゃないんだ。」



ついに最高レベルのレスキュー能力を誇る海上保安官《特殊救難隊》のメンバーとなった仙崎と吉岡。

プライベートでも昔のように冗談を言い合う幸せな日々を送っていた。

そんなある日、シドニーから羽田へ向かっていたジャンボジェット機「ボーイング747-400」の左翼エンジンが爆発し、飛行困難となった機体が東京湾へ海上着水する事故が発生する。

乗員乗客の中には吉岡の恋人でありキャビンアテンダントの美香もいた。

沈没までのタイムリミットはわずか「20分」という緊迫した状況の中で、仙崎たちにさらなるピンチが次々と襲い掛かる。

はたして「乗客乗員346人」全員を助け出すことができるのか・・・。



「今回は動ける者から救助する。通常は動けない者から救助するが、今回は動ける者から救助しないと間に合わない。」



『トップガン』の様に、過酷な訓練を乗り越えた者が揃った海上保安官の中でも人握りの精鋭だけがなれる《特殊救難隊》。

その中で仙崎はまだ新人なので、原点回帰したかのような雰囲気の本作は久々に「先輩に怒られる仙崎」が観れる。

伊藤英明演じる仙崎の「絶対に全員を助ける」という《熱い想い》と、伊原剛志演じる嶋副隊長の「感情に流されるな」というストイックで《冷静な判断》が何度もぶつかり合う。

どちらも「正論」で、どちらも「理想」なのだが、あらゆる状況や現場でそれは常に変動し答えは出ない。



「希望がある限り絶対に諦めるなと教えてくれたのは、下川さんですよ。」



仙崎の熱い想いは、嶋副隊長からも加藤あい演じる妻からも「いつも根拠が無い」と指摘され、仙崎は落ち込む。

しかし「絶対に全員を助ける」という熱い想いは綺麗事ではなく、仙崎はその想いによって過酷な現場で何度も何度も「努力」し、たくさんの仲間と助け合い多くの人命を救い、後から「根拠」を生んできたのだ 。

たとえ「根拠」が無くても「Brave Heart=勇敢な心」を持った人々が力を合わせれば、想像を超える奇跡を起こすことができる。

そんなストレートな「希望」を、本作に携わったスタッフ・キャスト全員が力を合わせ、諦めずに多くの困難を乗り越え、エンターテインメントとして見事に表現し、我々にたくさん教えてくれた。



「貴方が仙崎さん・・・、私は10年目で初めて子供が産まれます、絶対に会いたいので生きて帰りたい。」