
「パパは失踪中、ママは恋愛中、そして私は落下中。」
元刑事のロクデナシ親父が、成績優秀、容姿端麗、学園のカリスマでもある失踪した女子高生の娘を探すうちに、娘の《本当の姿》を知ることになってしまうという、現代ならではの衝撃の物語。
深町秋生による推理小説で、第3回『このミステリーがすごい!』の大賞受賞作『果てしなき渇き』を『下妻物語』『嫌われ松子の一生』『パコと魔法の絵本』『告白』の中島哲也監督がレイティングR15+で映画化。
「育児」「親子」「愛」とは何かの《答え》がここにはある。
北米での配給タイトルは『World of Kanako』。
「たまに私の夢に迷い込む子がいるけど、すぐにみんな逃げ出しちゃうわ。だって、自由って怖いから。」
キャストは『パコと魔法~』からの役所広司と妻夫木聡と國村隼 、『告白』からの橋本愛、『嫌われ松子~』からの中谷美紀と黒沢あすか、『悪の教典』の二階堂ふみ、『奇跡』のオダギリジョー、『ソロモンの偽証』の清水尋也、『るろうに剣心』の青木崇高、そして本作のオーディションで中島監督に発掘され、主人公の娘となる加奈子役で本格的に演技初挑戦し女優デビューした小松菜奈のただならぬ存在感が凄まじい。
「シャブやってると、喉が渇いて仕方ないだろ?」
元刑事で今は警備員の男は、コンビニでの大量殺人を目撃してから間もなく、離婚した元妻から行方不明になった娘の捜索を依頼される。
しかし娘を探していく過程で、娘が悪名高い不良グループと関係している疑惑が浮上し、さらに彼女の部屋から大量の「ある物」を発見する。
いつしか男は、娘が裏社会や財政界の人間までもを巻き込んだ大規模な犯罪行為の渦中にいることを知り、彼もそれに巻き込まれていくうちに、娘を探す手口が徐々に「凶暴」になっていく。
はたして娘の「本当の姿」とは・・・?
「凄く好きだった。だから殺した。もっと好きになりたかったから。」
行方の知れない娘を見つける為に、娘の交友関係を一から一つずつ辿って紐解いていくことで、これまで知らなかった娘の《本当の姿》=《正体》が次々と浮かび上がるというミステリー的な仕掛け。
そして《狂気》に満ち溢れている。
役所広司が日本映画史に残るダメ人間を、そして暴力やドラッグに明け暮れる姿を鬼気迫るテンションで演じていて、役者魂が燃え盛っている。
後の伏線にもなっている「ダイワハウス」風の役所広司セルフパロディから始まり、ジェットコースター並のスピードと荒っぽさで「日本のアンダーグラウンド」を駆け抜けるハイテンションな118分。
「加奈子は最高に狂っていて、そして空っぽ・・・。なんでみんな加奈子に夢中になるの?」
暴力、セックス、殺人、ドラッグなど、普段の日常生活での「理性や論理」などが全く通用しないどころか吹っ飛んでしまう「無力感」で打ちのめされる。
撮影当時、本当の女子高生だった小松菜奈の「人を虜にする吸引力」は、昨今の女優の中でも別次元で、劇中で「十代から大人まで」の男たちを次々と虜にしていき次々と破滅させる姿は、まさに現代日本の「ファム・ファタール」=「男を破滅させる魔性の女」の様だ。
そういう意味もあり、彼女が演じる「娘」は「ドラッグ」のメタファーになっている。
誘惑に負けて一度手を染めてしまうと「虜」になり、どんどんそれを求める頻度が増え、止めたくても自分の「欲望」を抑える理性も失い、最期は身を滅ぼして「死」が訪れる・・・。
幸運に「死」を免れた者でも、結局また「快楽」の大穴へと自ら飛び込んでいくだろう。
彼女は、一度味をしめると「更生」は不可能な「純度100%のドラッグ」なのだ。
そして本作自体が、一度観てしまうと、役所広司の暴れっぷりの「虜」になり、小松菜奈の笑顔に翻弄され、また何度も観直してしまうほど危険な匂いがプンプン漂うドラッグだ。
そう、これは中毒必至の「劇薬エンターテインメント」なのだ。
「ある時代が狂って見えるのは、見ている人間が混乱しているからだ。/ジャン・コクトー」