ジェネラル・ルージュの凱旋 | 愛すべき映画たちのメソッド☆

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映画感想家・心理カウンセラー・芸術家のNatsukiです☆

『映画にどんなに素晴らしいメッセージが含まれていようと
「娯楽性」がなければ作品としては失敗だ』/レオナルド・ディカプリオ





「良かったね事務長。これでお客様だ。死んだら金取れないもんね」

医師として、Ai(死亡時画像病理診断)の重要性と社会制度への導入を訴え続けている原作者の海堂尊。

彼は日本の医療現場の数々の問題を解決するべく戦い続けながら、いろんな趣向の娯楽小説で自らの考えを表現している。

《一人でも多くの患者を救う》という当たり前でありながら困難な目標と戦っている医師たちの苦悩や、日本中の病院の内部に蔓延る重くて深い多くの問題を、我々素人にも判りやすく《一級のエンターテインメント》として仕上げ、発表し続けている。

今作は田口・白鳥コンビが活躍する《東城大学シリーズ》の第三弾であり、映画化二作目。

原作で描かれていた『ナイチンゲールの沈黙』とのリンクは全てカットしつつ、逆に映画的サスペンスを追加し2時間にまとめたのは勇気ある決断。

医療問題を絶妙なエンターテインメント性でバランス良く融合し、知的好奇心を刺激しながら笑いとサスペンスで釘付けにし、ディープなテーマをストレートに訴えかける事に成功している。

患者の返り血を顔面いっぱいに浴びながら、それをものともせずに手術を続けた若き天才医師。

彼は、最前線の過酷な救命救急センター長としてジェネラル・ルージュ=《血まみれ将軍》と呼ばれている。

彼の下で不眠不休で働かざるをえない医師たちの複雑に絡み合う様々な思惑や、救急医療の限界・病院経営の困難・医療コスト・医師の負担と報酬のアンバランス・・・。

我々は、背景にあるこれらの問題の何パーセントかを垣間見る事になり、知る事ができる。そこに映画化の意義がある。

《笑顔だけで喜怒哀楽の全てを表現する》と言われている堺雅人の役者魂は相変わらずハイレベルで説得力に溢れ、彼の真に迫った言動を通してサスペンスドラマの謎解きが揺さぶられる。

同時に、致命的な悪循環に陥っている医療現場の惨状を無知だった者の心に訴える。

竹内結子と堺雅人と貫地谷しほり、プラス中村義洋監督の『ゴールデンスランバー』四人組は、それぞれの演技はもちろん、オープニングから散りばめられた伏線とその回収、クライマックスの《修羅場》での鬼気迫る雰囲気など、どの場面も本当に素晴らしい。

対照的に、阿部寛の嫌味にならないギリギリのキャラクターが今作も大いに笑わせてくれるし、気持ち良いくらいに本音を吐きまくる。

彼が終始、車椅子に乗ったまま事件の真相を追求する点も含めて、ヒッチコックの名作『裏窓』を彷彿とさせるオチの可笑しさが映画的にとてつもなく素敵で忘れ難い。

「上に立つ者はわがままでなくてはいけない。指揮官はときに人でなしになることが必要だ。」


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