深井智朗「プロテスタンティズム」から | さかえの読書日記

さかえの読書日記

琴線に触れたことを残す備忘録です。

「プロテスタンティズムは教皇というすべての教会を一つにする人格を失い、聖書の権威によって教会を基礎づけようとして宗派だが、肝心の聖書の解釈によっていくつもの分裂が生じ、今日まで様々なプロテスタンティズムを生み出し続けている。」

 

「一つは古プロテスタンティズムの伝統を受け継いだプロテスタンティズムである。宗教の改革は既存の宗教制度への批判から始まり、1555年のアウクスブルク宗教平和の決定で一つの政治的支配領域には一つの宗教という決定を受け入れたので、改革というよりは、保守化したプロテスタンティズムで、政治的支配者とともに社会の正当性や国民道徳の形成に努力するようになった教会である。今日のドイツなどのルター派は教会はその典型的な例であろう」

 

「もう一つは新プロテスタンティズムの伝統を受け継いだプロテスタンティズムである。国家や一つの政治的領域に支配者とは結びつかず、自覚的な信者による自発的な結社として、民間の教会として、そして今日の言葉で言えば社会の中の中間団体として存在してきた教会である。既存の宗教制度に従わず、むしろそれを破壊し、ルターやカルヴァンからも批判されたこの伝統は、自らを守るために彼らが生み出したのではないが、この時代の政治的戦いの武器であった人権、デモクラシー、抵抗権などの諸思想の担い手を生んだ。トレンチが指摘したとおり、大陸のルター派やカルヴィニズムとは違って、近代世界の成立に寄与したとされる勢力の一翼を担うことになったのだ。今日のアメリカのプロテスタンティズムの諸勢力にその典型な例を見ることができる。」