「『えほんや』ってどうやって
　電子絵本を出してるの？」
と最近聞かれることが多いので、
説明をさせてください。

「えほんや」の絵は絵本の画家さんやイラストレーターさんに
お願いして、まったく新しくオリジナルで描きおこしてもらっています。
その時点ではギャランティーなしでお願いしています。

作品がApp Storeで販売開始後、ダウンロードされた分に応じて
画稿料の形でお支払いしています。

現在、全作品を250円で販売しています。
Appleさんの手数料、Adobeさんのダウンロード料金をひくと
弊社への入金が１作あたり150円です。

そのうち、60円（40％）を画家さんにお支払いし、
お話の作家さん、英訳の作家さんに5％ずつお支払いします。
弊社には75円が残ります。

１作品、5000部売れれば、画家さんに30万円お支払い
できるのですが、…まださすがに、そこまでは行っていません。
あと、２けた、かな…。

実際は、AdobeさんのDPSというシステムの年間契約料金や
録音の声優さんへのお支払い、アナログ原稿をスキャンする
製版代金などの実費がかかるため、持ち出しでやってます。

ギャラなし、締め切りなし、催促なし
ギャラがないかわりに、画家さんたちの通常の仕事を
優先させてもらい、締め切りは特に設けていません。

ただし、お願いするのは
「この絵本の代表作となるような絵を、
　好きなようにお描きください」
ということだけ。

これが、いつのまにか、画家さんたちの世界で
「えほんやさんは、好きなだけ時間をとって
　描きたいように描かせてもらえるのに、
　この程度、って思われたくないから
　全力投球しちゃうよね」
という嬉しい評判ができてきているようです。

まるで、展覧会で発表するように力を入れてくださいます。

ありがたい、ことです！

原が作品を読み込み、画家さんとだいたいのプロットを相談する。
上がってきたラフを見て、文字スペースや展開、
絵がらや構図の相談を改めてする。

彩色画があがったところで、文章のスタートです。
通常の絵本作りとは逆に、絵が先行、文章があとです。

指定されたスペースに、指定された内容のイラストを
描くことに慣れているイラストレーターさんだと、
ここのハードルがかなり高い、ということも
分かってきました。

文章ができあがると録音、これもスタジオなどは借りず、
会社の中にマイクをセッティングして行います。

それに並行して英訳を進めます。
英語はアメリカで録音した音声を
MP３のデータで送ってもらいます。

そしてデータをビルドして、電子絵本に仕立てあげます。

その間の校正は、関係者の iPad や iPhone 上にデータを
アップロードして行っています。
クラウドのすごさ、を感じます。

とても手作りな、アナログな作業なんです。

電子えほんにする InDesign CS6 というソフトにはとても
便利な機能がたくさんあるのですが（たとえば、iPadで
文字を直すと、iPhoneのデータも連動して修正してくれるとか…）
実際にはそうした便利な機能があまり使えないほど
手作りなんです。（ちょっと悲しい…）

とはいえ、夜のかなり深い時間帯に
Macに向かいながら、絵と音を絵本に作り上げて行く作業は
編集者としてとても楽しい瞬間です。

子どもたちに読みやすくするには、
文字をどこに置くのがベストなのか、
この展開が本当にベストだったのか…。

失敗を山ほど繰り返しながら、
この１年で作り方もかなり進化してきました。
タブレットやスマホ上でより美しく、
印象に残るように見せる方法もいろいろと学べました。

先日もある画家さんに出来上がったものを
iPadでお見せしたら、濃紺の空の色をバックに、
英文が白抜きで置かれたページをご覧になって、
ちょっと嬉しそうに…

「この白ヌキの文字、結構気持ちいいですね」
と言っていただけました。

「でしょ」と言いながら、
心の中で、ガッツポーズをとったのは
言うまでもありません。

「えほんや」の作り方