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お店の奥で小さな影が振り向いた。
番台に散らばった色とりどり。
ちよがみ、色は赤が多いかな。
引き出しから取り出してはぼくの前に広げる。
「あかねいろ、からくれない、さんごいろ、ももいろ」
ならび立てた色の呪文、最後二つはピンクだろうか。
あの子が熱心に教えてくれるものだから。
「これ、すきなんだね」
そう言ったら小さく笑ってくれた。
……たのしい時間ってはやくおわっちゃう。
アーケードの向こう、広がる空はどんな色?
さよなら、またね。手を振る代わりに、ぼくは笑った。
<作者のことば>
村上加奈/詩
最初に佐藤紙店さんへお邪魔した時、私が「座敷童が居そう」と言い出したのがこのお話のきっかけです。
座敷童イコール幸せ、ほっこり和む、そんな勝手なイメージが暴走し形になりました。
読む方によって違う座敷童像を想像してくだされば幸いです。
三木麻夕莉/絵
最近、日本の伝統的な模様に興味があります。
今回の作品ではたくさんの模様を描くことができて楽しかったです。
お店の不思議ですてきな雰囲気が少しでも表現できていたらうれしいです。

大海原(おおうなばら)を船(ふね)が行(ゆ)く
小(ちい)さな船(ふね)に大(おお)きな帆(ほ)
船(ふね)に乗(の)るのは旅人(たびびと)と猫(ねこ)
「相棒(あいぼう)、街(まち)が見(み)えてきたよ」
「おいしいものはあるかにゃあ」
船(ふね)の帆(ほ)は街(まち)を見定(みさだ)めて
力強(ちからづよ)く風(かぜ)を抱(だ)き止(と)める
街(まち)に着(つ)いた旅人(たびびと)と猫(ねこ)
風(かぜ)で編(あ)んだ帆(ほ)でできた
バッグを持(も)って街(まち)に出(で)る
「やあ旅人(たびびと)さん! よく来(き)たね」
「おみやげ持(も)ってお行(ゆ)きなよ」
軽(かる)く丈夫(じょうぶ)な特別(とくべつ)バッグ
おみやげ入(い)れても安心(あんしん)だ
<作者のことば>
工房おのみち帆布 森岡ひかり
自分が担当させていただく店舗はおのみち帆布様です。
帆布といえば船の帆というイメージでしたが、バッグなども店内に並んでいます。
帆とバッグで『旅』を連想し、ことばのテンポに気を遣って文章を書かせていただきました。
工房おのみち帆布 重岡美有
森岡さんが考えて下さった文章の中の一場面だけを抜き取って、絵にしました。
その場の情景が伝わるような、自然な絵を目指しました。
登場人物になったように、この世界に入り込んでいただけたら嬉しいです。
