絵本談話室

 

2 絵本はみんなのもの

「つるにょうぼう」  矢川澄子 再話  赤羽末吉 絵  福音館書店1997年

 

  この物語は、子供向けの民話や絵本では「つるの恩返し」の題名で数多く出版され、広く親しまれてきました。演劇では「夕鶴」という名で有名になりました。

  「夕鶴」は、木下順二が昔話を基に、戯曲として「婦人公論」昭和二十四年一月号に発表しました。山本安英(やすえ)主演の舞台は、昭和二十七年一月の大阪を皮切りに全国で公演され続け、昭和五十八年には1000回公演を達成しました。それだけ親しまれているストーリーが、私たちのこころに訴えるものは何なのでしょう。

   むすめ・・・何でそんなにお金がいります」

   よ 平・・・「金はいくらあっても、こまることはない。すきなものは買えるし、商売の元手に 

         もなろう」

   むすめ・・・「ふたりして暮らせさえすれば、十分ですのに」

  純朴だが、分別の足りないよ平の望みに、切ないほどの愛情をもって応えるむすめ。しかし、つるの化身である娘には、なぜお金が人の心を変えてしまうのかが理解できないのです。

  赤羽末吉さんは、織物を織り上げるたびにやつれていくむすめの姿を悲しげに描いています。ここもこの絵本の見どころのひとつです。

  そして、自分の本当の姿を見られてしまったむすめ(つる)は、もはやこれまでとばかり、よ平の家から大空に飛び立ってしまいます。広大な雪原に空高く飛ぶ鶴の姿が描かれたページで、この絵本はおわります。さて、あなたは、どのような感慨をもってこの絵本を読み終えられるでしょうか。是非、お聞かせください。