あなたに言葉を渡し終えたということ。話し始めを考えることもなくなった生活の中で、ぷかぷかとレモンの洗剤が香っている。


 新しいカミソリでリストカットをしようと思ったら刃先の丁寧な安全ガードで無傷のまま終わった。ぴかぴかの淡い薄紫が馬鹿らしくて、めくれた唇の些細な皮がなんか気になり始めて。


 三年付き合っていた恋人と別れた。まぶしい初夏の日影でまっすぐだけを見ていた。帰り道、阪急梅田からJR への屋外連絡通路。頬張る一日限定シュークリーム、くらくらと恋の終わりの味。


 君と何重も季節をかさねた日焼けの肌。星のようにほくろが散り散りにまたたく。最後に一緒に食べたワッフルも栄養になってまた髪が伸びる。枕にまだ残る君の香りに果てて眠りにつくボヤけた昼下がり。