さて今回はタイトル通り
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    「街の灯」
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    「玻璃の天」
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    「鷺と雪」

以上3作の読書感想文を書いてみようかと

まず簡単に裏表紙や解説などに書かれている言葉で

ネタバレにならない程度の内容の紹介から

この3作品は〈ベッキーさん〉シリーズと呼ばれる三部作でして

1作品、3つの中編からなる、合計9つの中編

物語の舞台は昭和7年、士族出身の上流家庭・花村家

花村家の長男 雅吉の妹『英子』が主人公なんです。

花村英子の一人称で、ストーリーは進んで行きます。



当家の令嬢 英子の専属の運転手(学校への送迎など)に

当時としては大変珍しい女性運転手がやってきます。

名は別宮みつ子

英子はサッカレーの「虚栄の市」に登場するヒロインにちなみ、親しみを込めて彼女をベッキーさんと呼ぶようになります。

英子が関わった(気付いた)謎を

ベッキーさんと2人で解き明かしていくのが本書なのです。

この三部作の収録順に内容を紹介しますと

奇怪!自らを埋葬せる男…と新聞に掲載された変死事件の謎を解く「虚栄の市」

英子の兄を悩ませる、兄の友人からの暗号の謎 「銀座八丁」

避暑地での映写会上映中の同席者の死を推理する「街の灯」

犬猿の仲の両家手打ちの場で起きた絵画消失の謎を解く「幻の橋」

手紙の暗号を手掛かりに、失踪した友達を探す「想夫恋」

ステンドグラスの天窓から墜落した悪名名高い思想家の死の真相を探る「玻璃の天」

ある華族主人が衆人環視の中、消えるように失踪した謎を解く「不在の父」

補導され口を噤む良家の少年は夜中の上野で何をしていたのかを探る「獅子と地下鉄」

昭和11年2月、運命の偶然が導く切なくて劇的な物語の幕切れとなる「鷺と雪」

順番に読み進めていくにつれ

この時代の女性でありながらも

車の運転から武術、その上に見事な博識ぶり

そんな才色兼備なベッキーさんの悲しい過去も、ある事件から英子は知ることになります。

また

物語の登場人物も

主人公を「英公」と呼びながらも妹想いで優しい兄の雅吉

どこか掴みどころの無い気品があった桐原兄妹たちも

物語が進むにつれ、様々な道へ歩いて行きます。

昭和初期という時代設定もあり

いわゆる大戦前の

どこか暗く

どうすることも出来ないような恐ろしさもあり

それが現代と違う感覚でも、不思議では無いと感じさせられる物語でした。

この三部作を読み終わって、まず感じたことは

今、この平成の世は

電話、ケータイ、メール、インターネットと

自分が伝えたい事を、言葉を、思想を(有害で無く、良識の範囲内で)自由に発する事が出来ます。

当然

今を以てしても

まだ「伝えられない」…なんて事もあるかとは思いますが

例え自分の想いや考えが伝わらない事はあっても

伝える手段が無い訳では無い…のですよね。

正しい…と思っている事を口にする事は許されず

なんとかしたい…と願うことは罰せられる

それでも…それでもなんとか今を変えて行かねば

進まなければいけない…

そんな時代に

万が一の偶然によって

一番に会いたかった人と話しが出来る場面で

おそらく

相手に一番伝えたかった言葉を口にするが出来ない

そしてきっと

もう二度と会うことも会話することも無いと思いながらも

もう伝える術(すべ)がない…そんな時代が日本にあったのだと、改めて思いました。

自分の言いたい事を言う

そう書けばステキな事やとは思いますが

ともすれば

ただのワガママ…とも取られ兼ねません。

でも

ワガママも言うだけなら(そりゃ~限度や良識は必要ですよ)許される世の中であってほしいと、そう感じました。

戦後も知らないマッちゃまより若い世代の人たちにも

ぜひとも読んでほしい本やと思います。