・・・部屋に戻ってソファーに身を投げると、

俺は自然と右指先を鼻に近づけた・・・。


あの女の匂いが、まだまとわり付いている。

下着の上から触っただけなのに、

粘度と量がわかる感覚。

眉間をツンと刺すような その女の匂い。


身を委ね、開いた足。僅かに爪先立ち・・。

恥じらいながら周りに気を配る仕草

少しうつむき 彷徨う視線・・。

セミロングの横髪の向こうに感じる、

女の悦び・・欲求。

体の反射・・。


毎日を、慰められることなく過ごしているのか?

それとも欲望に果てがないのか。

目を閉じて、あの くねる様な身じろぎと

柔らかい肌の感触を 脳裏に浮かべ、


俺は俺自身をしごき、うめく声を

遠くで聞きながら、そして やがて果てた。


あの瞳は縋っていた。 求めていた。

生殺しは嫌だと今にも泣きそうな顔をしていた。


今頃は独り身悶えているのか?

じぶんを持て余しているのだろうか?








 痴漢にあうのは、めずらしくない。

だから、いつも、小さな針を常備して電車に乗る。

手が伸びてきたら、ちくんと刺す。懲りない人には、もっと強く。


 手が、あたしを触ったとき、だから、あたしは、いつものように定期入れに入れてある針をポケットの中で捜した。触られることに感じるのは、いつも、いいようのない嫌悪とやりきれなさ、だけだった。

そう、いつもは。


針を探し当てたあたしの指が、そのとき、止まった。


さわってくる手。


最初、うしろから。

服の上から、すっと、あたしの上をなぞったその感触。

それは、夢の中の手と、似ていた。

そのとたん、ポケットの中で、あたしの手が止まった。


服の上から触られる感触は不思議。

一枚の布が、まるで、潤滑油のように、その手を滑らかにする。


あたしは、目をつむった。

下を向く。

これは、夢の続きなんだ。

どこからか沸いてくる欲望が、羞恥心に勝った。重たいゼリーのような電車のなかの空気が、あたしの理性も固めてしまったんだと、言い訳をしてみる。

そんな言い訳も、瞬く間に、消えるのだけど。


あたしは、手に、夢中になる。


服の上から、臀部をすべり、手はゆっくりと、太股を往復した。強くなく、弱くなく。

性的な触り方、というのがあるとしたら、それは、まさにそれ。

意識が、どんどんと麻痺していく。

そして、その手は、前に回り、ジッパーを下げた。

じじじ。

音が、周りに漏れないか、さすがに気になる。電車の音が、それを掻き消してくれていた。

中に忍び込んだ手は、パンティの上から、下腹部をゆっくり包む。

冷たい手。薄い布一枚を通して、その体温が伝わる。

と、すっと、その手が離れる。

・・・え?

心の中で、悲鳴が漏れる。それでは、夢の中と一緒じゃないか。

あたしを焦らす手。

もう、あたしの水は、温かく次々とあふれ出しているのに。

そう、さっきから、あたしは、それを感じていた。

手は、コートの中を通って、わき腹をくすぐり、ゆっくりと、上に上っていった。

まるで、後ろから抱きかかえらる格好で、あたしは、身を預けるかたちになる。満員電車が、それを不自然には見せない。

コートの中のジャケットはシングルで、中に薄いブラウスを一枚。手は、容易く第3ボタンを開けた。

そして、すっと中に手を入れてくる。

その大胆さに、少し慌てる。

大丈夫、誰も気付いてない。前の20歳前後の男は、下を向いて携帯に夢中。右手の女子高生二人組みは、満員電車に揺られながら、ぺちゃくちゃとおしゃべりをしている。

それでも、たくさんの人の前で犯されているような錯覚。

犯されている?

いや、欲している。あたしは。触って欲しくて、身体をよじっている。

指がブラジャーの中に忍び込み、固くなっている乳首を弾いた。

「あっ」

小さな悲鳴が漏れる。吐息とともに。

電車の揺れだけでない揺れがあたしを襲う。

半分、その手の持ち主に寄りかかるような姿勢になってしまう。立っているのがやっとだった。

手は、また、ゆっくりと下に降りていった。

あたしは、足を自分から、開いた。

さっきと同じ場所に指がたどりつき、割れ目の線に沿ってゆっくりと動いたとき、

くちゅっと音がもれた気がした。

溢れ出た水は、もう、たっぷりと、滴り落ちそうだったのだ。

あたしは、きつく目を閉じて、その指の動きだけに、集中した。

吐息が、荒くなるのを、どうやって押さえていいのか、わからなくなる。

熱いその場所の快感は、もう、それ以上の高まりだけを欲していた。

もっと。

もっと。

頭の中が、白くなる。

ぐっと、指が中に入ろうとしたとき、あたしは、指が中に入りやすいように、きっと導いていた。

その瞬間の幸せに酔うために。


とたん。

電車が止まり、手が、すっと離れた。


手は、急いで、あたしのコートの前あわせを合わせてくれると、優しくあたしから離れた。


いや。

心の中で、あたしが叫んでいる。

もっと。


すがるような気持ちで、手の持ち主に目をやると。

そこにいたのは、

あの、視線の持ち主だった。


視線がぶつかり、その瞬間、彼は、人ごみの中に消えていった。





店を背にしていつもの鮨詰めの電車に乗る。

いつもと同じはずの風景に、あの店の女・・。

もう店を引けたのか。斜め後ろから見る顔色は、悪い。

ただ、それだけではなかった。


匂い。


女の匂いを発している。

自分でもわかっているのか、隠しきれないのか・・?

零れ落ちる匂い・・香る女。

視線に気付いた女。


あのとき女が、女を意識した瞬間を俺は見た・・

ベージュのパンツルック。華奢な腰。

緩やかな盛り上がりの尻に

すこし悪戯心が湧き上がってきた・・・。

揺れにあわせて、偶然を装い

腰の辺り、横から手を滑らせる・・。

爪の先で、身体の線をなぞる。


一瞬の緊張のあと、女の目線は宙を泳いでいる。

おそらく何があったのか察しがついたのだろう。

そのまま俯いた。


女の薄手のコートは秋物で

その下を這う手の動きを隠しきれていない。

もう胸元にまで手が届く。

女はかばんを強く握り締めて 身をよじる。


需要と供給は合致している。

意識は困惑していても、体は受け入れようとしている。

その無表情を装った顔は今にも崩れ落ちそうだった。

次の駅まで20分。

・・・見ている


視線を感じていた。

右側のカウンターに座っている ひと。

強い視線。

あたしは、それを意識しながら、お客様に笑って答えていた。

気がつかないふりで。なにも。


でも、その誘惑に勝てなかった。

つい、視線を泳がせてしまったのだ。

何気なく、のつもりだったのに。

あたしの目は、そのひとの所で、意志と関係なく止まってしまった。

ぶつかる視線。


どくん。


体の血が、一斉に駆け巡るのを感じる。体中を。

そう。すみずみまで。・・・すみずみ・・まで。


そのひとは、座っていた。短い髪は、少し茶色かった。背は高い。落ち着いた風情で、ぎらついたところは何もない。それなのに、その目が。

まるで。


それは、ほんの何秒かだったんだろうと思う。でも、永遠に似た時間だった。

すっと、視線を外すと、あたしは、また、カウンター越しに初老の男性に笑顔を向けた。

何もなかったように。

鼓動も戸惑いも、隠すのは簡単だ。

そのはずだった。

でも、感じる。まだ、視線を。

そして、その視線は、あたしのすべてを見透かしてるかのような気がして。

あたしは、落ち着かなかった。

もう、あたしは、そのひとに、けして視線をむけなかった。怖かったから。

なにが、かは、わからなかったけど。


視線の端で、黒い影が立ち上がり、マスターと二言三言交わして、その人は、ドアの向こうに消えた。


そして、あたしは。

その場に、へなへなと、座り込んでしまった。

緊張が、解けたのだ。

(なにをそんなに。)自分がわからなかった。


マスターも客も慌てて、あたしを介抱してくれて。

あたしは、少し早めに帰宅することになった。


いつもより、少し早い電車に乗る。

帰宅ラッシュの波に飲まれ、心の中で舌打ちをする。

少し、どこかで時間をつぶせばよかったのに。


電車の中は、まるで、重たいゼリーの中にいるみたいだった。








闇に浮かぶ白い身体。

艶めかしく、くねる。

爪の甲を滑らすように、

鳥の羽で、なぞるように。

首筋から乳房へ、輪郭をなぞるように。


そして乳首を、弾く。

流れる血液のように、体温のように・・


硬く尖る。 


鳩尾から、なだらかな丘へ。


そして泉・・・。


潤んで滴る。


あなたが咲く。 あなたが開いてゆく。

「俺」を 求めて。


指の先から、瞳の奥まで

強請るあなたを見ていたい。


我慢できずに 壊れてしまうくらい

あなたを狂わせてみたい・・・



・・・はじめて見たのは とある古びた喫茶店だった。


カウンター越しにコーヒーを入れる女・・

初老の紳士がコーヒーとブランデーについて語っている。

店主にしては若すぎる。アルバイトだろう。


何気なく漂う色香をその女に感じていた。


・・・欲している。


愛嬌のある笑顔の下に、「女」を隠している。

少しこちらを見て、また目線を戻す・・

どうやら気付いたようだ。


口元が、少し、緩んでいた。

目が醒めたとき、あたしは濡れていた。


覚えてる。あまりにも、なまなましい夢。


相手はいなかった。ただ、手だけ。

その手が、あたしの体を、そっとそっと、触れるのだ。

触れるか触れないかくらいに微妙に。

じゅんっと、下着が濡れるのを感じた。

夢のなかで、あたしは足を開いた。


・・・触って。


でも手は、そこに触れてはくれない。

身悶える。

腰が・・動く。

でも、微妙にふちを撫でるだけで、その溢れる液体には触れてくれない。


夢なのだ、とどこかで気付いてる。

夢の中だけでなく、実際の自分の体がうごめくのを感じる。


熱く、熱く、あふれてくる。どんどん。

触ってほしくて。


すっと、指が、その液体をすくうように、敏感な部分を、掠った。


「あ・・」

まるで、本当に触ってもらえたように、びくんと体が揺れる。

悦びで。


もっと。

もっと。

もっと。

あたしは、身をよじる。


そこで、目が醒めた。

たっぷりの液体だけは、現実だった。

そこだけ、まるで別の部分のように、ぴくぴくとしているのを感じる。

触って。

まだ、言ってるようだ。

でも、あたしは、自分で触ることが出来ない。

なぜだか。

あたしは、自分で自分を慰めることが出来ないのだ。


体全体が火照って、熱かった。

掛けてあるタオルケットにさえ感じてしまう。敏感になっている。


ゆっくりと息を整えると、シャワーを浴びるために起き上がった。

一日が始まる。



その夢は、きっと。

序章だったんだろうって思う。


悪夢?

いや、素敵な白昼夢の。





スキンコンテスト参加

【スキンのコンセプト】

シンプルに

【作った感想】

というほど、凝ってはいません。

【こんなスキンがあったら】

センスいいの増やしてほしい