私は街で過ごす正月が好きだ。
実家も街だったから、『田舎に帰省』が
いまいちピンとこない。
街の正月は、とても静かに始まる。
たくさんの人が帰省でいなくなっているせいか、
早朝はほとんど音がしない。
まるで、雪が降った朝みたいに静かだ。
いつもなら通勤の車の音が
せわしなく響いてくるのに、
元日だけは、耳を澄まさなくても、
遠くの橋を渡る電車の音まで聞こえる。
そういえば、昨日は除夜の鐘を聞く前に寝てしまった。
いわゆる都会住みだからか、
昭和の頃から正月はデパートのイメージが強かった。
祖父母は、毎年必ず百貨店デートをして、
その後映画を見に行っていた。
遊びにきたいとこのお姉さんたちも、
まずは初売りに出かける。
帰宅後は、福袋の中身を広げながら、
使わなそうなものを、
さっそくお下がりでプレゼントしてくれた。
わいわいファッションショーをするのも
お正月ならではの楽しい時間。
夫と一緒に帰省はしないから、
今でも私だけは街で過ごす正月だけど、
やっぱりこのスタイルが好きだと思う。
買い物してもしなくても、
賑やかなお店に行くと「正月だなー」と実感できる。
以前は、夫に連れられて
夫の実家に帰省したこともあるけど、
私はやっぱり街の子だから、
どうやったって合わないし理解できないことがある。
今はもっぱら父子帰省。
私の心身を守ってあげるために、無理はしない。
夫の親族が「これが当たり前」と言ったところで、
私だって先祖代々ずっと都会住みなんだから、
私にとっての「当たり前」は別のところにある。
私が相手に街の文化を強要していない以上、
私に田舎の文化を強要されても困るし、
応える理由もない。
なんたって、
私は嫁いだという感覚も、女だからという感覚も
ものすごーーーく薄い環境で育った
先祖代々生粋の街の子なんだから。
今はテレビなしの生活だから、
特番を見て正月を実感することはない。
新聞もとっていないから、
一年で一番重くて厚い元旦の新聞広告を
広げて見ることもない。
でも、細々と続けている大切な人たちと
やりとりしている年賀状は、
手紙が苦でない私にとって大きな楽しみの一つ。
結婚する前までは、大みそかも元日も
出勤していたから、これで仕事をしていれば、
私にとっての「いつもの正月」が完成する。
大みそかと元日に出勤しなくなった代わりに、
結婚してからはおせち料理を作るようになった。
子どもたちにとっては、
私たち夫婦がいる場所が実家になって、
私のおせちが実家の味になるんだと思うと、
なんだか不思議な気分だ。
私も自分の実家に、短時間でも顔を出しておこう。
明日からは仕事の予定もがっつり入れてあるし、
別のお店の応援にも行くから、
慌ただしい三が日になるんだと思うけど、
こうやって自分で正月の過ごし方を決められるのは、
私にとって大切なこと。
子ども達には、自由で幸せそうな母の姿を見せておきたい。