マスオ兄さんは本当に馬鹿だね。でもね、この前の休み僕とワカメとタラオにホットケーキを焼いてくれた時の話なんだけど、フライパンで手首でくいっと、本当にうまくホットケーキ投げてひっくり返すんだ。本当にすごかったね、あれは。あんなにうまくくいっと、手首でひっくり返せるもんじゃないね。ただ、それだけじゃないんだ。それだけじゃ僕は人をほめたりなんかしやしないさ。何かっていうとね、空中にホットケーキがあるうちに、バク中をやりやがったんだ。そして、しっかりホットケーキをキャッチしやがったんだからね。ありゃ驚いたさ。あんなことできるのは地球上に両手で足りくらいの人数しかいないんじゃないかね。ワカメも驚いていたけど、タラオは何が起こったかわかっていなかったね。ハハ。人間誰でも一つは取り柄があるもんだ。その日から僕の中でようやくマスオ兄さんはタマを超えたんだ。でもやっぱり馬鹿だね。だってそれ以来、僕とワカメの気を惹こうとするとき、何か食べたくないか?って聞いてくるんだ。あまりにみえみえすぎて、ワカメだって気づいているさ。マスオ兄さんがまたホットケーキを焼きたがっていることをね。馬鹿の一つ覚えってこういうことなんだなって強く思ったよ。おっといけない。父さんのコップが空になりかけてやがる。くだらないことを考えている場合じゃないね。新しい野球グローブのために仕事をしなくちゃいけない。