精神医学の勉強が始まりました。

心理学だったら、興味もたくさんあるし、交流分析などもかじった身ではあるけれど、どう違う?というところから授業も始まりました。

日本と同様ドイツでも、薬の処方できる精神科医と心理カウンセラーは区別されており、精神科医は医学を勉強したお医者さんというわけです。

授業を担当してくれるフォイヒテ博士女史は、精神科医でありながら心理学も修めた方で、今回のこの授業にはかなり力を入れてらっしゃいます。

まずは定義から始まります。
精神医学(Psychatrie)とは
心理学とは(Psychologie)
心身医学とは(Psychosomatik)
精神療法とは(Psychotherapie)
精神分析とは(Psychoanalyse)
精神障害とは(Psychische Stoerung)
など。
さらに
精神(Psyche)
意識(Bewusstsein)
知覚(Wahrnehmung)
思考(Denken)
記憶(Gedächtnis)
自己(Das Ich)
情緒(Affektivität)
衝動(Antrieb)

頭がくらくらするような抽象的な言葉が飛び交い、発言がほとんどできずとても残念でした。
というか無理でしょ!
日本語でも明確に、【意識】と【知覚】の違いを答えられないし、それをドイツ語で表現しなさいって言うのは拷問に近かったです。

あ~、私って抽象的思考の弱い単細胞なんだな、と実感しまくる時間は辛いんだけども、専門家からレクチャーを受けられるという機会は滅多にない訳で、これはこれでありがたいチャンスなんだなと、自分を慰めています。

でも、参加している生徒たちが皆、きちんと理解しているかというとそういうわけでもなく、「幻想・妄想」(Wahn)というものがどういうものか、どうして「妄想」をなぜ抱くのか、というところでかなり具体的な例を紹介してもらったのにも関わらず、「なんで?」となかなか受け入れられない生徒もいました。先生が「妄想を抱く患者」として紹介してくれた例は
「ガイガーさんが私の飲み物に毒を入れたの」(先生)
「毒の色は何色ですか?」(生徒の一人)
「この飲み物と同じ白色だから入っているかどうか確かめるのは難しいと思う」
「じゃあ私が飲んで毒が入っていないことを証明します」(生徒)
「あなたには効かない毒なのよ」(先生)
「・・・」(生徒)
「妄想を抱いている人と、その妄想が現実ではないと議論し始めたら何時間でもやりとりができるわよ!」
「なんで~??」(生徒)
やりとりをした生徒はかなり受け入れがたい様子でした。
じゃあ、治療はどうやって進めることができるか。
まずは、「あなたはあなたの飲み物の中に毒が入っていると思うんですね。私はそうは思いませんが。」と、まずは患者の妄想を患者が抱いていることを受け入れ、でも自分の意見は違うということを伝えるところから治療が始まるのだそうです。

そりゃあ、そうだよな~。最初から「あんたの考えてることは妄想よ」と言われても本人は現実だと思っている訳で、それが本人を苦しめてる訳だからね。そしてそれが精神病でもある訳だし。

この「妄想」については毎回ディスカッションが行われ、いい加減うんざりです。
それに【心を病む】ということはそんなに遠いことではなくて、精神病という枠には入らない「普通の人」だって、時には落ち込み、時には躁状態になったりするのではないかなと思います。
特に私たちが生きている近代社会とは精神的に病む人の集まりなのではないかしらん、と自己チューなクラスメートたちを眺めながら思ってしまう今日この頃です。