田山ひろし | 赫いわななき〜地獄編〜

赫いわななき〜地獄編〜

80年代歌謡曲をご紹介しているHP『赫いわななき』、こちらでは比較的最近リリースされた演歌・歌謡曲から強力チューンをご紹介していこうと思います。
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『B級歌謡猟色図鑑 赫いわななき』
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「俺に聞くなよ」田山ひろし
作詩/志賀大介 作曲/小田純平 編曲/矢田部正
C/W 「罪の海」
作詩/伊藤美和 作曲/小田純平 編曲/矢田部正
エイフォース YZWG-15222 2017.07.05.
そろそろ新曲もご紹介しておきましょう、何せ年末賞レースに間に合わせなきゃだし(何がだよ)。今回ご紹介するのは田山ひろしさんの「俺に聞くなよ」です。

もうね、ジャケットが全て、って声もあるんですが(苦笑)間違いなく今年のCDジャケット大賞はコレにキマリです。それっくらい強烈。しかもこの衣裳でステージ歌唱された事もあったようで(沖田真早美さんのブログで見ました)。

衣裳のインパクトもなんですが、田山さんご本人の顔を写していない。何しろこれに驚愕ですよ。全篇イラストにしたりとかはあるけど、意識的にお顔を出さないジャケットはなかなかね(砂田おさむさんは最初隠してましたがその後普通に出してたし、あ、こういうのはあるけど笑)
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左はCottonの小塚さおりさん(その後顔見せ以上されてましたが)、右は企画モノでクローン作成目的の芳賀ゆいさん。

ジャケ裏も作り込んでますが、血液型入れるなら出来れば名前も“たやまひろし”の方が…と思ったけどこれはフェイクゆえの故意でしょう。
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…と企画先行でご紹介しておりますが、田山さんについては俺が演歌系にめざめた頃に前作「海竜」をTVで拝見してからずうっと気になっている方だったんすよ。
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もうまさに“普遍的な演歌の歌い手”という感じ。さすがキャッチフレーズが『演歌の鉄人』なだけはあります。ウィキによるとデビュー当時は『歌の貴公子』ってキャッチだったみたいですけど(笑)

そんな田山さん、デビューは2003年10月22日リリースの「おとこの春/旅の雨」という曲(当時は8㎝CDSでの発売でしたが、一旦廃盤になった後2010年5月26日に再リリースされたようです、リテイク盤かな?)。その後
「親父の故郷/女の氷花」2006.
「功名天下道/情炎流れ唄」2007.
「とまり木挽歌/運命道」2011.06.08.
「夜桜海峡/縁歌」2013.12.25.
「海竜/津軽のばんば」2015.05.20.
と続き、今回ご紹介する「俺に聞くなよ」が再発盤含め8枚目※のシングルですね。なおデビュー時はクラウンですが、「夜桜海峡」以降エイフォースに移籍されてます。
※ネット上で2010年「早春譜/三陸情歌」というシングルリリースの記載があったんですが、ジャケ確認出来なかったのでリストから外しました、ご存知の方いらしたらご教示下さい。てかクラウン時代のシングルは未入手、欲しい!

エイフォース移籍以降は小田純平さんの作曲作品を歌われております。小田純平さんの提供作品といえば寺本圭祐さんとかまつざき幸介さんとかKenjiroさんとかイメージしちゃうんですが、個人的には本田理沙ちゃんの「a・za・mi」がイチバン!と思っておりますのよ。
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小田さん自体も80年代から活動されてますが、これは1991年の作品(作曲のみ)。「本気Ⅱ」でやさぐれ切ってた理沙ちゃんですが、ここでも枯れた名唱が光ります。

「俺に聞くなよ」はその小田純平ワールドがほとばしるフォーク調演歌なんですけど…ん、演歌?

いやまさに演歌なんですけど、これは相当難しいなぁ。この曲をカラオケで歌った時「『赤色エレジー』みたい」と云われたんですが、時代背景や路線は違えど或る意味、今の演歌界に突如孕まれた“下を向いて咲く鈍色の花”という感じでしょうか。

何と5番まであるこの曲。歌詩はすべて〽︎俺に聞くなよ、から始まる独白ものなんですが、もう完全に70年代私生活フォークの世界。そこには“あなた”とか“あの人”とかも介在しない、本当の『孤独』が紡がれております。まぁタイトルから察すれば誰かに質問されてる設定なんですが、そこはやむにやまれず聞く気もない営業トークの店ママかホステスさん、いやカウンターだけの居酒屋の女将ってトコか。って恐らく聞かれてもないのに独り言、が正解かな。


主人公は推定40代・独身ひとり暮し、深夜のTVでたまにフフッ位しか笑わないタイプ※個人の感想です。
この寡黙ぶりは営業・販売系のお仕事ではなさそうなので作業系実務層かと(ここでジャケット写真が活きてくるワケですよ、実際お仕事されてる方や田山さんご本人とは関係ないので※個人の感想です)。

作詩の志賀大介さんは田山さんが師事されてる先生だそうで彼の歌唱力だけでなくキャラや売りの部分まで把握されてる筈ですが、その上にこの歌詩が成り立ってるとしたら相当凄い。そしてこの詩に(これしかないとはいえ)あまりに淡々としたフォークメロをつけてしまう小田さんも凄い。いやこれは曲先かなぁどっちにしても凄いんだけど。

いやもっとスゴいのは歌ってる田山さんで、この四畳半世界を完全に演じ切ってらっしゃいます。しかも物凄い歌唱力で!
田山さんの歌唱、冒頭でも書いた通り完成された演歌の歌い手さんなんですね。声も張れるしコブシも回るし、泣きもキッチリ表現出来るし。そんな彼ですのでこの曲でも丁寧に、でも呟き捨てるように寂しく、でも力強く表現されてるんです。
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この“力強い”歌唱こそがこの曲をただのフォーク演歌で終わらせてないトコロじゃないかと。湿っぽさが薄くなる代わりに『オトコの孤独』が充満する感じ、ちょっと表現が見つけられないんですが、行き場のない拳を振り上げる術も知らずただ握ったままの静かな焦燥感とでも云えばいいのかな(これもちと違う)。何しろ鉄っぽい雄臭さたっぷりの作品です。

カップリングの「罪の海」はタイトル通り濡れ入る歌謡曲のノリで、田山さんも力抜いて哀愁たっぷりに歌ってくれてて普通だったら断然「罪の海」推しちゃうんですが(実際コッチもかなり好き)、ちょっとこのフォーク演歌にはハマってしまいました。有線とかでジワジワ火がついてくんないかなー。

…と、やや熱く語ったので(笑)イキオイでエイフォース移籍第一弾の「夜桜海峡」もご紹介しちゃいましょう。
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「夜桜海峡」
作詩/志賀大介 作曲/小田純平 編曲/ヤタベタダシ
C/W 「縁歌」
作詩/リーシャウロン 作曲/小田純平 編曲/ヤタベタダシ
エイフォース YZWG-15135 2013.12.25.
これはもう、本当に王道路線。漢声で哭く情炎モノというか、波打ち砕かずズシズシと忍び寄る哀しみの圧力を田山さんの雄臭い熱唱で表現されてます。一見ありがちな楽曲に見えるんですが、似てる曲を思い付けないのは田山さんのオリジナルな魅力がそこに備わってるからでしょうか。ジャケ帯に書かれた『私の声は…生きていますか?』というキャッチコピー。うん田山さんの声、びんびんキてますよ!

歌詩もなかなか凝ってまして、“海峡”と“夜桜”と“波止場”と“屋台”…一瞬同列に扱えなさげな風景をカットシーンで見せながら、どこにも居場所のない哀しみに引き摺り込むという味わい深い詩ですね。実は未だに2番の“リストバッグの手鏡”を位置付ける事が出来なくて、カラオケ歌うときも苦戦中。「俺に聞くなよ」は超ムズいですが、これもなかなかの難曲ではないかと。カラオケ愛好家の皆様、心して挑んで下さい(いやドンドン歌ってネ!)

C/Wの「縁歌」はポジティブ演歌、個人的には苦手な分野なんですがこれも田山さんの歌唱で安心して聴けます。これはCD聴くよりライブで盛り上がりたい曲ですね。


と、かなり熱く語ってしまった田山ひろしさん、同郷でもあり今イチバンライブを聴きたい人なんですがキャンペーンとかどこでやってるか分からず未だに実現しておりません。でもいつか、この力強い歌唱に聴き惚れてみたいと思っております。その時には未入手のクラウン時代のシングルもゲットして改めてご紹介しますので乞うご期待!
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「夜桜海峡」のジャケ裏。思い切り人が良さそうなのが窺える素敵なカットだと思います。