甘酸っぱさフルスロットルなピュアラブストーリーがこちらです。


『スローモーションをもう一度』(加納梨衣・小学館)

★「スローモーションをもう一度」あらすじ

大滝洋樹(大滝くん)は運動神経抜群、友人も多く女子からの人気も高いいわゆるリア充な学校生活を送るイマドキな高校一年生。一方で、1980年代のアイドルや歌謡曲、玩具などに強く惹かれ、愛しさすら感じる少年である。しかし、友人らには“古い”ものに興味を持っていることを悟られないようにしている。常に最新のものを好む彼らの輪から外れないように話を合わせているが、どこかノリきれない。

ある時、クラスでも地味で目立たない薬師丸知世(薬師丸ちゃん)が自分と同じく、密かに80年代のポップカルチャーを愛好していることを知る。初めて“同じ趣味を持つ同世代”に出会った二人。やがて少しずつ距離が縮まり、互いに気になる存在になっていく。






★「スローモーションをもう一度」レビュー

この間紹介した「星野、目をつぶって」でもそうですが、多感な学生時代って、周りの目を気にして、本当の自分が出せないってことはよくあるんですよねやっぱり。

例えば小学生の頃は大きい方のトイレに行くことが恥ずかしくて学校では絶対にしなかったりとか!(ちょっと、いやぜんぜん違う?笑)

本当は大好きな趣味を友達には明かせないということもきっとあるでしょう。だいたいそういうのって大人になると周囲を気にせず没頭しちゃいますよね。

今回の主人公の大滝も大好きな1980年代音楽や文化を、友達には内緒にして、普通に生きてる男子高校生。

運動神経も良く、容姿もかっこいいので目立つグループに入っています。でもイケてる友達と一緒にいてもなんだか楽しくない。

そこで出会うのがクラスの誰とも接していない超暗い薬師丸ちゃん。ひょんなことから彼女と知り合い、ついに一緒の趣味を持つ人に出会うことができ、心から"一緒にいて楽しい"と思える人に出会うのです。

1980年代といえば、アイドル全盛期で音楽番組がかなり盛り上がってた時代です。僕も懐メロは多少詳しいつもりなのですが、大滝くんや薬師丸ちゃんには全く及ばないですね…

大滝くんが薬師丸ちゃんといる時に発する死語の数々はめっちゃ面白いですし、80年代はこんなものが流行っていたんだ〜と単純に勉強になることも多いです。

スマホを持っていない薬師丸ちゃんとの連絡手段はまさかのポケベル。そして電話は公衆電話から!

現代の話なのに古き良きトレンディードラマみたいな2人のやりとりがとても甘酸っぱくて最高なんですよね。

また薬師丸ちゃんがめちゃくちゃ可愛いんですよ。見た目は大きな瞳(普段は前髪で隠してる)に健康的でちょいぽちゃな体型。思えば、現代で活躍してるアイドル(48グループとか坂道系とか)ってやっぱ細い人がほとんどだと思うんですよね。

昔はもっと健康的な体型が好まれてたはず。それを体現してるのが薬師丸ちゃんです!笑

照れて素直になれないところや、好きなアイドルの話に熱くなりすぎちゃうところなど、激かわヒロイン要素が満載。

他の主人公たちの名前も80年代を彩ったスターたちの名前から引用されていて(大瀧詠一、薬師丸ひろ子、宇崎竜童…)Wikipediaと照らし合わせながら読むのをきっと楽しいはず!笑

そして、周りに理解されるはずはないと殻にこもり、1人で楽しんでいた2人がやっと出会い、思いを交わし合ったことで、昔は考えられなかった行動を起こしていきます。

でもそれは殻にこもってた時のことを捨てるということではありません。過去も含めて今の自分と精一杯向き合って生きていくのです。

薬師丸ちゃんの家庭事情が複雑なのですが、最後はすごくよくまとまって、気持ちいい結末となってます!





80年代を生きた大人はもちろんハマると思いますし、80年代を知らない若い世代もきっと楽しめる全世代型ラブコメです。

特にエピローグの2人が出会うまでのお話は必見なので楽しみにしながら1巻から読み進めてくださいね!