◆エピソード1 事前危機回避で事業を復活させた中古タイヤショップ経営者(48歳)の場合 その11
こうして、落込さんの月額90万円の返済は、月額20万円まで減額された。そして、「なんとしても父親にこれ以上迷惑をかけたくない」という落込さんの思いもまっとうされた。めでたしめでたしである。
しかも、3ヶ月間支払いを止めていたから、事業を再建する多少の資金もまとまっている。資金繰りも楽になったから、じゅうぶんにやり直しは可能である。
この先は、落込さんの気持ちひとつだ。
ピンチに陥り、そこから脱出できたというこの経験を、落込さんはこれからの人生と事業に活かすことができるだろうか?
自分としては大いに期待しているのだが、これまでの経験で見てきたもうひとつの現実もある。一度失敗した人は、たいていの場合また同じような失敗をする、と。
今でもたまに電話で話をするが、あいかわらず要領を得ないどもり口調のままだ。そんなときに、自分は落込さんが2度とこのブログのネタになるような事態に陥らないことを、切に願うのだ。
◆エピソード1 事前危機回避で事業を復活させた中古タイヤショップ経営者(48歳)の場合 その10
支払停止から3ヶ月が過ぎた頃、S銀行の担当行員は途方にくれていた。次々と繰り出した提案も、すべて自分がNOを突きつけたので、もうどうにも手の打ちようがなくなったのだ。このままでは不良債権化は必至である。
ここが勝負どころだった。
最後の最後に、こちら側からS銀行に対して譲歩の提案を行ったのだ。
「プロパーの融資に対して、落込さんの奥さんを保証人に付ける。これがぎりぎりの譲歩である」
本来であれば、落込さんの奥さんに保証能力などない。最初からこのような提案を行っていても、S銀行サイドは鼻であしらって拒絶していただろう。だが、後から保証協会に決断を迫られ、わらをもすがるという状況に追い込まれていた担当行員は、この提案をすんなり受け入れた。
自分は、さらにこの提案に以下のように付け加えた。
「これは、S銀行さんに対して本当に申し訳ないという落込社長の想いです。S銀行さんには世話になったから、なんとか奥さんを説得して、保証人に付けさせていただきたいと申しております」
S銀行の担当行員は、「そうですか、ありがとうございます。落込社長にもよろしくお伝えください」と、明るい表情を見せたのだ。
◆エピソード1 ~事前危機回避で事業を復活させた中古タイヤショップ経営者(48歳)の場合 その9
支払停止から3ヶ月が迫るにつれ、S銀行の担当者はあせってきた。
こちらは、すでに文面で支払い金額の減額および延期という(普通に考えればかなりムシのいい)主張を伝えてある。担当者がどのような申し入れをして来ようが、この条件を繰り返すだけで1歩も引き下がらないという姿勢を貫いていれば、次第にあせった銀行サイドから逆に提案をしてくるようになる。
S銀行の担当行員は、最初はこちらが提示した条件をのむ代わりに、プロパー分250万円の融資に対して落込さんの父親を追加の保証人に付けるように迫ってきた。落込さんには、これ以上父親に迷惑をかけたくないという意向がある。当然ながら、それはのめないとつき返す。
すると、困ったS銀行担当行員は、条件をのむから新たに250万円を定期預金してくれと詰めてくる。いざというときにもプロパー融資分を回収できるよう、いわば定期預金という人質をとろうというのだ。
当然ながら、この申し入れに対してもNOだ。S銀行に対して250万円を定期預金すれば、H銀行に対しても500万円を定期預金として積まなければならなくなる。それは不可能だ。両銀行の交渉に、けっして差をつけないというのが鉄則であり、それがこちら側の主張ともなる。
S銀行の担当行員は、なんとしても自らが担当した融資が不良債権となることは避けたい。だが、保証協会はその融資を代位弁済にまわすのかどうかを迫ってくる。この板ばさみのなかで、行員は苦悩する。
◆エピソード1 ~事前危機回避で事業を復活させた中古タイヤショップ経営者(48歳)の場合 その8
落込さんのケースでは、交渉相手はS銀行とH銀行となる。このように複数の銀行との交渉を同時にスタートさせる場合、主張内容に差をつけてはいけないが、交渉の重点は基本的にはメインバンクに置く。
あいかわらず旧態依然とした銀行という業界には、横並びの考え方が根強い。メインバンクがウンといえば、他はそれに従ってくる。メインバンクさえ落とせば、他行の担当行員も上司や本店に話を通しやすくなるからだ。
担当行員や担当支店長たちの行動原則は、ほとんどの場合自らの保身に基づいている。そう考えて間違いない。融資が代位弁済にまわされて、そこに多額の血税が注ぎ込まれようが、銀行自体が損をしようが、基本的には関係ない。自らの保身こそが全てなのだ。
残念ながら、これまで接してきた日本の銀行マンたちの多くは、そうであった。
◆エピソード1 ~事前危機回避で事業を復活させた中古タイヤショップ経営者(48歳)の場合 その7
支払いをストップさせ、交渉をスタートしてから3ヶ月後が、銀行サイドを追い詰めるタイムリミットの目安となる。3ヶ月間にわたって保証協会付けの融資の支払いが滞ってしまった場合、銀行は保証協会から代位弁済にまわすかどうかの決断を迫られることになるからだ。
普通に考えれば、保証協会付けの融資が代位弁済にまわったとしても、銀行の腹が痛むわけではないので、べつにあせる必要はないと感じるかもしれない。ところが、銀行は、もし保証協会付けの融資が返済不能となった場合には、同時にその融資先に対するプロパー分の融資も同様の判断を下さなければならない。
つまり、落込さんがS銀行に対する返済をストップした場合、保証協会付けの4250万円分の融資については、3ヵ月後には代位弁済にまわされることになるのと同時に、プロパー分の250万円はS銀行の不良債権となってしまうのだ。
支払いを停止してから始まるこの交渉において、時間とともに追い詰められていくのは落込さんではない。銀行の融資を担当した行員であり、その責任者である支店長たちなのだ。未払いと交渉の期間が3ヶ月を向かえるころには、担当行員はこまりはてていた。
◆エピソード1 ~事前危機回避で事業を復活させた中古タイヤショップ経営者(48歳)の場合 その6
落込さんの借り入れをもう一度詳しく見てみる。
まず、S銀行の4500万円の借り入れのうち、プロパー貸しが250万円、保証協会付けが4250万円。H銀行の1500万円の借り入れのうち、プロパー貸しが500万円、保証協会付けが1000万円となっている。
どちらの銀行をとっても、圧倒的に金額は保証協会付けが多いのだが、じつはプロパーの融資分のほうが銀行にとっては現実的な悩みの種となる。もし、こちらの支払いが焦げ付いてしまったら、たちまちそれぞれの銀行の不良債権となって担当者から支店長まで、責任が問われるからだ。
S銀行の担当行員もH銀行の担当行員も、出世を願っている(あるいはリストラされたくない)からなんとしても自分が担当した融資が不良債権化することは避けたい。また、それぞれの銀行の支店長クラスにしても、さらなる出世を望んでいるから、自分の担当支店から不良債権が出て本社からにらまれることを恐れている。
この、それぞれの銀行の担当者、支店長たちの保身こそが、交渉における最大のねらい目なのだ。
◆エピソード1 ~事前危機回避で事業を復活させた中古タイヤショップ経営者(48歳)の場合 その5
ここで、銀行から受ける融資には2種類があるということを説明しておく。
ひとつは保証協会付け融資で、これはもし融資先が返済不能になってしまったときには保証協会が代位弁済をするという仕組み。もし融資が焦げ付いたとしても、銀行にとっては痛くも痒くもない。
もうひとつはプロパー貸しで、これは銀行が銀行の責任において融資先にお金を貸し出すもの。もしこの支払いが焦げ付いてしまったら、銀行にとっては手痛い不良債権となってしまう。
◆エピソード1 ~事前危機回避で事業を復活させた中古タイヤショップ経営者(48歳)の場合 その4
落込さんが融資を受けている銀行と交渉するために、自分(筆者)は落込さんの経営する中古タイヤショップに入り込み、落込さんの代理人として、自分が銀行にのりこむわけだ。
総額6000万円のうち、メインバンクとして5年ほど前から付き合いのあるS銀行に4500万円、半年ほど前にはじめて口座を開いたH銀行に1500万円の借金があった。まずは、この両方の銀行に対して、ほぼ同じような内容の文面の手紙を出す。
この最初の手紙の文面が、銀行交渉においてはきわめて重要なのだ。
たいていの人は、この文面を見て、銀行にこんなこと言っていいのか? と引いてしまう。簡単に言えば、今は金がないから返せない、だから返済金額を減額しろ、返済期間を延ばせ、てなことを極めて強い口調(丁寧ですけどね)で書いてある。
当然ながら、銀行サイドはそんなことは認められないと突き放してくる。落込さんに揺さぶりをかけてくるが、そこは代理人たる自分が断固ブロックする。
それでも最初のうちは、落込さんは自分が目をはなしているすきに(自分もずっと某県にいるわけにはいかないので、どうしても東京から遠隔操作のように指示を出すしかない)、しつこいアタックに負けてのこのこ銀行まで出向いていく始末。落込さんは、かつての自分と同じで、銀行というだけでプレッシャーを感じて何も言うことができなくなってしまう。
こちらの要望を伝えるどころか、向こうの要望を聞いて帰ってくる。銀行という、いち民間企業の敷居を勝手に高くしてしまうのだ。
S銀行の場合、口調は穏やかだったが条件を呑むかわりに、落込さんのお父さんから追加の担保を取ろうとしてきた。
いっさいの条件変更はまかりならん! H銀行は付き合いが浅い分、興奮気味に主張してきた。
落込さんは、自分から電話しなければそんな報告すらよこさなかった。
電話口で、「まさか銀行との話し合いに出向いているんじゃないでしょうね」と問い詰めると、ようやくばつが悪そうに言い訳をだらだら述べたあとで、要領を得ない状況説明が始まる。
自分は落込さんからのそんな報告を聞いて、いつも指示は同じだった。
「とにかく、こっちは一歩も引くことはありません。すべての連絡は自分に回してください。いいですか、3ヶ月ほどの辛抱です。とにかく頑張ってください!」
いよいよ続きがはじまるよ!
今日は面白い方と会ってきました。
今後の仕事に大いに関係する頼もしい人脈ができました。
今後いろいろなできごとを紹介する中で、話が出てくると思います。
ところで、しばらくお休みしていましたプロローグ1ですがいよいよ再開しますよ~
お楽しみに!
一休み2
日々いろいろな案件が発生するのがこの世界ですね。
借金で困っている人、トラブルに巻き込まれて困っている人・・・
でも警察は「民事だから」って取り合ってくれない・・・
弁護士に行けば、“自己破産”を勧める・・・
これじゃぁ、世の中のモラルはなくなり、やったもの勝ちみたいになってしまいますよね。
泣き寝入りなど、もってのほかです。困っている方は一度ご相談ください。
きっと、何か解決策はあるはずです。一緒に考えて、先へ進みましょう。
