後編|なぜこの構造は日本経済を弱らせたのか ― 金融・税制・需要の視点から

7. 株主支配と金融政策の結合

株が支配の道具へと変質した時期と並行して、日本では「金融政策万能論」が強まっていきました。

  • 金融緩和で景気は回復する

  • 金利を下げれば投資が増える

  • 円安になれば輸出で成長できる

こうした考え方は、一部の局面では機能します。しかし前提条件があります。

それは、民間に投資したいという需要が存在することです。

需要が弱いまま金融緩和だけを行えば、

  • 企業は借りない

  • 銀行は貸せない

  • 行き場のない資金は株式・不動産・投機に向かう

結果として、 実体経済ではなく、資産価格だけが上昇する構造が生まれました。


8. 税制が「お金を回さない方が得」になる

この流れに決定的に拍車をかけたのが税制です。

消費税という構造的問題

消費税は付加価値税です。

  • 人件費をかければ課税される

  • 利益が出なくても課税される

  • 事業を回すほど負担が増える

一方で、法人税は

  • 最終利益にのみ課税される

  • 内部留保には相対的に有利

この結果、企業行動はこう変わります。

  • 賃上げしない

  • 投資しない

  • 内部にため込む

お金を回すより、止める方が合理的 という歪んだインセンティブが作られました。


9. デフレとは「物価下落」ではない

多くの議論が混乱する原因は、 デフレ=物価下落 インフレ=物価上昇 という単純な理解です。

本来、デフレ・インフレは

  • デフレ:経済の縮小圧力

  • インフレ:経済の膨張圧力

を指します。

現在の日本は、

  • 物価は上がっている

  • しかし需要は弱い

  • 供給能力は削られている

つまり デフレ的構造のまま、コスト要因で物価が上がっている状態です。

金融政策でコントロールできないのは当然です。


10. なぜ円安は止まらないのか

金利を上げれば円高になる、という説明も 需要と供給の前提を欠いています。

日本が安く見える理由は、

  • 金利ではなく

  • 国力・供給力・所得の低下

です。

産業が弱り、賃金が上がらず、 将来への期待が持てない国の通貨は 買われません。

円安を止める処方箋は、 金融引き締めではなく、実体経済の再建です。


11. 本当の処方箋 ― 財政・税制・経営の再設計

必要なのは、

  • 財政出動で需要を作る

  • 税制でお金が回るようにする

  • 企業が長期視点を取り戻す

かつて日本ができていたことです。

株を

  • 支配の道具から

  • 再び関係の道具へ

戻すこと。

短期利益ではなく、 作る力・育てる力を評価する経済へ 戻すことです。


12. 全体の結論

日本経済が弱った原因は、 一つではありません。

  • 株主至上主義

  • 金融政策偏重

  • 税制の歪み

  • 需要軽視

これらが組み合わさり、 日本式経営と供給能力を削ってきました。

しかし、 それは「できなくなった」のではなく、 「やらなくなった」だけです。

構造を変えれば、 日本は再び立ち上がれます。

遅いより、早い方がいい。

それだけは、間違いありません。