えだまめ -26ページ目

[小説]四月二日 至極平凡。その2

三月三日
 至極平凡。
 東海林さだおのエッセイを読む。マンボ料理について書いてあった。何でも肝が絶品なのだそうだ。濃厚な味で淡泊なマンボの刺身とまた絶妙なバランスであるとある。私が知っているマンボ料理と言うと、本で読んだだけで喰ったことはないが、マンボの身を手でちぎって大和煮風に煮込むというものだ。土佐料理だそうである。なんでもマンボウの身には水分が多く、ざる一杯分煮込んでも小鉢一杯分ぐらいしかならないと言う。味は水母のようで珍味であるらしい。
 つらつらとマンボウのことを考えていると何だが無性に喰いたくなった。魚屋に行って
「マンボウはあるか?」と尋ねると「ない」と言われすごすご帰る。帰り道、古本屋で北杜夫の文庫本を買う。一冊百円。
 夜、何年かぶりにノリヲから電話がある。
電話口でノリヲは「助けてくれと言う」。今どこだと聞くと、私の地元にいるという。「どうしたんだ」と聞くと「助けて欲しいんだよ」と繰り返す。酔ってるのかと聞くと「酒は飲んでいない」という。薬はと聞くと、クックックと笑った。一体、オレに何が出来るのかと聞くと「何もできない」と言う。「何もできないだろうから電話したんだ」と言って、ノリヲは電話を切った。
(つづく)

[小説]四月二日 至極平凡。その1

三月二日
 冷蔵庫が壊れていることに気づく。一ヶ月前に買ったケチャップが腐っていやがった。気づかずに白いフタを開けると、鼻を突く嫌な匂いがして思わず顔を背けた。嫌気性細菌の放つ独特の頭がイタくなるよゆうな匂いだった。 
 夕方、スーパーに買い物に行く。帰り道、コケた。痛かった。卵がみんな割れたのが惜しかった。夜中少し咳が出る。寝ているところを咳をして起きた。背中に汗をかいていた。
(つづく)

日記の風体の小説を

ちょっと日記の風体の小説を
一日ごとに乗っけてみると
おもしろいんじやないのかえっと
船橋撃墜王さんがおっしゃいますので

「4月2日至極平凡」という作品を
のってけて行こうかとおもいます。
テーマは「作品」ってな感じて

どうぞよろしく。

寝取られ宗介

「寝取られ宗介」は劇中の演目。しかし実際に団員に女房を寝取られ、オマケに駆け落ちまで許してしまう座長。いや、座長が駆け落ちを仕組んだのか?不思議なことに、いつも、しばらくすると二人は一座に戻ってきて、もとの劇団になってしまう。一座で音響担当の青年が病床の妻に対して送る手紙で近況を語るという形式の中物語は進む。とは言っても、口語には「」が使われ読みにくいことはない。
 つかこうへいの旨さの一つに、クライマックスに向けての話のもっていきかたにあると思う。最後の方になると、ページをめくるのも間に合わないぐらいに急速に情景が迫ってくる。

 この物語の注目点のひとつとして、役者ではない舞台人にスポットを当てていることを指摘しても良いかもしれない。物語は、舞台から一歩引いたところにいる青年から、旅一座の人々がおりなす人間模様を見回す。そしてやがて、劇団から離れていくことが決まる青年。読後に彼の成長も感じ取れるはずだ。

 舞台人つかこうへいの魅力が十分に感じ取れる一冊。

船橋撃墜王の座右の銘

座右の銘は
「人生二重底」