インターネット上の投稿サイトにおいて、ヘイトスピーチ(hate speech)とみなされる投稿へのフェイスブックの対応に関するガーディアンの記事(How hate speech campaigners found Facebook’s weak spot)を題材にします。
フェイスブックやツイッターは収益の大宗を広告収入に頼っています。広告主(advertiser)にとっては、注目される投稿の近くに広告が掲載されることで自らのサイトへの誘導ができる可能性が高くなり、広告戦略上有利と言えます。ところが、注目される投稿が人々の反感を買うようなものだったとしたら、どうなるでしょうか。そうした投稿をサポートしているとみなされ、下手をすると不買運動(boycott)につながることにもなりかねません。こうしたリスクに対処するため、あるいはヘイトスピーチを助長するようなサイトを許さないということで、広告を取り下げる動きが出てきています。こうした一連の動きが”Stop Hate for Profit”と呼ばれています。
前置きが少し長くなってしまいましたので、記事に行きましょう。
At 5pm on Friday, Unilever, one of the world’s largest advertisers, with a portfolio of products that ranges from Marmite to Vaseline, suddenly announced it was pulling all adverts from Facebook, Instagram and Twitter in the US.
Given the “polarised atmosphere in the US”, the company said, and the significant work left to be done “in the areas of divisiveness and hate speech … continuing to advertise on these platforms at this time would not add value to people and society”.
6/26にユニリーバ(オランダとイギリスに本拠を置く世界有数の一般消費財メーカー。食品・洗剤・ヘアケア・トイレタリーなどの家庭用品を製造・販売)が米国におけるフェイスブック、インスタグラム、ツイッターでのすべての広告出稿を取り下げていると発表しました。背景として、米国における二極化(polarised atmosphere in the US)、社会の分断(divisiveness)やヘイトスピーチといったことがあるなかで、(フェイスブック等の)プラットフォーム上で広告を続けることが人や社会に付加価値を与えない、ことを挙げています。
Mark Zuckerberg, it said, would be “going live on his Facebook page” to discuss the company’s racial justice work. Thirteen minutes after that, the most powerful chief executive in the world appeared on screens.
Humbled, he announced a series of new policies, including a ban on hateful content that targets immigrants, and further restrictions on posts making false claims about voting.
これに対して、ザッカーバーグはフェイスブック上のライブで移民を標的にしたヘイト内容の投稿を禁止し、選挙投票に関する虚偽の主張をする投稿にさらに制限をかけることを含み、新たな方針を表明しました。上記のユニリーバの公表からわずか2時間後に対応を表明しています。
In the protests prompted by Floyd’s death, Trump again tested the boundaries, posting on Facebook and Twitter a message that “when the looting starts, the shooting starts”.
米ミネアポリス州でジョージ・フロイドが警官の過度な拘束で亡くなり、抗議行動が広まりましたが、これに対してトランプ大統領は”略奪が始まれば、銃撃が始まる”(when the looting starts, the shooting starts)とフェイスブックやツイッターに投稿して大きな批判を浴びました。というのも、上記のトランプ大統領のツイートは、1967年に当時マイアミ警察署長であったウォルター・ヘドリーが同市の黒人に対する新たなより抑圧的な方針を公表するときに使用した表現であり、人種差別の歴史的背景があるものだったからです。
これに対して、ツイッターとフェイスブックとでは対応が異なりました。
Twitter, noting the racist history of the phrase, and interpreting it as a potential call for violence, enforced a policy it had enacted last summer for just such an occurrence: the company restricted the tweet, preventing it from being replied to or liked, and hid it behind a warning declaring that the tweet broke its rules. But it left it up, citing the inherent newsworthiness of a statement by an elected official with millions of followers.
こうした表現は人種差別の歴史があり、暴力を呼び起こす恐れがあるものと解釈して、ツイッターは当該ツイートの”いいね”や”リツイート”ができないようにして、さらにツイッターのルール違反である旨の警告文の後ろに隠しました。ただ、削除まではしませんでした。数百万のフォロワーがいる政治家による声明として固有の価値があることを理由としています。
On Facebook, however, the post was untouched. In a post on his personal page, Zuckerberg wrote that he interpreted the statement not as incitement to violence but as “a warning about state action”. “Unlike Twitter,” he wrote, “we do not have a policy of putting a warning in front of posts that may incite violence because we believe that if a post incites violence, it should be removed regardless of whether it is newsworthy, even if it comes from a politician.”
他方、フェイスブックはこの投稿に対して何らの対処もしていませんでした。ザッカーバーグは自身の投稿で、トランプ大統領の投稿は暴力を誘うものではなく、国家的対応の警告であるとしています。また、ツイッターとは異なり、ニュースとしての価値があるかに関わらず、フェイスブックでは暴力を誘発する投稿はたとえ政治家によるものであったとしても削除するため、投稿に警告を付すことはしないと言っています。
正直申し上げて、米国内での感情がどういったものか、僕には理解しきれていませんが、影響力のある人物のSNS上の投稿は少なからず同調者を生み、それが大きなうねりに成長することもありうるのではないでしょうか。いずれにしろ、いわゆる寝た子を起こす行為にプラットフォーマーが加担することがあってはならないと思います。
【文法解説】
分詞構文(ぶんしこうぶん)
英語では、付加的な説明を追加するときによく使われます。日本語に訳すときは読みやすい文にするためにオリジナルの英文とは異なる順番に入れ替えたりして苦労することもあります。しかしながら、基本的には、読者に理解しやすく情報を追加する目的で使われているので、分詞以外の主語と述語をまず見つけて、情報が付加されている箇所(分詞)と分けてから読むようにすると英文の理解が進むと思います。
①Twitter, /②noting the racist history of the phrase, and interpreting it as a potential call for violence/,① enforced a policy/ ③it had enacted last summer for just such an occurrence:
ツイッターの対応を示した箇所で、先ほど引用した文の一部です。主後はTwitterで述語はenforcedです。enforcedの目的語であるa policyにもそれを説明する関係節がついてしまっているのできれいな日本語にしようとすると訳しにくいのですが、骨子となるのはTwitter enforced a policy(ツイッターは方針を適用した)です。③以下はa policyを説明しています。it hadのitはTwitterのことです。そして、②が分詞です。
情報として理解するときは、頭からザっと日本語に変換していきます(日本語ネイティブの速読のコツです)。
①ツイッターは、②そのフレーズの人種差別の歴史に注意を促し、暴力を呼びかける可能性があるものと解釈し、①方針の適用をした、③ツイッターは昨夏まさにそのようなことが起きたことに対処するために(方針を)制定した。
ちなみに、it had enactedと過去分詞になっているのは、昨夏に方針を制定したのはトランプ大統領の今般の投稿に方針を適用したことよりも前のことだからです(大過去、という言葉を聞いた覚えがあれば、それです。なければ、ここで覚えてください)。
少々長くなりましたが、以上です。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
お疲れさまでした。