インフレが起きると、財・サービスに対する現金の購買力は低下する。この時、政府は現金を増発して、それでもって財・サービスを購入しようとする。国民は自分たちが持っている現金の購買力が落ちているので、購買力を回復しようとして、この政府が増発した現金を政府に財・サービスを売って手に入れる。
かくて政府は税金を徴収することなく、国民から財・サービスを購入することができるのである。この意味で、インフレは現金を持っている国民全体に対する税金であるといえる。この意味では、現金についての債権者である国民が損し、債務者である政府が得するといえる。
しかし、政府が得することはないのである。政府が得するという時には、必ず国民の誰かが得しているのである。
例えば、ある人がインフレによる現金の目減りのために5万円の損失を被ったとしよう。しかし、この5万円はそのままこの人のインフレによる損失にはならない。この人がインフレによる現金を調達したならば、この人が負担したはずの税金とインフレによる現金の目減りとを比較して判断しなければならない。仮にこの人が負担したはずの税金が8万円であったとすれば、この人は差し引き3万円の得をする。
このように、インフレに限らず、政府の得は国民のうちの誰かの得なのである。従って、インフレとは国民全体に対する税金だといっても、負担したはずの税金と比べてみれば、国民の中に得する人も損する人もあり、国民全体では差し引き零になる。つまり、現金についても、インフレは国民の間の所得の再分配なのである。
「スティグリッツ マクロ経済学」、「インフレとデフレ」(岩田規久男著)参照
