前回のアルバム、檸檬の棘から1年9ヶ月ぶりのフルアルバムとなる。意外に時間が経っていたことに驚かされる。先行配信にてリリースされた、「ダ・カーボ」、「竹」も収録され、コロナ禍ながら全身全霊を込めたアルバムになった事は言うまでもない。
SNSが普及して、常に何か配信したり最低でも1日1回Twitterなどでコメントを発信しなければ、すぐに忘れられる。そんな生き辛い時代の上に、芸能人やらアーティストはコロナ禍で活動を制限され、手探りで自分のスタイルを確立させようと必死になっている。
イベントやLIVEも軒並み延期や中止をせざるを得ない状況で、NEW ALBUMをしっかりとリリースできたのは、ある意味奇跡なのかもしれない。
2016年に咽頭ジストニアを発症し、復帰は果たしたものの、完治はしていない。
本人は「違和感と常に闘っている」と話す。歌手としての休止期間は執筆活動でファンを楽しまさせてくれていた。
昨年、檸檬の棘ツアーもコロナウイルスにおける緊急事態宣言突入直前に終了。ギリギリしっかりやり切れた事は、本人の持っているツキもあると思える。
今回のアルバムは咽頭ジストニアによる活動休止からくる、多少なりとも内に向けたメッセージの歌詩が多かったが、「何度だって立ち上がる。これは黒木渚が贈る生命讃歌だ。」という、キャッチコピーらしく、今回は外へ向けた明るい黒木渚らしい楽曲が戻ってきた。
咽頭ジストニアとも上手く付き合っていけているせいもあるのか、「死に損ないのパレード」というある意味自虐的なタイトルも「らしさ」が充分に出ていると思う。
「心がイエスと言ったなら 一秒で世界は裏返る」と前向きな想いを込めた「心がイエスと言ったなら」、結婚式で流せるような(笑)曲も…と作られた「合わせ鏡」。 「タフな私でありたい」と力強いビートが魅了する「象に踏まれても」。
そして、どこか意味ありげに英詩を多く再収録された、デビューシングルでもある「あたしの心臓あげる (midnight ver.)」。
暮らしにくい世の中で私たちは不器用者、「ついておいで 午前0時に花火が上がるパレード」と不器用者なりの生き方がある、一緒に歩こう!とこの生命讃歌のアルバムは幕を閉じる。
…いや、これからが始まりだ。PARADE IS NOT OVER。黒木渚のパレードはあの日誓った"日本武道館"へと続いていく。
2021.7.9. DAi-YOU
