というわけで、バルセロナに行ってきた。
まあ留学先探しとか、むこうのNPO法人に日本の地震と津波被害の状況報告などもしたりしてきたんだけど、ここまで来たらリセウに行かねば!と思ってオペラを観ることに。ちょうどJosé Curaの出演するCAV & PAGがあったし。

本館の方にも書いたけど、字幕がスペイン語ではなくてカタルーニャ語だったというのがちょっと痛かった、でも仕方ないここはカタルーニャなんだから。

カヴァレリア・ルスティカーナが始まる。マスカーニの旋律は本当に叙情的で美しいと思う、そして最初のトゥリッドゥのアリア「O Lola ch'ai di latti la cammisa」が遠くから聞こえてくる。

間違いなく彼の声だわぁ・・・ラブラブ

と、ぽーっと聞き惚れつつ「今日は調子いい日なんだな」とちょっと安心。だってダメな日ってもう最初から「ムリですから、流しますからねっ」みたいな歌い方するから。まあ「見せ場はめいっぱい頑張りますけどあとはテキトー」みたいなことも多々ある人ではありますが。この日のサントゥッツア役はLuciana D'Intinoで、妙にパワフルなサントゥッツアでした。この二人の教会の前でのなじり合い二重唱がこれまた強烈で、取りすがるサントゥッツアを「もうこれ以上困らせないでくれ」と突き放すトゥリッドゥの人でなしっぷりが素敵むかっパスクアで教会にやって来たローラの勝ち誇ったような笑いもイヤらしくってこれまた素敵。でもってローラが現れたとたんにさっきまでのサントゥッツアに対する顔がコロッとニヤケ顔に変わるトゥリッドゥのダメ男っぷりが「コイツ普段からこんな男なのか?」とJosé本体の人格を疑いたくなるぐらいでス・テ・キパンチ!

いや一番良かったのはアルフィオ役のGeorge Gagnidzeだったと思う。じっくり深い低音から、かなり上の方まで抜けるいい声で、本当にしっかり聞かせるバリトンだった。バックステージでこの人だけが、合唱に参加していた子ども達に一斉に取り囲まれてサインをせがまれていたから、たぶんそういう人なんだろうなあ、と思う。

後半の「道化師」もカニオ役をJoséが通しで演じていたんだけど、息切れする様子もなく丁寧に歌っていたから、その日は本当に調子がよかったんだと思う。以前はかなり恵まれた声をいいことに荒っぽい力技でムリクリ押し出すみたいな歌い方をすることが多かったんだけど、ここ数年はこういう丁寧な歌い方をするようになったなあ、もうあの声は戻ってこないんだろうけど。

さて、今回もバックステージでお会いすることになっていたんだけど、やっと出てきたJoséは、わたしを見て「ア、ドウモー、オツカレサマデシター!」と日本語で。しかしルネの「ソ、デスカ?ソ、デスネー」にしても、誰がこんな日本語を教えるんだろう。まあ外国人にかに道楽の歌とか「オトトイキヤガレ!」なんて日本語を教えるわたしが言うことではないんだけど。

そして彼が両手を広げて待ってるもので、恐る恐るハグ、してたらずいっと顔を出して「キスシテ?」と言う。なんだかそこでスッと緊張が切れて「どこに?わたしが好きなところにしていいの?」とスペイン語で聞いたら一瞬「あれっ!」みたいな顔で驚いた様子。

「スペイン語話せたんだー・・・」
「そうなの、『今日は最高だった』って言いたかった」
「アリガト、聞きにきてくれて本当にありがとう」
「ちょっと疲れてる?」
「ちょっとだけ、でもそれほどじゃないよ」
「また次の舞台の日も見に来るから」
「待ってるよ」

なんて話をハグしながらささっと交わして、その後一緒にいた彼の奥さんのSilviaとも「ムチシマグラシアース!」とハグして別れた。ホテルに戻ってから写真も撮ってないしサインももらってないことにやっと気がついたんだけどまあいいかw