昼間、あの人とLINEでやり取りしたことが気になり、
眠れない。

突然わたしにはあの人が必要だと感じて、それを伝えた。
あの人は自分が必要なのは恋愛感情からなのかと聞いた。
わたしはよくわからないと答えた。
あの人はもし恋愛感情であったら、それは困る、と言った。
ああ、それは困るだろうなーとわたしも思った。
あの人は立派な社会人で、一家の大黒柱で、愛妻家だと公言している。
だったら、わたしを含め、女性社員へのボディタッチやセクハラめいた言動はやめた方がいいですよと、わたしはアドバイスした。
あの人は自分はそんなことしていないし、するはずもない。女性社員に下心なんてない、と言いはった。
わたしは、あの人が会社でも女性社員にボディタッチするのを見たことがあるし、わたし自身も飲み会でも意味なく二の腕を触られたことがある。
そう言っても、いやそれは、あなたの記憶違いだ、自分がそんなことするはずがないと言いはった。

あの人はお酒が大好きで、お酒の席であったことを、次の日にはきれいさっぱり忘れてしまう人として有名だ。

なのに、自己防衛に躍起になっているあの人がおかしくて、わたしは心で笑っていた。

わたしはあの人に好かれたいために、たくさんの時間とお金をかけた。
心の病気にもなり、異動も余儀なくされた。
常にあの人のことが頭にチラつき、考え込むことが多くなった。
あの人が女性社員をほめる度に、自分が大嫌いになった。
聴覚障がい者で、太っていて、体力がなく、単調な仕事しかしていない自分が大嫌いになった。
あの人のちょっとした言動に泣いたり喜んだりする自分が
大嫌いで、でも認めざるをえなかった。

男は忘れたで済まされる。
割りを食うのはいつも女。



あの人はエリートで人の何倍も努力して上を目指している
立派な人だ。
わたしはあの人を心から尊敬している。
だけど…ゲスだ。
ゲス、ゲス、ゲス、ゲス、ゲス…
やっとそのことに気づいた。

誰が何と言おうと、
かつて、わたしにはあの人が必要だった。