病院から戻った後、『食べたい』と言う意思表示を示した為、少し回復しつつあるのだろうと思い仕事に戻った私。

だが、虎太郎が心配でいつもより早目に帰宅した。

解錠する間ももどかしく、苛々しながら玄関を開けると、普段なら元気一杯で迎えに来てくれる虎太郎の姿はなく、空腹と喉の乾きを訴える新之助と長い昼寝から目覚めた海老蔵だけだった。

玄関には嘔吐の跡。
台所にも嘔吐の跡。


虎太郎はダイニングテーブルの上で、小さな箱を作っていた。

回復の兆しを示していたのは、僅かな間だったのだ。

小さな体を震わせて、体内に残っている水分を吐き出す。

もう何も残ってないでしょうに…


海老蔵が心配そうに虎太郎の様子を伺う。

新之助は食事を摂って漸く落ち着いた様だ。


少し休んでは嘔吐する繰り返し。

妹の同僚のワンコは、二日間絶食して消化不良から回復したらしい。

大丈夫。
大丈夫。


艶々の黒い背中を撫でながら励ますしかない無力な私。

頑張れ。虎太郎。



急いでいる時に限って長引くのが我社の定例ミーティングである。

虎太郎の様子が気になって気も漫ろ。

終了直後、ダッシュで黒豆号の元へ。ガソリンが無くなるとか、そんなことはどーでも良かった。とにかく、虎太郎の様子が気になっていた。

自宅へ着くと、いつも眠っているベッドに虎太郎の姿はない。やはり、そこかしこに水を吐いた跡がある。

茶の間の窓際にちょこんと座り、陽の光を浴びていた。足元には嘔吐の痕跡。
抱き上げてもグニャリとする。

こりゃダメだ。

午前中の診察時間ギリギリだけども、お医者さんに電話してみた。直ぐ来れるなら大丈夫との事。

キャリーバッグには絶対入らないと言うので、一番大きな洗濯ネットに入れタオルでくるみ早々に家を出た。

気を付けてね


新之助が見送ってくれた。
ありがとう。
行ってきます。

虎太郎を膝に乗せ動物病院まで向かう。膝の上の虎太郎は、緊急時に発する声で大きく一回鳴いた。



診察台で神妙な顔をしてじっとしている虎太郎。
熱を測り、触診をし、心臓の音を聴いてもらった。臨床的には異常は見られないが、消化器が荒れちゃったのかもしれないね。との診断。点滴と、注射をしてもらった。おとなしい虎太郎。不安気な瞳で私を見つめる。

大丈夫よ。
大丈夫。

明日の晩まで絶食。
水もダメ。


点滴が終わり、再びネットに入れられる。
張り付くように抱き付いてきた。


点滴と注射で気持ち悪さが解消されたのか、帰路では三回鳴いた。
家に着いてからはゴロゴロと喉をならして甘える。
あんなに入る事を拒んでいたキャリーバッグにも出入りして遊んでいる。


少し元気になった。
良かったしょぼん

本当に良かった。




お向かいの風太が、しきりに我が儘を言っている様だ。どうした?
夜更けから調子が悪い。
嘔吐が続いている。

いつも元気一杯の虎太郎。

気持ち悪そうに小さくなって座り込んでいる。

人間の言葉を話せたら…

可哀想に。

ミーティングが終わったら帰るから、待っていてね。
お医者さんに行こう。


神様、
虎太郎を守ってください。