※重篤な副作用は一般的に発生頻度が低く臨床現場において遭遇する機会が少ない。

副作用の発見の遅れが重篤化することもあるので、早期発見・早期対応を簡単に記したものになります。

(簡単にまとめたものなので、抜けや見解の違いによる誤記がある場合もありますのでご了承ください)

 

《血小板減少症》

【症状】

「手足に点状出血」「あおあざができやすい」「出血しやすい(歯ぐきの出血・鼻血・生理が止まりにくい)」

血小板減少のみの場合、症状は出血傾向が主体となりますが、打撲後の紫斑、血腫の場合、圧痛を伴うことがあります。

また、出血部位、程度によっては特有の症状を示します

例えば、卵巣出血後の腹痛、脳出血後の頭痛、意識障害、運動・知覚障害を始めとする神経症状、眼底出血による視力障害、過剰の生理出血や消化管出血による出血性貧血に伴う症状(動悸、息切れ、めまい、倦怠感、微熱、冷感など)などが挙げられます。また、消化管、尿路出血時には腹痛、嘔気、嘔吐が認められることもあります。

 

【原因になり得る薬剤】

イキサゾミブクエン酸エステル、レナリドミド水和物、リネゾリド、デキサメタゾン、ダラツムマブ、カルボプラチン、ボルテゾミブ、オラパリブ、シスプラチン、オキサリプラチン、バルプロ酸ナトリウム、ペニシラミン、チアジド系利尿薬、金製剤、

など多岐に渡る

 

【対処】

疑われる医薬品の服用を中止し、直ちに病院を受診する。

 

【概要】

血小板とは、骨髄中で巨核球から生成される、核のない小さな細胞(2~3μm)で、出血時の止血、血液の凝固に重要な役割を担っています。
血小板数の正常値は15~35万/mm3 で、通常10万/mm3 以下を血小板減少症としています。血小板数が5万/mm3以下になると、ちょっとした打撲であおあざが出来て、それが大きくなったり、歯磨きの時に出血したり、生理出血が止まりにくくなって出血量が増えたりする傾向があります。このような症状がなくても、突然の出血が皮膚にあおあざ、口腔内の粘膜からの出血、鼻血、血尿黒色便あるいは血便などとして認められることがあり、血小板数1万/mm3 以下になると、頻度は高くありませんが脳内出血など重い症状をきたすこともあります。

医薬品の服用を中止し、適切な管理、治療を行うことによって、多くは約1週間ぐらいで血小板数は回復し始めます。

 

 

【早期発見と早期対応のポイント】
(1)早期に認められる症状

初期症状は皮下、粘膜の出血症状。すなわち誘因なく皮下の点状出血及び紫斑が生じ、粘膜に関しては、鼻出血口腔内出血歯肉出血、眼球結膜下出血、消化管出血、血尿、あるいは軽度の機械的刺激により(例えば打撲等)皮下出血や粘膜出血を起こしやすくなったり、女性では生理出血が止まりにくくなったり、出血量が増えたりします。

 

(2)副作用の好発時期

免疫学的に血小板が破壊されることによる血小板減少は、医薬品投与が初めての場合は、血小板の体内でのターンオーバーを反映して、7 日から 2 週間後に症状が出やすいとされます。しかし同じ医薬品によっても短期間に現れる場合と、数ヶ月、数年後に現れる場合があり、症例によってまちまちです。ただし、原因と考えられる医薬品を過去に投与されている場合には、その後の同一薬投与による血小板減少の発現は、数時間から5日以内のことが多いとされます。 

 

(3)自覚症状

出血傾向(打撲等の心当たりがないのに、あるいは通常では症状が出ないような軽微な外力によっても皮下の紫斑(四肢に多い)、歯磨き時 の歯肉出血、鼻出血などが出やすくなったり、生理出血の量が増えたりして遷延する。)。 ただし、抗血小板療法や抗凝固療法中の症例における出血傾向については、血小板減少よりもこれらの医薬品の薬理作用を考慮します。

 

(4)他覚症状

紫斑を始めとする皮膚、粘膜の各種出血症状。脳出血では意識障害運動、知覚障害、消化管出血による吐血、下血、黒色便、尿路出血による血尿などが挙げられます。また、出血が高度の場合には出血性貧血を来たし、顔色不良、眼瞼結膜の貧血、重症例では血圧低下を来たす。

 

(5)早期発見に必要な検査項目
血液検査(血小板数(Plt)、白血球数(WBC)、白血球分類、赤血球数(RBC)、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht))を定期的に行います(例えば、最初の1ヶ月は2週間に 1 回、以後1ヶ月から2ヶ月に1回、可能ならば毎月1回行うことが望ましい)。既往に薬剤性血液障害歴のある症例では1週間後、2週間後、1ヶ月後に検査を行い、異常が認められる場合には、適宜検査回数を増やした方がよいでしょう。また出血傾向が認められる場合には、直ちに血液検査を行う。

 

(6)発症機序

●薬剤依存性抗血小板抗体の産生による場合

医薬品が可逆的に血小板膜蛋白に結合することによって膜蛋白に形態的変化を引き起こし、新たな抗原が露出します。この新たな抗原に対して抗体が産生されます。この抗体は Fab(抗体の抗原結合フラグメント)を介して医薬品存在下で血小板と結合し、血小板減少を引きおこす

→薬剤依存性血小板減少症の発症機序の特徴は以下のとおり

①医薬品が血小板膜蛋白に結合する

②医薬品の結合により膜蛋白の形態変化が誘導され新たな抗原エピトープが露出されこれに対して抗体が産生

 

●自然抗体による場合

血小板膜糖タンパクに医薬品が結合することにより、膜糖タンパクが形態変化し、新たな抗原部位が露出する場合、この新たな抗原に対して反応する抗体をすでに有している症例があります(自然抗体)。このような症例では投与後短時間で血小板減少が発症するのが特徴。

 

●血小板産生を障害する場合

機序は明らかではありませんが臨床的に例えば、インターフェ ロン、イマチニブ、インフリキシマブなどにより血小板減少が認 められる。

 

(7)副作用の判別基準(判別方法)

①「疑われる医薬品」が血小板減少を来す以前に投与され、かつ医薬品の投与中止により血小板減少が完全に回復し、その状態を維持すること。

②「疑われる医薬品」が血小板減少を来す前に投与された唯一の医薬品であること、あるいは複数の医薬品が投与されている場合で 「疑われる医薬品」を中止し、他の医薬品は継続投与にも関わらず上記①を認めること。 あるいは複数の医薬品が投与されている場合で「疑われる医薬品」を含めてすべて中止とした結果上記①を認め、その後「疑われる医薬品」以外を再投与しても血小板減少を認めないこと

③血小板減少をきたす他の原因が除外されること。

④疑われる医薬品の再投与によって再び血小板減少を認めること。(倫理上行うことは困難である)

 

【治療方法】

①疑われる医薬品の投与を直ちに中止します。(多くは無治療で中止後 5~8 日で血小板数は回復します)

②出血傾向や血小板減少が重篤の場合は、副腎皮質ステロイドホルモン、γ-グロブリン大量療法等を行います。

③著しい出血時には血小板輸血を行います。

 

【その他】

(1)医療関係者の対応のポイント

●出血傾向が必ずしも全て血小板減少によって引き起こされる訳ではないことも留意しておく。

●医薬品による血小板減少症には、薬物の薬理作用そのものに骨髄抑制作用があり、その一つとしての血小板産生抑制によって血小板減少が発症する場合と、本来の薬理作用とはかけ離れた副作用として血小板減少が発症する場合があります。

医薬品により血栓を作った結果、血小板が消費され血小板減少が生じるような血栓性血小板減少(ヘパリンによる血小板減少症や医薬品による血栓性血小板減少性紫斑病など)については別途、ヘパリン起因性血小板減少(HIT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)による血小板減少のマニュアルを参照する。

 

(2)判別が必要な疾患と判別方法 

医薬品による血小板減少症には、薬物の薬理作用そのものに骨髄抑制作用があり、その一つとしての血小板産生抑制によって血小板減少が発症する場合と、本来の薬理作用とはかけ離れた副作用として血小板減少が発症する場合があります。

医薬品により血栓を作った結果、血小板が消費され血小板減少が生じるような血栓性血小板減少(ヘパリンによる血小板減少症や医薬品による血栓性血小板減少性紫斑病など)については別途、ヘパリン起因性血小板減少(HIT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)による血小板減少のマニュアルを参照する。

 

①特発性(免疫性)血小板減少性紫斑病

②肝疾患(慢性肝炎、肝硬変)

③脾機能亢進症

④再生不良性貧血

⑤骨髄異 形成症候群

⑥ウイルス感染など感染症後の血小板減少症(急性血小板減少性紫斑病)

⑦白血病

⑧全身性エリテマトーデス(SLE)

⑨自己免疫疾患に伴う血小板減少症

播種性血管内凝固症候群

血栓性血小板減少性紫斑病

など

 

 

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