※重篤な副作用は一般的に発生頻度が低く臨床現場において遭遇する機会が少ない。

副作用の発見の遅れが重篤化することもあるので、早期発見・早期対応を簡単に記したものになります。

(簡単にまとめたものなので、抜けや見解の違いによる誤記がある場合もありますのでご了承ください)

 

《リチウム中毒》

【症状】

「手が震える」「意識がぼんやりする」「眠くなる」「めまいがする」「言葉が出にくくなる」「吐き気がする」「下痢をする」「食欲がなくなる」「口が渇く」「お腹が痛くなる」など

 

【原因になり得る薬剤】

リチウム製剤

 

【併用することによって中毒になりやすくする薬剤】

解熱鎮痛薬(NSAIDs)、ACE阻害薬やARBなどの降圧薬、利尿剤

 

【対処】

症状が複数(2つ以上)見られた場合には、自己判断で中止したり放置したりせずにただちに医師や薬剤師に連絡してください。

重度の場合には透析が必要な場合があります。

 

【概要】

リチウム中毒とは、リチウムという薬が体に取り込まれたことによって身体や精神に何かしらの毒性や有害な症状を及ぼしている状態をさします。

炭酸リチウムは、主に双極性感情障害(躁うつ病)の治療に用いられますが、有効血中濃度と中毒域が隣接しており、その濃度を超えた場合にリチウム中毒になる可能性があります。しかし、低い濃度でも中毒症状が出る場合や、逆に高い濃度でも症状が出ない場合もあるため、中毒量は個人や状態によっても異なります。

リチウム中毒になると、消化器症状(吐き気や嘔吐、下痢、お腹が痛い、食欲がなくなるなど)、神経・精神症状(手が震える、意識がぼんやりする、眠くなる、めまいがする、言葉が出にくいなど)や循環器症状(脈が遅くなる、脈が不規則になるなど)などの症状が見られることがあります。重症化すると、昏睡(意識がなくなり、痛みなどの刺激に反応しなくなる)や腎不全(腎臓の機能が低下する)などの重篤な合併症を来し、生命の危険につながったり後遺症を残したりする可能性があります。

 

【早期発見と早期対応のポイント】
(1)早期に認められる症状

初期には無症状のこともあるが、「手が震える」、「意識がぼんやりする」、「眠くなる」、「めまいがする」、「言葉が出にくくなる」、「吐き気がする」、「下痢をする」、「食欲がなくなる」、「口が渇く」、「お腹が痛くなる」など

 

(2)リスク因子

腎障害・腎不全、感染症、脱水症

 

(3)推定原因医薬品

リチウム製剤、(併用薬として、解熱鎮痛薬(NSAIDs)、ACE阻害薬やARBなどの降圧薬、利尿剤がある場合はリスク増加)

 

【注意点・その他】

①リチウム中毒は副作用の中で非常に重要であるが、炭酸リチウムにはそ の他にも注意するべきさまざまな副作用がある。

・意識障害、認知症様症状、洞不全症候群、高度徐派、腎性尿崩症、急性腎障害、間質性腎炎、ネフローゼ症候群、甲状腺機能異常など

 

②定期的な採血(用量が変わらない時は2~3 か月に1回を目途に行うことが推奨されています)により血中リチウム濃度測定を行い有効濃度に入っていることを確認する必要がある。

・有効血中濃度と中毒域が隣接しているので、簡単に中毒域に到達しやすいため。中毒域に入るとリチウム中毒になる可能性が高まります。

 

③躁うつ病で使われる薬でもあるので、過剰服用等に注意

・この場合、自殺に繋がることもある

 

④臨床検査所見と判別方法 

・臨床検査所見では、血中リチウム濃度の測定が重要である。リチウムの血中濃度は、最も低い血中濃度であるトラフ値(最終投与後12時間後)を測定する。トラフ値を測定するためには、患者に検査日の朝食後薬の炭酸リチウムは内服せずに受診するよう伝える。投与初期は維持量が決まるまでは1週間に1回をめどに測定し、維持量の投与中には2~3か月に1回をめどに血中濃度測定を行う。

 

⑤リチウム濃度が中毒域に達していなくても中毒症状を呈することがある

 

⑥リチウム毒性により、心電図ではT 波の平坦化、QTc 間隔の延長、徐脈の変化を引き起こすことがある。

 

⑦リチウムイオンは脳をはじめとした組織に入りにくいため、過量服薬によって血中リチウム濃度が高値となっても脳中濃度は中毒域まで達せずに、中枢神経症状を呈さないあるいは軽度なことがある。しかし1~2日後に脳中濃度が中毒域に達して、遅延性に中枢神経症状を呈することがあるので注意が必要である。リチウムイオンは脳内に移行すると、脳内濃度が低下しにくいため、中枢神経症状は数日から数週間持続することがある。

 

⑧他の向精神薬も一緒に服用し複合中毒を呈していることが多いため、鑑別が必要(セロトニン症候群、悪性症候群など)

 

【治療方法】

リチウム中毒を疑った場合には、まずは、血中リチウム濃度測定を行う。必要に応じて減量または休薬する。

基本は輸液を含む対症療法であるが、場合によっては血液浄化療法の適応がある。

リチウムに対する拮抗薬はない。活性炭はリチウムを吸着しないため、活性炭で吸着可能な他の薬剤を同時に服用していなければ使用しない。利尿薬はナトリウムの排泄促進により、腎におけるリチウムの再吸収を代償的に促進することがあるため用いない

リチウムは分子量が小さく、蛋白結合率が低く、分布容積も小さいために、血液浄化療法により除去されやすい。

 

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