※重篤な副作用は一般的に発生頻度が低く臨床現場において遭遇する機会が少ない。
副作用の発見の遅れが重篤化することもあるので、早期発見・早期対応を簡単に記したものになります。
(簡単にまとめたものなので、抜けや見解の違いによる誤記がある場合もありますのでご了承ください)
《緑内障》
【症状】
緑内障とは、眼球でとらえた像を脳に伝える視神経が障害され、視野の中に見えない部分ができたり、視野が狭くなる病気です。
医薬品による緑内障は、医薬品の作用により眼球の中を満たしている水(房水)の排出が障害され、眼球の内圧(眼圧)が異常に高まることにより発症します。急激に発症するものと慢性に進行するものがあります。
【原因になり得る薬剤】
散瞳薬(アトロピン、トロピカミド)、抗不安薬(エチゾラム、クロチアゼパム)、三環系抗うつ薬(イミプラミン)、昇圧薬(アドレナリン)、ベラドンナアルカロイド(スコポラミン)、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(ゾルピデム)、その他抗コリン作用を有する薬剤、ステロイドなど
【対処】
原因と思われる医薬品の服用を直ちに中止し、病院を受診する。
《緑内障を引き起こす薬剤には大きく分けて、眼圧を上げる薬剤と副腎皮質ステロイド薬の2種類に分けられる》
[眼圧上昇によるもの(散瞳作用および毛様体浮腫によるもの)]
(1)発生機序
1)瞳孔散大筋の収縮によって散瞳が生じる。散瞳状態においては、下記の2つの眼圧上昇機序が単独に、あるいは複合して生じると考えられる。
①相対的瞳孔ブロック:狭隅角眼では、水晶体前面と虹彩の接触範囲が広く、元々房水は通過しにくい。何らかの原因で瞳孔が散大したのち、通常瞳孔に回復する過程において、虹彩と水晶体の接触はさらに高度となり、房水の通過障害が起こる(=相対的瞳孔ブロック)。そのため、後房圧が上昇し、虹彩がさらに前面に屈曲することによって虹彩根部が房水の流出路である隅角を閉塞し、房水は貯留し眼圧が上昇する。
②プラトー虹彩機序:虹彩付着部の形態異常により、特徴的な隅角構造を有する患者に生じる。相対的瞳孔ブロックの機序なしに、散瞳によって虹彩が弛緩し、虹彩根部が隅角を閉塞することによって房水流出は阻害され、眼圧上昇が生じる。
2)毛様体浮腫を起こした場合、毛様体の浮腫により虹彩根部が前方に偏位し、隅角が閉塞したり、水晶体が前方に偏位し、相対的瞳孔ブロックが誘発されることによって眼圧上昇が生じる。
(2)副作用の症状
・ 急激に発症する場合:「目の充血」、「目の痛み」、「目のかすみ」、「頭痛・吐き気」。
・ 慢性に進行する場合:初期には症状はあっても軽微だが、進行すると「視野の中に見えない部分がある」、「視野が狭くなる」症状
※数時間以内で発症する場合もあれば 1 ヶ月以上経ってから起こることもあります。
(3)他覚症状
対光反射の減弱ないし消失、瞳孔の中等度散大、結膜充血および毛様充血、角膜混濁など。
(4)検査結果
正常値20mmHgを超える眼圧上昇。時に40~80mmHgに及ぶこともある。隅角検査で広範な隅角閉塞。
(5)推定原因医薬品
①散瞳薬、チエノジアゼピン系抗不安薬、三環系抗うつ薬、カテコラミン系昇圧薬、ベンゾジアゼピン系全身麻酔薬、ベラドンナアルカロイド、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、その他抗コリン作用を有する薬剤。②スルホンアミド系薬剤、抗てんかん薬
(5)治療方法
1)。相対的瞳孔ブロック:副交感神経刺激薬の頻回点眼により速やかに相対的瞳孔ブロックを解除すると同時に、高浸透圧薬や炭酸脱水酵素阻害薬の点滴、内服、併せて、緑内障治療薬の点眼を行うことにより、眼圧を可能な限り下降させ、その後、レーザー虹彩切開術(あるいは虹彩切除術)や水晶体摘出術を行うことが治療の原則である。
2)毛様体浮腫:副交感神経遮断薬、交感神経刺激薬点眼により散瞳を行って前房形成を図ると同時に、高浸透圧薬や炭酸脱水酵素阻害薬の点滴、内服を行うことにより、眼圧の正常化をめざす。薬物療法が奏効しない場合は、水晶体摘出や硝子体切除術などの手術療法を行う。
[副腎皮質ステロイド薬によるもの]
(1)発生機序
原因不明(副腎皮質ステロイド薬による眼圧上昇は前房隅角での房水流出障害が原因と考えられているが、その発現機序は下記のような種々の説が報告されているものの、今のところ統一した見解はない)
(2)副作用の症状
初期には全く無症状(あっても充血、虹輪視、羞明、霧視、軽い眼痛、頭痛程度)で、進行すると視野欠損、視力低下。
(3)他覚症状
初期には全く無症状で、あっても結膜充血程度。幼児では羞明、流涙などを認めることがある。
(4)検査結果
高眼圧、開放隅角、眼炎症所見なし。
被疑薬中止後の眼圧正常化。
(5)推定原因医薬品
副腎皮質ステロイド薬:
眼圧上昇作用は主に糖質コルチコイド作用の力価と眼内移行性、および各投与方法の眼内移行の程度に相関することが知られており、ベタメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロンは眼圧上昇作用が強いとされている。
点眼や軟膏などの外用薬でも注意が必要
(6)治療方法
可能であれば、まず被疑薬を中止する。同時に眼圧、眼底や視野障害の程度に応じて、緑内障治療薬の点眼や炭酸脱水酵素阻害薬の内服を行う。薬物療法が奏効しない場合は、レーザー線維柱帯形成術または線維柱帯切開術や線維柱帯切除術などの手術療法を行う。
【その他】
初期には症状はあっても軽微なことが多いので定期的な眼科検査が必要。
おまかせ広告です。
押してくれると嬉しいです
医療者向け
患者向け
重篤副作用疾患別対応マニュアルまとめ一覧 他