私が新しく引っ越してきた、「咲ノ里」は町の煩さから離れた静かな田舎町だった。
母「空気も美味しいし、まさに新天地って感じよね~」
『お母さんは、いつだってお父さんと幸せそうにしてるじゃん』
母「そんなこといって、茜にだってきっといい思い出ができる場所になるわよ」
『今までもそういわれてきたけどね』
小さいころから何度も重ねてきた転校に、私も随分となれてしまったようだ。
期待しなければ残念も後悔もない、そんなことをもう無意識のうちにできるようになってしまった。
(そもそも、すぐに転校しちゃうのに何も思い出なんていらない)
前もその前の学校でも別れを惜しむような友人は一人としていなかった。
どうせまた、繰り返しである。
だからといってどうということではないのだけれど。
母「あぁ、そうだわ茜」
『どうしたの?』
母「ちょっと、役場に行ってくるから、いつもみたいに買い物しててくれない?」
『ん、分かった』
この町で一番大きいというスーパーで夕飯の買い物をする。
引越ししてその日の買い物はわたしの役目なのである。
(今日は、とんかつかぁ・・・)
?「あの、落としましたけど」
『・・・え?』