食堂かたつむり

テーマ:

ある日一緒に住んでいたインド人の恋人が家財道具を全て持って出ていった。

残されていたのは祖母の時代から大事に使っているぬか漬けの壺だけ。

ショックで言葉を失った倫子はぬか漬けの壺を持って実家に帰る・・・。

そんな出だしで始まる物語「食堂かたつむり」は大好きな本の一つ。

この二日間でまた読み返してみました。

 

実家の隣りの物置小屋を改装してカフェを作っている内装工事の描写は、同じ経験をした人ならきっとワクワクするんじゃないかな。どんなテーブルにしようかな、それに似合う椅子はどれかな・・・ガス台はどこに置こう・・・?

カフェができる前に夢を膨らませて、そんなことを考えている時間はとっても楽しかったです。

 

倫子のレストランは1日一組の予約限定。食べる人をイメージしてその人にあった料理を心の込めて作る・・・ザクロカレー、林檎のぬか漬け、牡蠣と甘鯛のカルパッチョ、カラスミのリゾット、マスカルポーネのティラミスとバニラアイス・・・料理の描写がとにかく美味しそうなのです。

のちに「食堂かたつむりの料理」というレシピ本も出たとか。

どれもに作る人の思いや食材に対する愛情が伝わってきて、作者の小川糸さんはきっと料理がお好きなんだろうなあと想像しながら読みました。

 

そしていつしか倫子のご飯を食べた人は幸せになれるという評判が広がっていきます。最後は奔放で決して好きにはなれなかった母が病にかかり結婚パーティをすることに。

食事の担当は倫子。

名前をつけて飼っていた可愛らしいエルメルという豚を食べることになり、倫子は自らエルメルをさばきます。

食べることは愛すること、食べることは生きること・・・。

エルメスの命を全て生かそうと、感謝の気持ちと共に心して料理に取りかかる倫子。

エルメスの肉は美味しいご馳走になり、みんなに喜ばれます。

 

優しすぎて温かすぎて・・・まるで夢の中にいるような本でした。

なのでこの作品を甘ったるい本だという人もいるようです。

映画にもなってそれなりに楽しめましたが、私にはミスキャストでした。

私はカフェの内装工事からメニュ−作りやイベントまで自分で考え創ってきたので、特にこの本に対して共感するところが大きいのかもしれません。

カフェをやりたい人には絶対読んでほしいな。

食べるものには全て物語があるということが静かに伝わって来る本でした。

小川糸さんのデビュー作。

以来、私は彼女のファンです。