自転車旅からの卒業 | 山下晃和の地球を繋ぐプロジェクト(海外自転車旅)

自転車旅からの卒業




アザーンの声が、まだ暗がりの空に

こだまする。

この独特の声は、1日の始まりを意識させるとともに、癒しを与える。

早朝、日の出と共に、

左のフロントバッグに入った

クランプラーの化粧ポーチから

洗顔料とハミガキセットを取り出す。




安宿の水道は、

締めても、締めても

ポタッ、ポタッと水が流れている。



鏡は汚くて、小さいので

よく近づけないと顔が見えない。

歯を磨き終わって、顔を洗えば、

少しシャキッとする。



昨夜、買っておいた

マリービスケットを頬張りながら

地図を眺める。

ある程度大きな街を覚えて、

頭に入れる。




ファンの下で乾かしておいた

PAPERSKY丹波篠山柄のてぬぐいを

取ると、昨夜焚いた

蚊取り線香の匂いが残っている。




全ての荷物をオーストリッチの

バッグ類に入れたら、

忘れ物がないか

部屋中を確認する。




忘れ物は1番凹む。

確実に返って来ないからだ。

だから、何度も確認する。






狭いドアから

荷物満載の自転車を運び出す。

リアのパニアバッグの内側がだいたい
引っかかって、1度バックした後

再びおおまわりに出す。




部屋の鍵をフロントバッグに載せて、

レセプションまで行き、

オヤジに渡す。

ドンノバード(ありがとう)

右手で胸に手を当てる。



オヤジは笑顔で

首を右後方に傾け

アゴを見せれば見せるほど

どういたしましての合図。




重い自転車を階段から下ろす。

一つ踊り場に着いたら休憩し、

また、一つ。そして、一階まで。

一気に下ろすと腕が悲鳴をあげるので

ゆっくり、そして、慎重に。





ネックゲイターを口まで上げて、

レジスタントのペダルストラップに

足をかける。

逆の足をMKSのペダルにかけ、

クルッと裏返しにして、

左足もストラップにかける。





漕ぎ出しは重いが、

17,8km/hくらいまで

スピードが乗ると、

ある程度進んでくれる。

柔らかい朝日の光が昇ってくると

全身がオレンジ色に染まる。






やがて、

まばゆい太陽光が

背中を押してくれる。







リキシャをかわして、

ハイスピードのバスに気をつけながら

漕ぐ。







黄緑色の

田んぼが流れていき、

熱帯特有の植物は

背が高く、淡い水色の空まで

伸びている。





路肩に散らばった

ガラスの破片をかわしながら

通り過ぎる人に

アッサラームアライクム!と挨拶する。

向こうも笑顔で返してくれる。

アライクムサラーム!





アスファルトは遠くまで

続いていて、

町から遠ざかっていく。




しばらくすると、

1人になり、

流れる

アスファルトグレーを眺めながら

いろいろなことを考える。

いろいろなことを。





少し登っている道では

力を入れて、

汗をかきながら漕ぐ。

橋を渡るときは

たいてい上りがある。

ハアハア…




そして、下ったあと、

また

漕いで、漕いで、漕いで。




短い時は6時間。

長い時は10時間。

100kmが目安。






ようやく、町が見えてくる。

ネックゲイターを下げて、

ギアを軽くする。

町の人々の視線を浴びながら、

休憩するか、先に進むかを

考える。





もし、夕方近かったら

泊まる宿を探す。

町の人に聞いて、

ホテルの場所を教えてもらう。




宿の部屋をチェックさせてもらい、

お湯は出るか、ベッドはキレイか、

ファンは回るか。

値段と雰囲気の良さが一致したら

KABUTOのヘルメットを置く。




シャワーを浴びた後、

町を散策する。

そして、

ローカルが集まるチャイ屋に入るか、

夜ご飯を食べられる食堂を探す。

混んでいる店はたいてい美味しい。

これも慣れてくればすぐに分かる。





カレーをご飯に混ぜ、

手でこねて口に入れる。

魚の骨を取り出しながら

ポテトやダール(豆)も

手でつまむ。





モジャ(美味しい)と親指を立てると

ランニングにルンギ姿の店のおっさん

もニコッと笑い、

「そうだろうよ。」といった顔をする。





帰り際、

次の日の朝ごはん用のバナナを

買い出して、

1リットルの水ボトルを買っておく。





そして、窓の外の星空を眺めながら

ボーッとする。

もしくは、読みかけの本を読む。




そんな自転車旅を、

長い旅をしている時、

たまらない幸せを感じる。

旅人なんだ、と。





目標は自分が決めたところ。






誰かに決めてもらったところじゃない。

だからこそ、

成し遂げることの意味があり。

そこまで行かないと気が済まない。






町が見えてきた時の喜びは、

言葉では表すことなんてできないだろう。




さらに、国境を越える時の緊張感や

ワクワク感は、

脊髄あたりまで快感が走るといったら

大げさだろうか。







そんな発展途上国を

走り繋ぐ長期の旅は、

今回で卒業。




これからは、

短い期間か、

先進国か、仕事で行くか

くらいはあると思うが、

仕事を休んで、事務所に無理言って

長旅には出ないと決めた。





もし、次にやるなら

60歳くらいかな。





2008年から

始めたこの地球を繋ぐプロジェクト

ブログも皆様に支えられ

ここまで来ることができ、

本当に感謝です。

今後は、海外自転車旅に興味がある人への

コンサルティングや、

写真展、講演などをしていき、

活動を伝承していこうと考えています。

そして、若い旅サイクリストの育成や、

バックパッカーへのアドバイスを

していきたいと思ってます。




最後に告知ですが、

サイクルモード2014年
11月9日(日)11時30分~12時00分

幕張メッセ会場内 サイクルモード
マスターズステージ

でゲストパネラーとして
今回の旅をスライドトークします。

ぜひ、遊びに来てください。

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それでは、

ふらっと旅先で

会いましょう!







ありがとうございました。





無事に帰国したら

livedoorのブログでまたご報告しますね。