またしても読書感想文なのだ。ネタバレありよ。


八日目の蝉/角田光代 



小説初心者の私でもタイトルを知ってたこの小説。


赤ちゃんを誘拐して育てるって話なんだけど、

私は多くの人が誘拐犯の希和子に同情して捕まらなければいいと思ったかもしれない話を


「あぁ、早く、こんな逃走劇は終わりにしてほしい」と思いながら読んでいた。


子供を誘拐された母親の気持ちを一番に考えてしまったからだ。


自分の夫の不倫相手の希和子に嫌がらせ電話をして罵ったとかってそんなん有り得る話じゃんか。


不倫相手の女なんて、この世で一番嫌いな女に決まってるんだから。


だから、どれだけその母親が嫌な人間でも、


どれだけ希和子が子供を愛し、育てていても、


母親から子供を奪っていいはずなんてないんだよ、早く返してあげて。ってずっと思ってた。


大体、宗教めいたエンジェルハウスなんてとこに何もないまま、あのままずっといたら、


薫はおかしな子供に育っていたよ。


つって、希和子の逃走劇が終わって、


薫目線で話が始まった第2章で仕方のない事なのだけど、


薫も薫の本当の両親も誘拐事件の影響で普通には暮らせなくて、歪んだ関係になってしまった。


可愛かった薫はひねくれて育ってしまってさ、なんで私なんだ?って思うんだよね。


なんで、この私を自分が引き受けなければいけなかったのか?って。


読んでて私も思ったよ。あれは3年前くらいの事だね。なんで私なんだって。


自分以外の人がみんな幸せそうに見えて、私だけがこんな目に合ってるって。


道行く人を見ながら、あの人だったら良かった、あの人だったら良かったのにって考えてた。


勿論、誘拐されて育てられたなんて事じゃないけれど、私にとっては大きな事だったんだよね。


みんな、大なり小なりあるだろうけど、本人には自分の問題の事しか考えられないもんね。



タイトルにもなってる八日目の蝉、


薫はみんなが死ぬなら一緒に死んだ方がいいに決まってる、一人残されてしまった蝉は可哀想だと。


「それは違うかもね。

八日目の蝉は、ほかの蝉が見られなかったものを見られるんだから。

見たくないって思うかもしれないけど、

でも、ぎゅっと目を閉じてなくちゃいけないほどにひどいものばかりでもないと、私は思うよ。」


薫はマロンちゃんに出会えて本当に良かったね。


もうね-、憎むべきはこの小説に出てくるどうしようもないバカ男だよ。


希和子が別れようとしてるのに執拗に追いかけたりして、


お前のせいで、お前のせいでどんだけの人間の人生が狂ったと思ってるんだって思ってしまったよ。


この物語はフェリ-乗り場で希和子と薫が近くにいながら、


お互いに気付かないってところで終わるんだけどね、


私もこの2人は再会しない方が美しいと思うんだ。


うん、思うんだけどね、毎日、毎日、年をとってお婆ちゃんになっても

乗りもしないフェリ-乗り場に足を運ぶ希和子の姿を思い浮かべると切なくてね、


思い出の中にしか幸せがないなんて。


でもさ、小説はあそこで終わっても、あの物語には必ず続きがある訳じゃん。


もしかしたら、もしかして、

小豆島から帰ったマロンちゃんと薫と希和子がフェリ-乗り場でまたニアミスする可能性もあるんだよね。


角田光代さんの中ではあの物語はどう続くんだろう。と考えた小説だった。


でもなぁ、私が同じ物語を書くとしたら、


赤ん坊を見るだけだとと思った希和子は本当に見るだけで帰り、


傷心旅行で行った小豆島で一さんと知り合い、幸せに暮らしました。めでたし、めでたしって感じだな。


2ペ-ジで終わるし、全く売れねぇな。


これじゃ。永作さんも出てくんない。


あ、永作さんと言えば、小説の映像化は苦手だけど、

これは配役がなかなかで、つ-か劇団ひとりが出てるところが私的にポイント高い。


ともかく、角田さんの作品はもっと読んでみたい、だいたい猫を飼ってるって事が私的にポイント高い。


あぁ、でも、放火の謎が解らなくて、そこはもやもや。


やっぱり、小説家はもやっと残したい病なんだね。曲者だぜ。