小泉・竹中改革のおかげで何が起きていたのか。
格差社会の到来である。デフレ経済下においてそれぞれの企業は内部留保を溜め込み、労働者の給料は下げ続けた。
大半の従業員は解雇され、非正規社員へと境遇を変えることになった。非正規社員は、社会保険からも厚生年金からも除外させられた。昇給からも落ちこぼれていく。だが、彼らが失業者に数えられることはなかった。
やがて、日本式の伝統的雇用形態が崩壊していく。終身雇用制の終焉であった。
おかげで人材派遣会社、なかでもリーディングカンパニーの「パソナグループ」は急激に膨張していく。
東京大手町に自社ビルを保有し、大阪で南部靖之氏がたったひとりで起業した面影はどこにもなかった。
やがて竹中大臣は全業種への人材派遣を解禁する。派遣労働は、製造業には認められていなかったのだが、もうこの流れは変えることができなかった。大企業はもとより地方の中小企業にも押し寄せていくのだ。
いったいに、構造改革とは何だったのだろうか。既存産業の輸出系大企業、既存のインフラ産業の既得権益保護そのものではなかったのだろうか。小泉・竹中構造改革は、地方経済、特に農業を破壊していった。収入格差が進行し、正社員は遠のき、結婚難時代を招いてしまった。2050年には、日本の若者はおよそ半数が生涯独身となるだろうと予想されているのだ。
あの郵政民営化法案は、2005年に提出された。その後10月に可決される。
「かんぽの宿」がオリックス不動産に破格の安値で払い下げられ大騒ぎになった。
世間はこれを「改革利権」と一斉に非難した。
小泉・竹中改革路線にもろ手を挙げて賛同した人たちは、おしなべて頭が弱い人たちなのだ。
なぜなら市場原理主義を唱える人たちは、「市場に任せればすべてがうまくいく」と唱える無能な人たちなのだから。
竹中平蔵氏は、先日、東京五輪強硬開催に非難する声が大きい事を指して、「世論はしばしば間違っている」と述べている。
だが、彼の経済政策に対して、当時賛成していた「世論」は果たして間違っては居なかったのだろうか。
竹中平蔵氏は、その後三顧の礼をもってパソナグループの会長職に就任して世間を唖然とさせた。
パソナを起業した南部靖之氏は私と同じ大学の後輩である。いつまにか嫌な奴になってしまった。
この記事は、2021年6月に掲載されたものです。