- どこにでもある場所とどこにもいないわたし
- ¥1,200
- 株式会社 ビーケーワン
10月9日読了
他人と共有することのできない個別の希望はありますか?
どこにでもある場所を舞台とした短編8篇を収録。
読み始めてすぐの印象は「あ~、村上龍の書き方だな」と感じたこと。情景、登場人物の感情、人間関係の描き方が独特である。「半島を出よ」では感じなかったが、2作目となる本書を読み始めればすぐに感じることができた。
作品は2000年以降に雑誌に連載されたもので、もしかすると読んだことのある方もいるかもしれない。
短編の主人公は順風満帆に人生を送ってきた人ではなく、離婚、失業、過去に夢をあきらめたなどのなにかしら挫折を味わったことのある人たちを描いている。
あとがきにもあるが「それぞれの登場人物固有の希望を書き込みたかった。社会的な希望ではない。他人と共有することのできない個別の希望だ」とある。
あとがきを読んでからパラパラと各短編を読み直すと個別の希望が浮き彫りに見えてくる。
そして自分を振り返ると自分の希望とはなんだろうか?
家族の健康?子供の将来? それらはすべて共有できる希望ばかり。個別の希望とは何だろう?個人個人の感情がある限り必ず潜在的にはあるはずだが、はっきりと意識することはできない。
少し自分を振り返ってみて「個別の希望」とやらを探してみたい。