イーグルオートのブログ

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イーグルオートのGiornaliero

フィアット パンダ(141)。スタータは作動するがエンジンがかからない、との事での入庫。

 

イグニッションをオンにしても、フューエルポンプの作動音が聞こえない。またチェックエンジンランプも点灯しない。エンジンECUヒューズを点検すると、破断していた。

 

新しいヒューズを入れてみると、チェックエンジンランプは点灯するようになったが、フューエルポンプは作動しない。

エンジンECUの電源を点検しようと、ECUを引きずりだすと、電子部品の焼けた臭いがした。ECUをあけてみる。

 

電解コンデンサのあたりが焼損していた。

 

ECUの修理業者さんに問い合わせたのだが、ここまで焼けていると修理不可能との事。中古部品を探すことにした。この車両は、イモビライザ無しのマニュアルトランスミッション仕様だが、出てくる中古部品はイモビライザ付きのECVT用の物ばかり。おそらくエンジンはかかるだろうが、できればM/T用のものが欲しい。いろいろと探していると、フィアット セイチェント(187)用のエンジンECUを入手できた。イモビライザ付きだが、排気量は同じ1,100cc SPI のM/T仕様。イモビライザECUにアンテナとマスターキーをセット。エンジンECUと仮結線をしてみる。

 

無事エンジンはかかったので、配線を作成して結線。イモビライザECU、アンテナ、マスターキーを見えないところに取付。テスタで各パラメータを点検して異常な数値がない事を確認。しばらく試運転を繰り返し、ドラビリも問題ないことを確認して、修理完了です。

アバルト 695 トリブートフェラーリ。出かけた出先でABSの警告灯が点灯。ギアも3速までしか上がらない、との事での入庫。

 

テスタで診断してみると、ABS にはC1215-29 ブレーキライトスイッチ。セレスピードはP0856-81、P1760-62、P0571-62 いずれもブレーキシステムに関するフォルトが入っており、フェイルセーフでギアが3速以上に上がらないようだ。またボディコンピュータやエンジンにもブレーキライトスイッチに関するフォルトが入っていた。

 

ブレーキペダルを踏むと、コンビネーションランプは点灯するが、ハイマウントストップランプが点灯しない。ヒューズを点検すると、溶断していた。

 

ひとまず新しいヒューズを入れ、ブレーキペダルを踏むと、すぐにヒューズが溶断した。ショートしているようだ。一番あやしいテールゲートハーネスを点検すると、みごとに被覆から芯線が出ている。この画像では見えないが、裏側にある細い線もほとんどの線が同じ状態で、そのうち5本ほど断線していた。

 

2~3本の線なら継足しで修理しようと思ったが、ほぼ全滅なのでリペアキットを使用した。

 

すべての線をつなぎなおす。症状が解消されたことを確認して、修理完了です。

 

 

 

 

マセラティ ギブリ(M157)。お客様の紹介の方で、いろいろな不具合があるとの事で初めての入庫となる。

 

症状を聞くと、エアコン操作パネルにランプが点灯せず、エアコン操作ができない。ただ、ブロアファンは最大風速で回っていて、ヒータが全開。

パワーウィンドが助手席(フロント左)以外、操作できない。また、サッシュレスドアの為、ドアを開けるとガラスが少し下がるのだが(ワンショット)、フロント左以外はドアが開いているにもかかわらず、少し下がった後すぐに上がってしまう。

キーのオン、オフ操作でのイージーエントリ(シートの前後動作とステアリングコラムのアップ、ダウン)が作動しない。シートはスイッチによる操作はできるが、ステアリングコラムはスイッチでも操作できない。

ドアミラーの格納ができない。

お客様によると、時々症状が出なくなるときがあるが、その時は全ての不具合が解消されるという。

ひとまずテスタで診断してみた。

 

このテスタのトポロジー、使用していないECUも赤表示されるので解りにくいのだが、症状に関連するであろうDDM(フロント右ドア)、DMRL(リア左ドア)、DMRR(リア右ドア)、MSM(シート)、HVAC (エアコン)が赤表示となっている。テスタがECUと通信できないと赤表示となり、それはECUが作動していない、もしくは診断にはCANを用いているので、CANラインの不具合が考えられる。

 

残念ながら、この車の配線図といった資料は手に入れることが出来なかった。だが、無いなら無いなりに想像力を働かせてみるしかない。

DDR、DMRL、DMRRはワンショットが作動しドアロックも作動する。MSMはスイッチ操作でシートが作動することからECUは動いている(電源は正常)と思われる。あとはHVACだが、ヒューズを点検した結果、良好。コネクタには+15、+30、アースがそれぞれ1本ずつ入力されていた。2本以上の入力があるかもしれないが、とりあえず電源はOKとした。

いい時は全ての症状が解消される為、原因は1ヶ所と思われる。どれかのECU内部の不具合が原因かと思い、1ヶづつECUのコネクタを抜いていったが、変化は無かった。

 

次にCANラインを調べることにした。いちばん点検しやすいHVACのコネクタで、より線を探すと1組発見できたので、オシロスコープで点検すると、CANらしき信号だが異常な波形が測定された。

 

やはりCAN信号の異常が原因のようである。通信できないECUは、同じツリー上にあるのだろう。ワイヤハーネスをたどって行くとBCM (ボディコンピュータ)に一番近いのはHVACのようだ。BCMコネクタでCAN配線を探す。今回の不具合はB-CAN(低速CAN)で、そのより線は2ヶ所のコネクタに接続されていた。それぞれ点検すると、HVACと接続されている配線を発見。CANライン2本のうち1本が断線していた。

 

ここでもう1組のB-CANラインからジャンプ線を使って、HVACのコネクタに入力してやると、症状は全て解消された。やはりCANラインの断線が原因だった。正常な時の波形。

 

原因がわかれば、断線を修理すればいいのだが、どこで断線しているのかを突き止めるのは厄介だ。みたところBCMからHVACまでは中継コネクタを使用していないようで、点検にはダッシュボードを取外し、ワイヤハーネスをばらしてみないと解らない。もしかしたら、別のECU経由でHVACに入っているのかもしれないが、配線図がないので、こちらも解らない。ただHVACコネクタにCAN信号を入力して、すべてが解消したので、お客様と相談の結果、この修理方法で進める事とした。

幸いにもB-CANスターコネクタに1ヶ所空端子があったのでこれを利用することとした。HVACコネクタにCANラインを割り込ませる。短いけど、一応より線処理。

 

テサテープで純正配線っぽく仕上げる。

 

スターコネクタに接続。

 

信号系の配線追加なので、いろいろな乗り方で試運転をくり返す。問題が無く、症状が全て解消されたことを確認して、修理完了です。