アメーバピグとは自分にそっくりなアバターをつくり、代々木公園・渋谷・浅草などを模したオープンチャットルームなどでチャットを行うのがメイン機能のサービスである。
 
 アバターを作成するとユーザーには自動的に自分の部屋が与えられる。また自分の趣向に合ったコミュニティの場としてチャットルームを自由に作成することができる部活機能などがある。

 このサービスは課金制となっており、課金するとピグ上のみで使えるアメゴールド(以下アメG)という仮想通貨に変化する。基本的にサービスは無料で、課金を伴わないアメでアイテムを購入することもできるが、殆どのアイテムやアクションについては有料のアメゴールドを用いなければ購入することはできない。

 基本サービスが無料なことに加え、アメーバブログでブログを持つ芸能人が自らアバターを作ってチャットに参加するなどの集客要素が重なり、会員数は2010年6月の時点で400万人を突破している。またこのアメGを使った有料アイテムの売上も2009年7月時点で月数千万円に達し、2010年3月には月1億円を大きく上回る額に達している。

多数存在しているチャットサイトの中でなぜアメーバピグがここまで成長を遂げたのか。

それは既存のサービスとは違う仮想空間内に設けた様々な仕掛けによるものである。

一つ目に仮想通貨のアメGとアメの存在である。
 まず、アメにつてだが、課金制のアメGとは違い、基本的にピグへのログインや、他のユーザからのグッピグ(後述)、他のユーザが自分の部屋を訪問して「きたよ」ボタンを押した際に獲得することができる。

 このアメでは一部の広場でアイテムを購入できたり、部活の作成、アバターの顔・髪型等の変更に使うことができる。
 このようなアメの使用用途のためにユーザーの収集欲が掻きたてられ、サービスの持続した使用や、使用頻度の増大につながっているのだ。

 また、この収集欲が掻き立てられる原因としてアバターの可愛らしさが非常に大きく作用している。これはアメーバピグの特徴でもあるが、親しみ易さを前面に出すためにアバターが二頭身に設定されているのである。

 若い女性ユーザーの中には「ピグ彼(ピグ上のみでの彼氏)が欲しい」と言った声もよく聞かれ、実際そのような部活も数多く存在している。このことからも二頭身の可愛らしいアバターがユーザーに大きな影響を与えていることが分かる。


次にアメGに関してだが、これは仮想空間のアバターと現実世界のユーザーとの連動関係が深く関わっている。
 
 ピグ上でアバターが笑ったり、驚いたりなどといったアクションやファッションは基本的に課金してアメゴールドで購入しなければならない。
  しかし、ピグ上で同じ友人と話したり相談にのったりすることで、徐々にそのアバターと自分の性格や行動の連動関係が強くなってくるのである。そうした場合、このアバターをより自分らしくしたくなるといった欲求が生まれるのだ。

そのために自分らしいファッションであったり、表現をするために課金を行うというサイクルが実現している。
 このようにユーザーはそれらをデザインされたパーツとしてではなく、一つのコミュニケーションツールとして使っているのである。
 これはピグを何度も利用することによって生まれる現実世界と仮想空間の連動関係が強まることで起こる欲求である。


 そして、このアクションが追加されることによってより現実世界に近いコミュニケーションを取ることができる。
 
 基本的な対人コミュニケーションとは大きく二つに分類され、言語を使用したバーバルコミュニケーションと非言語的なノンバーバルコミュニケーションがある。
 
アクションに関しては意識的なもののみではあるものの仮想空間の中でチャットと連携することによってそのどちらもが実現しているのである。
 また、公園や自分の部屋などといったチャット環境の変化や、アバター同士の距離感といった現実世界に類似した、複雑で微妙な変化から生まれる多様なコミュニケーション形態が存在しており、かつ気軽にそれらを行うことができるという空間が成立しているのである。
 

次にグッピグという機能について述べる。
 グッピグとはピグの中で他のアバターを褒める際に使われる機能のことである。同一の場所にいるアバターをクリックするとアバターのプロフィールが表示され、その中にある「グッピグ」ボタンを押すことで機能する。
 
このグッピグには、強制力は無く、意識的に行わなければ機能しないものである。しかし、ツークリックでグッピグ可能という気軽さと、コミュニケーションのきっかけにも成り得るという一面もあることから、ほとんどのユーザーが何の躊躇もなく使用している。
 そして、グッピグされるとアメが貰えるため、お互いグッピグするメリットも存在しているのである。

 これは他人への気軽なコミュニケーションの橋渡しにもなっており、特に日本人の意識に存在する「他人とのコミュニケーションへの抵抗感」を上手く取り除いている。

このような要因から他人に対して何の抵抗も無くアクションを取るということがピグ上では可能となっているのである。アバターとして姿が見える安心感もさることながら、これもまた非常に日本人に適した意識改革の一つであると言える。


 次にピグとブログとの連動である。
 アメーバピグはアメーバブログとの連動関係が密接で、ピグの画像をそのままアメーバブログのアバターとして使用することもできる。またピグをクリックした際に表示されるプロフィールにはリンクが張ってあり、そのユーザーのブログを容易に閲覧できるのである。
 
 基本的にインターネット上でのチャット交流は、肩書き等に関係なく誰とでもコミュニケーションをとることができるものである。これは先入観を持たれないなどといった利点でもあるが、逆に言えば全く趣味などが分からない他人と自分とが合うかどうかは話してみないと分からないのである。
 
 そこをアメーバピグではブログと結びつけることで解決しているのだ。
 
 ブログ内容などを参考にして、話かけるか、あるいは受け答えをするかという判断材料になっている。
これは簡単なことながら非常に有効な仕掛けである。

 

 以上のようにこれまで紹介してきた仕掛け、要因が重なることによってピグ上に長時間居ても苦痛ではなくなり、むしろ、ユーザーの中にはこの仮想空間に「ずっと居たい」という声も少なくない。

 アメーバピグはこの仮想空間に人々が課金してしまうほどの魅力を持ち、また新しいコミュニケーションの一形態を作り上げたと言ってよいだろう。

 このコミュニケーションによって利用者のモノの価値観を変えたのである。
リアルタイム化するネット、そしてそのネットから始まる新しい価値観と情報行動は社会的にも大きな意味を持つ。また、私達の最も身近なコミュニケーション形態をも変化させてゆく重要なツールとして注目していかなければならない。