黒川検事長の賭け麻雀は不問でよいか?
黒川検事長の賭け麻雀のニュース,「立件は難しいのでは」という雰囲気が流れています。しかし,黒川氏の行為は,明らかに,「賭博罪」,むしろ,「常習賭博罪」に該当する行為です。賭博とは,「偶然の事情(勝敗)によって財物を得喪することを争うこと」とされており,現金を賭けた麻雀は,賭博罪の典型例です。篠田は,率直に「今回のケースは立件されるべき」と考えます。立件が難しい理由は,①現行犯ではないこと②賭博場などでの麻雀でないこと③金額がさほど高くないこと④暴力団が背後に絡んでいないこと⑤遊戯の範囲に過ぎないこと⑥証拠が関係者の供述のみで具体的な賭博行為の立証が難しい⑦通常は,居宅で遊びで行った麻雀は立件しない等でしょうか。。。しかし,賭博行為を行った人物,行為態様,社会に与える影響,を考えれば,立件しない理由はない,と考えます。ここで,「賭博罪がなぜ処罰されるのか」に立ち戻って考えてみます。賭博罪(常習賭博罪)は,刑法185条:賭博をした者は,50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし,一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは,この限りでない。刑法186条1項:常習として賭博をした者は3年以下の懲役に処する。とされています。一時の娯楽に供する物を賭けた,というのは,負けた方がチョコレートや飲み物をおごる,など,そんなイメージです。現金をかけて麻雀をした場合は,当然これには当たりません。自分のお金だから好きに使っていいはずなのに,賭博行為が処罰されるのは,「社会の健全な経済的秩序を害するから(判例・通説)」です。単なる偶然の事情により財物の獲得を相争うことは,国民の勤労意欲を喪失させ,怠惰浪費の弊風を生じさせてしまい,ひいては国民経済の機能に支障を生じさせる危険があることから,賭博罪を処罰することとしているのです。しかも,賭博は,人間の射幸心をあおるため,これが繰り返し常習的に行われると,なおさら危険として,常習賭博罪は重く処罰されることになっています。(なお,パチンコや競馬などは,法律で特別に認められている賭け事なので,賭博罪には当たりません。)さて,今回の黒川氏のケース,①月に2~3回ほど②3年間にわたり③1回に数千円~2万円程度の勝敗があるとのこと。冷静に考えたら,3年間で,軽く数百万円程度は,賭麻雀に現金を投じている可能性があるわけです。更には,「コロナの緊急事態宣言中で,自粛すべきなのに我慢ができなかった」ことがうかがえるわけです。このような時期に,「麻雀を止められなかった」のは,まさに黒川氏が,「常習性」を有していたことも,推認されるわけです。そして何より,今回,黒川氏が刑事的に無答責となった場合は,「賭け麻雀は,自宅で遊びでやるなら,何度やっても処罰されないんだ」というイメージを国民に浸透させることとなり,まさに,「国民の勤労意欲を喪失させ,怠惰浪費の弊風を生じさせる」ことに直結するものと考えられるわけです。過去には,芸能人が,賭け麻雀で逮捕されています。今回の黒川氏が立件されないことは,許されるものではないと考えます。証拠も(少なくとも近日中のものであれば),集まった人物の供述が一致し,本人の自白や関係者からの聴取,黒川氏の財布の現金や銀行預金の動きなど,特定できるだけ特定していけば,黒川氏の賭博行為の事実も特定できると可能性は十分にあると思われます。今後の賭博罪の刑事処分のあり方にも影響するかもしれませんが,少なくとも,「今回の件は,立件されないと国民感情が許さない。」と思われます。立件するのは,まさに黒川氏がいた「検察」なわけですが,内部の忖度は全て切り捨てて,適正な刑事手続を進めていただきたいと心より願います。