「コケコッコー」
窓から差す、
出来たての朝の
光に包まれて、
彼は鳴いた。
「ドン」
扉が開けば、
外の光と、
いつもの自由が
待っている。
自由を仲間も喜んだ。
しかし彼は、
満足していなかった。
丸い木を、
組み合わせた
囲いの外には、
彼の想像を膨らませる、
さらなる自由が、
待っていたからだ。
しかし囲いのおかげで、
外には出れない。
そして…
「ドン」
またいつものように、
1日が終わり、
扉が閉められた。
ある日の事、
長雨が続いた。
雨は今までにない
くらいの雨で、
「ゴロゴロ」 と
雷鳴も聞こえる。
その雨が3日ほど、
続いた夜の事だった。
眩い光、音と共に、
雷が落ち、
丸い木の囲いが一つ,
燃えてしまったのだ…
そして次の日。
「コケコッコー」
次の日の朝には、
雨は止み、
泥んこになった道や、
小屋の修理が始まった。
なぜか囲いは一番最後だ。
彼は外の光りに、
照らされるのが、
好きだったので、
正直、
早くして欲しかった。笑
修理を始めて、
2日ほどたったお昼に、
小屋の前で、
「ガヤガヤ」と、
子供達の声が聞こえた。
まだ丸い木の囲いは、
直っていない。
大人達は、
道を挟んだ
木の下で
昼飯を食べている。
その時だった。
「ドン」
扉が開いた。
子供達がふざけて
開けてしまったのだ。
彼は一目散に外に出て、
光りに包まれながら、
「コケコッコー」 と
鳴いた。
大人達は、振り返り、
囲いに近づく。が、
それに気付いた
彼や仲間は、
逃げるように、
囲いの外に走り、
広い草むらの中に、
消えたのである。
仲間の行方は知らない。
彼は見つからないまま、
その広い、
草むらの中で、
1日を過ごした。
そう。
さらなる自由の始まりだ。
彼の得意な事は、
大きな声で、鳴くこと。
大きな白い卵を生むこと、
飛べない事である。
飛べない事でたくさんの、
食べ物と出会える事は、
彼にとって、
得意な事である。
そして欠点は、
すぐに、
忘れてしまう事。
「コケコッコー」
次の朝。
日の出と共に、
彼の冒険が始まった。
全てから、
はみ出したような、
大きな木や、
赤や黄色、
色とりどりに
咲いた、魅力的な花。
たくさんの、
動物達とも出会った。
空を自由に飛ぶ鷹に、
見とれているとき、
親子ずれの猪達と、
遭遇した。
彼らは、本当は、
大人しい動物だ。
彼は一緒に、
木の実を食べたから、
知っているのだ。
そう目に写る景色、
全てが新鮮で、
別の世界だった。
「コケコッコー」
ある朝の事だった。
彼は1人の老婆と、
出会った。
彼は食べられてしまうと、
必死に、逃げたが、
老婆に捕まってしまった。
少し抵抗すると、
なぜか老婆はそっと、
彼を離したのだ。
「コケコッコー」
何日かたった、
ある朝、
彼は森にいた。
そこで彼は、
レンガ作りの、
立派な家に出会った。
家の周りを、
歩いていると、
いつかの老婆がいた。
彼は逃げなかった。
そして老婆は、
優しく彼を抱き寄せた。
「コケコッコー」
ある朝。
彼女は、
建築家を呼び、
彼のための、
小屋を作らせた。
彼女は街の富豪の、
めし使いを
していたのだが、
気さくで誰にでも、
怒る事の出来る彼女は、
富豪と、
とっても仲が、
良かったので、
頼み事も相談出来た。
そして、
小屋は完成した。
囲いのない、
木の香りのする、
立派な小屋だ。
彼女は、
彼に仕事もくれた。
日の出と共に、
彼女を起こす仕事と、
卵を産む仕事だ。
彼は喜んで、
毎朝卵を、
2つ産んだ。
彼女は彼を、
息子のように、
可愛がった。
「コケコッコ-」
彼は鳴くのが好きだ。
朝の一時間は、
たくさん鳴く。
色んな場所で鳴く。
親子ずれの猪も、
鳴いて起こす。
空を自由に飛ぶ、
憧れの鷹も、
鳴いて起こす。
鷹も彼の鳴き声には、
感心していた。
「コケコッコー」
彼は、
食べるのも、
大好きだ。
その分、
糞もたくさんする。
彼女が、
糞を片付ける頃には、
糞で芸術が出来ている、
くらいだ。
彼女は、
彼のおかげで、
芸術を知れたので、
いつも感謝して、
いるくらい糞をする。
ある朝になる前の
夜の事。
彼女は、
彼を車で連れ出した。
どこに行くかは、
彼女しかしらない。
車内には、
jazzyなsoulが
流れていた。笑
ともかく彼は、
運転出来ないので、
彼女の運転で、
連れていかれた。
着いた場所は、
まだ暗く、
何も見えない。
彼女がなぜここに、
連れてきたかは、
知らないし、
知りたくもない。
ともかくまだ暗く、
何も見えない。
でも彼は聞こえていた。
何か分からないものが、
唸っていたのだ。
彼女はそれが、
波の音だと知っていた。
その時だ!!
黄金の光と共に、
海から朝日が、
顔を出し始めた。
彼は、今まで、
見たことのない
海と光の光景に、
恐怖したが、
彼は恐怖では
ないことを、
感じたのだ。
朝日がちょうど、
真ん中に来た
くらいだろうか、
彼は、
「コケコッコー」 と
鳴いた。
彼の想像を、
はるかに越える、
景色に心を奪われた彼は、「コケコッコー」 と
たくさん鳴いた。
そして彼は、
卵を2つ産んだ。
一つは、白い卵。
そして、もうひとつは、
黄金の卵だ。
彼は、
忘れてしまわぬように、
卵に色をつけたのだ。
「コケコッコー」
それから毎朝、
彼は2つの卵を、
産んだ。
白い卵は、
彼女が食べた。
黄金の卵は、
仲の良かった、
富豪に渡した。
富豪は、喜び、
彼女に富を与えた。
そして、
富豪は魔法を、
使ったように、
彼の仲間を呼びよせ、
共に自由に、
暮らせたのである。
彼女は、
小さな幸せと、
たくさんの芸術と、
富を手にいれた。
彼は、
自由と愛を、
手にいれた。
欠点が人を、
幸せにする、
可能性がある事も知った。
その後の二人は、
きっと幸せに、
暮らしたと思う。
eiichi
